見出し画像

あの街の時

懐かしい駅前をぶらぶらする

しばらく見ない間に
少しずつ姿を変えた街

相変わらず
この街に流れる時は忙しない

眠っていたリズムが
目を覚ましていく

もうすぐ時間かな

駅裏のエスカレーターをおりる

この辺りは昼間でも人通りが少ない

夜になるとなおさら
人気がなくなる

暗い夜の街の中に
緑に光る芝生がみえた

歩く人、スケボーにのる人が
ちらほらと遊んでいる

時計の秒針が12に揃うと同時に
威風堂々が流れはじめた

シャッ
噴水がのぼる音に振り向くと
水飛沫が光に跳ねた

光の向こうにある暗い海から
かすかな潮風が流れてくる

ここはあの頃と変わらない

就職、恋、家族
人生のあらゆることに迷っていた私たちが
ぶらりと訪れては語った場所

今は、それぞれの時を
知らない街で刻んでいる

夜の光に水が踊る
高く低く、変幻自在に

触れては弾かれ
濡れては遊ぶ
懐かしい記憶がふいによぎる

時は進み続けていた

思い出だけを
そこに残したまま


写真 どめ様