夏の川に足をひっぱられた日
あれは中学の夏休み
友だちと3人、
長い長い川の中流に行きたいと母に言う
小さな頃から川に親しんだ母は、何も思わず
私たちは3人で中流に置いていかれた
あの当時はそれが当たり前だった
真夏なのに辺りの温度は
驚くほど冷えている
大きな岩の上をつたい歩く
流れが早い
冷たいとはしゃぎながら
3人で手を繋ぎ
川の流れを歩く
大きな岩間を通り過ぎようとした時、
思い切り足をひっぱられた
叫ぶ私の手を、
思い切りひっぱり上げる2人
何とか足は元通りの場所に戻ってこれた
ドキドキしながら、
ひっぱられた岩間の隙間をのぞくと
美しい紅と白の鯉たちがいた
岩間の大きな空洞の中で何匹も泳いでいた
こちらに来ようとしても
水の流れに跳ね返されている
そこから出られないの?
まるで河童に
足をひっぱられたような気持ちで
そこから先は岩間に気をつける
大きな岩の上から、
深い川底に飛びこむ
海のようには浮力が働かないので
深みまで降りていける
冷たい川底から見上げる水面は
澄んだ白い光と
森の緑が揺れていた