ある夜の、あるお店で
赤とオレンジの光が人混みにきらきらとする、
賑わいはじめた石畳の路地を走り抜ける。
(遅れちゃった..。ここであってる?)
仄かな照明に照らされた、白い文字。
藍色のドアの前でひと呼吸する。
カラン
お店のドアを開けると、
カウンターにちらりとみえた
知った横顔にほっとする。
「よろしかったらこちらへどうぞ」
お店の方の案内のまま、街の光を見渡せる
川沿いのテラス席にあなたと座る。
宝石みたいなカクテルが、
夜の光に輝いて、よりいっそう美しい。
ほどよく酔いがまわると、少しほてった身体に
夜風が通り抜けた。
このテラスは、夏の夜でも
川風が吹き上げて涼しい場所のよう。
お酒好きなあなたと出逢わなければ、
一生来ることはなかっただろう。
知らない街の夜の世界。
知らない街の夜の風。
あなたが見せてくれた、新しい世界。
あとがき
先斗町のバーにある川床での思い出。
学生時代のちょっと背伸びした夜のお話。
夏の夜の京都は別世界にいるような、
不思議な感覚になる。