狭い廊下でふれた温もり
ひとり暮らしの狭い廊下
毎日帰る度
部屋の奥の暗さに
さびしさを覚えていた
でも、あの日から
君が遊びにくるようになった
廊下にあるキッチンに
立っていると
ピンポーン
君がやって来た
「こんばんは」
笑うと目尻がさがる笑顔に
思わずどきっとする
いい加減、慣れないのかな私
すれ違いざまに
肩に置かれる大きな手
冷たい廊下で冷えた身体に
温もりが伝わる
狭い廊下も悪くないな
慣れないレシピに時間がかかる
はりきり過ぎだ
徹夜明けの君は
こたつで寝ていた
気持ちよさそうにすやすやと
「起きて」
大きな肩にそっと手を置くと
びっくりしたように
眠そうな眼を開けていた
見つめられるだけで
心臓がびっくりしてしまう
お願いだから慣れてほしい
こんなんじゃ心臓がいくつ
あっても足りない
腹ごしらえをしたら勉強
プラトニックな関係は
じれったさもありながら
心だけでも繋がれる
そんな温かさを教えてくれた
君を見送るマンションの入口で
2月の夜風に
少し緊張した熱がほどけていった