映画レビュー#012 『パンとバスと2度目のハツコイ』(2017年)
「好き」という気持ちの置き場所探し。
『愛がなんだ』の今泉力哉監督作品。と書いているが、まだ『愛がなんだ』も観ていないので、今泉監督作品は初鑑賞。
深川麻衣がかわいいのは置いといて、これは好きな作品。
説明的な台詞・モノローグがほとんどない。だけど、動きは少ないが情報量の多い画と、ちょっとした仕草や目の動き、会話の間合いなどでほぼ全てが伝わる。観ているこちらが行間をちゃんと想像できる作り方がとても好き。
これは今泉力哉監督の特徴なのかな?『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』も気になっている作品なので早く観てみたい。
かわいいのは知っているし元々好きだけど、開始1秒で深川麻衣がかわいい。ずるい。映画初出演とは思えなかった。目の動きや小さな表情の変化などもとても自然な演技で「素」の深川麻衣みたいに見える。もちろん知らないけど。演技は地上波で放送していたドラマ『日本ボロ宿紀行』しか知らなかったけど、早く『愛がなんだ』も観よう。成田凌も出ていることだし。
伊藤沙莉もさすがという感じ。伊藤沙莉が出ている映画・ドラマにハズレないんじゃない?
過去にふみ(深川麻衣)に告白した経験があり、現在は結婚し子供もいる同級生さとみ。今でもセクシャリティに不安定さを感じさせる一面もあったりするのだけど、全てにおいて妙に説得力があり、なんの違和感もなくストンと落ちる。
ふみとさとみが再会した時にふみが流した涙が印象的。
ふみの初恋相手、バス運転手のたもつ(山下健二郎)。彼だけ少し違和感。元妻の不倫(まだ子供がそんなに小さい時に?)とか、その元妻との関係とか。同級生とはいえ、久しぶりに会った人に奥さん(しかも元妻)を名前呼びして話すのも微妙。
たもつのキャラクター設定なのか山下健二郎の演技なのか。はたまたその両方なのか。ちょっと微妙。台詞の言い回しも棒読みっぽくて気になる。深川麻衣と伊藤沙莉が自然だったので、余計に目立ってしまったかも。
でもたもつの真っ直ぐで正直な部分には好感が持てた。
ふみと妹の美大系予備校生・二胡の関係もとてもよかった。
描いている絵の終わらせ方の話が好き。好きや片想いの終わらせ方のことみたい。
一緒にふみの服を選ぶシーンも好きだった。ただ深川麻衣が可愛かっただけかもしれないけど。
ラストシーンも良かった。空の色もふみの行動も最後のセリフも好きでした。
深川麻衣が出てるからぐらいの気持ちで観たんですけど、全体的に重くなり過ぎず、複雑になり過ぎず、ゆったりしたテンポで行間や余白もあってとても好きな作品でした。
片想いって終わらせるの難しいよね。
「男はみんなくるりの『東京』が好きなんだから」
あると思います。
鑑賞日2020年8月30日(Amazon Prime Video)