青い宝石
台風の後
意を決して
鍾乳洞へ入る
何度も入ろうとして
地震がきたら..なんてことを考えてしまい
入らずじまいだった場所
その入り口は
外の明るさが眩しくて
中がいっそう暗くみえた
風の音がボーッとなって
少しこわい
鉄板の歩道を進んでいくと
乳白色の鍾乳石が並んでいた
形は似ているのに
ひとつとして同じに見えるものがない
つららから
透明な雫がポツリと落ちていく
今も成長を続けるその石たちは
一体いつからここにあるのだろう
夏も冬も15°前後のこの空間で
過ごせたならエアコンなんて
いらないのにな
なんて思いながらも、
閉じ込められるのが怖くて
きっと無理だ
チョロチョロと水の音がする
鉄板の下に川ができていた
奥に進むにつれて
異様に水量が増えてきた
台風のせいかな?
奥の方からコンコンと水が湧いて
流れのはげしさが目に見えて分かる
青いスポットライトに
照らされた水中は
鍾乳石の風合いと
水の流れを美しく照らしていた
それはまるで
青い宝石のようだった
あまりの美しさに
しばらくぼーっと見つめる
自然の生み出す美しさの中にいると
自分という存在が消えてしまう
感覚がある
名残り惜しいけれど
先に進もう
そう思った矢先、
歩道は水に沈んでいた
お店の人が「奥は行けないかも〜」
って言ってたのはこのことね
みまわりしてないんだ、と
一瞬ひやっとする
奥には、
宮殿のように美しい場所があると
聞いていたけれど
どうやらこれ以上は進めないみたい
また出直そう
勇気がある時に
ふたたび戻った
青い宝石を目に焼きつけて
白い洞窟の中をひきかえす
太陽のもとに出た瞬間
異世界から戻ったような
不思議な感覚だった
広い世界の美しさを
しみじみと感じていた
絵 Atelier hanami@はなのす様