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避暑地

ガタンゴトン

電車に揺られて
海沿いをゆく

水平線の青が
くっきりと見える
風の澄んだ日

小さな駅舎におりると
改札の前で猫たちがゴロンとしていた

いつもなら、目的地は駅の前の海

でも今日は駅の裏道へ進む

カメラを携えた相棒は
何か微調整をしている

長い髪が海風になびいていた

民家の続く細い道を進むと
そり立つ崖が見えてきた

山間に隠れた
避暑地

崖の上から
白い龍のように
光る水が滝壺へと注ぐ

滝がつくりだした
川にそっと足をいれる

入るの?

彼女といると
無謀な行動を取りがちな私は
もちろん。と笑った

冷やりと
体の熱がひいていく

水の中をゆっくりと進む
今の水量だと太ももあたりまでしか
浸からない

少しずつ滝の方へと
近づいていく

どこまで行くの?

もうちょっとだけー。

滝の音と崖の合間に
2人の声が反響する

見上げると
小さな水飛沫と
落ちてきた風が頬にふれた

ここがいいな

水面に太陽が揺れている

後ろでシャッターを切る音がした

振り返ると彼女は
すぐ後ろにいた

このまま泳ぎたいね
そんなことを言いながら
透き通る水を蹴って遊ぶ

小さな水の粒が
キラキラとしながら
私たちの間でぶつかっては
飛び違っていた