見出し画像

5歳の旅

5歳の5月

玄関で手を振る母の記憶は

寝台列車「富士」の寝台の前に
切りかわる

父とはじめての2人旅

寝台は青地に白いドットだったか
下段に父、上段に私がのる

最初はわくわくして
下段の父に話しかけたり
窓の外を眺めてはウロウロとしていた

ガラス越しに過ぎていく夜

その内に
外の暗闇が怖くなって
父と一緒に寝るとせがむ

夜の列車独特の静けさが流れていた

消灯時間になったのか
カーテンをしめきって
眠りにつくまでお喋りをする

豆球?をつけるかつけないか
もめたような記憶があるけど
その辺は曖昧だ

明日は東京

10年ほど中野に暮らしていた父にとっては、
10年ぶりの東京

薄暗さの中、友人に会える
嬉しそうな父の顔と声が
記憶の片隅に残っている

翌朝、新大阪に着いた
そこからは新幹線の旅

目の前に座っていた
おじいさんと友達になった

旅は道連れ
世は情け

旅の途中のハプニングでは
いつも誰かが手を差し伸べてくれた

思えばあの頃から
私の旅好きがはじまったのかもしれない