趣味の釣りと魚料理、唯それだけ
「明日は暇だな、行くか」
そう一言発し、パジャマから厚着の外出用の服装へと着替える、一応ダメ元で気の合う友達に連絡を入れる。
「今から、釣りに出かけるんだ、一緒に行かないか?」
まぁ、急なのは急なんだ、ダメ元だからな?結果は察してくれ。
俺は車のキーと、玄関に無造作に置かれた竿と仕掛けの入ったバックを手に隣接されている駐車場へと向かう。
「さて、今日は何処へ行こうか」
俺は、足で釣る、なんて事を言える程玄人ではない、唯々人が少ないであろう場所へ行きたいだけなのだ。
寒く、暗い夜の中車を走らせると次第にキラキラと夜光を反射した波が音を立ててくる。
ザブン、バシャン、目を瞑り、身を委ねれば心すら飲み込むような、自分に安らぎを与えてくれる、そんな音だ。
おれは、そんな音と共に竿を振る。
正直、壮大なフリの割には、最中は飯の事しか考えていない。
「今日は何を釣ろうか、釣れたら何を作ろうか」
そんな事を考え、時に無心に、そうこうしている内に日が登ってきていた。
「そろそろいいだろ、帰るか」
その日の釣果は自分1人にしては満足だった記憶がある、鯖と太刀魚が共に数匹、俺一人で食べる量と思えばかなり大量だ。
俺は、すっかり明るくなった道を帰路に着いた。
家に帰るなり、シンクの中に釣れた魚をぶち撒ける、まな板に少し手入れを怠っているのが見て取れる出刃包丁を持ち魚を捌いていく、太刀魚は大名おろし、鯖は三枚へとおろしていく。
太刀魚は俺が大好きな刺身にしていく、食感を残す為、少し大きめに身を切り分けていき、上から小口切りをした青ネギ、ポン酢を豪快にぶっかける、皿の端におろし生姜を添えれば完成だ。
鯖は南蛮漬けにしていく、俺の好きな料理なので最早自分の中で定番となっている、鯖は揚げるのが面倒なので、酒、塩で臭み抜きをした後、片栗粉をまぶし、うっすらと揚げ焼き風にしていく、鯖を焼いている間にボールに甘酢ダレ、極々細く切った野菜を入れていく、鯖が焼ければフライパンから直接、ボールに焼いた鯖を投入する、鯖の予熱で野菜に火を通す感覚だ、そのままタレに鯖を絡めれば更に盛り付けて完成だ。
二つの料理はどれを食べても格別に美味い、太刀魚の刺身なんて普段なら食べる機会もないんじゃないだろうか?太刀魚のさっぱりした味に小口ネギとポン酢が合わされば、手を休めるという感覚を忘れさせてくれる、南蛮漬けも鯖のコッテリとした味わいを甘酢の食べやすい酸味がまろやかに中和してくれる。自分が釣って帰ってきた魚となれば格別な勝利の味も添加されているであろう。
俺は釣りも、料理も、それを食べるのも好きなんだ
唯それだけの話。