「イチローさん(父89歳)の残暑見舞い」~変化するコロナ禍の遠隔介護
‘‘生きてるうちは「楽しく」‘‘とイチローさん(父89歳)が口癖ののように言うようになった。
この間までの「高齢者鬱」はなかったことのように「楽しく」を行動で表す。
例えば、「残暑見舞いハガキ」を書く。
同世代も施設にいたり、また、うちにいても、中々会うことは難しい今、イチローさんは長年集めてた切手の使い道として、「残暑見舞いハガキ」を思いついた。「字が下手だから、代わりに書いてくれ」といつも自分で書くことを嫌がっていた人が、切手を使いたいがために書き始めた「残暑見舞いハガキ」
この世代が強いのは、89歳になっても「年賀状リスト」があり、そこに出していく。毎年亡くなった人が増え「今年で最期の年賀状です」と入れようか迷っていたイチローさんだが、入れなくて今回は良かったようだ。
何十枚、ハガキを書いたのだろう。
ハガキ効果はすぐ出て、いろんな人から、イチローさんへ電話が入ってくるようになったらしい。
「〇〇の従妹はすぐに、電話をかけてきた、達者じゃ」
「〇〇からはなんも言うてこん、調子が悪いんかなあ」
と気持ちも悲喜こもごも。
そんな中、小学生の時の同級生で年賀はがきだけで音信不通していたNさんから携帯に電話が入る。80年ぶりくらいだろうか。日曜日に「〇〇で待ち合わせ」を決めたという。少し弾んだ声で電話があった。
「奥さんを亡くしたと風の便りで聞いてたのに、会えるという事は元気にしとる、という事じゃろうなあ」
80年ぶり(本当は60年ぶりかもしれないけれど (笑))の再会にに娘の私まで、何だかウキウキする。
再会の日は、ドキドキしながら、電話を待っていたら、
「ここで会おう言うて、待ってたんじゃが、20分待っても来んのよ」
えっ、電話せんの?
「なんか、相手も会いとうないことができたかもしれんから、電話してはわりーかもしれんから、電話できんかった」
相手の気持ちを想ったんだね。でも、ちょっと、寂しそう。
そんな日々から、何日かたち、なんと、お相手から「なんで来んかったん?」という電話が。
どうやら、待ち合わせ場所をお互いに勘違いしていたらしい89歳。そして、やっと、再会。お相手もイチローさんが会いたくない理由ができたのかと、と思い、電話しなかったのかなあ。すぐには電話しないのね。
そんなこんなで、イチローさんの残暑の冒険「残暑見舞いをいっぱい出してみる」はいろんな再会ができ。89歳と4カ月は、生きてるうちは「楽しく」と着実に実行しているのでした。
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