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ある昼下がり

ピンポーン

秋の昼下がり

近所のおばちゃん家に遊びに来た
ガラガラと玄関を開ける

「こんにちはー!」
「音ちゃん、いらっしゃい」

しばらくおばちゃん夫妻と居間で話したら
いつものように2階で本を読ませてもらう

「おばちゃん、2階あがっていい?」

「いいよ〜!ヒロが寝てるかも」

ヒロくんは、
私より15歳上のおばちゃんの息子

階段をトントンとあがる

コンコン

「ヒロくん、おはよー」
「音かぁ..。おはよう」
「いつまで寝とるの。起きて」

どっしんと全体重を布団の上にのせた

「やめろ!重い!」

「じゃあ起きてよ」
「分かったから..」

ふと横をみると、
大きなギターがあった

はじめてみるギターに
目を輝かせていると
「弾いてみるか?」と言われた

あぐらの上にのせてもらって
重たいギターを持ってみる
手を重ねて一緒に弾いてもらう

ジャーン

わぁ
こんな音がするんだ

音の響きが身体に伝わる

南向きの窓から
田んぼの風が流れてくる

後ろから香水のいい匂いがした

それからしばらく、
心地よく響く音と声に
耳をすませていた

君を忘れない
曲がりくねった道を行く
産まれたての太陽と
夢を渡る黄色い砂

二度と戻れない
くすぐり合って転げた日
きっと 想像した以上に
騒がしい未来が僕を待ってる

スピッツ「チェリー」

幼い日の
音と香りの記憶

絵 スズムラ様