恐竜異説
恐竜の解説書です。二〇一四年現在からは、二十五年前に出ました。
普通、二十五年どころか、五年も経てば、科学解説書の内容は、陳腐化してしまいます。
ところが、本書は、二十五年の時を経ても、なお、読む価値があります。
ということは、出た当時は、極めて画期的な内容だったのですね。
「恐竜は、のろまな巨大生物ではなくて、敏捷に動けた」、「鳥は、恐竜から進化した。というより、恐竜の中の一グループが、鳥である」といったことを、本書は、主張しています。現在では、当たり前になったことですね。
一九八〇年代には、これらの主張が、いかに新鮮に聞こえたことでしょうか。
著者のロバート・バッカー氏は、「恐竜学界の異端児」として、有名な方です。
一九八〇年代には、彼の説は、異端すぎて、受け入れがたいとされることが、多くありました。
しかし、二〇一〇年代になってみれば、彼の説は、おおむね、恐竜学界の主流となっています。
バッカー氏の語り口は、流暢で、軽快です。
そのうえ、彼は、とても絵が上手いです。本書の中にある、たくさんの挿絵は、バッカー氏自身が描いたものです。
見事な語り口と、絵のおかげで、本書は、すいすい読めます(^^)
本書の中で、私が大好きな一文を、紹介しておきましょう。コモドオオトカゲについて、書かれた文です。
『インドネシア諸島のコモドオオトカゲはヤギ、スイギュウ、それにドイツ人旅行者をも殺して食べるオオトカゲの仲間である』
この文の上には、コモドオオトカゲに追われるドイツ人旅行者の絵があります(笑)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第 I 部 冷血動物を越えて―謎とき
1章 エール大学大ホールのブロントサウルス
2章 ワイオミングの夢―地質時代の幻想
3章 中生代の闘い―冷血動物 vs けもの伝説
4章 生きながらえた恐竜とコモドオオトカゲの失敗
第 II 部 恐竜をとりまく環境
5章 ブロントサウルスの場合
6章 砂嚢【さのう】の石とブロントサウルスの食べ物
7章 カモハシ竜の手
8章 恐竜の食卓
9章 花を育てた恐竜
第 III 部 防御、運動、そして温血恐竜
10章 ディプロドクス―その歩調と姿勢
11章 中生代の武装競争
12章 ヨロイなしの防御
13章 空にも進出した恐竜
14章 始祖鳥の起源問題―恐竜と鳥類の関係
第 IV 部 温血動物の着実な進化
15章 性と威嚇―恐竜のボディランゲージ
16章 温血性恐竜の成長速度
17章 丈夫な心臓、強い肺、大きな脳
18章 食う者と食われる者―温血性の検証
第 V 部 動物王朝の盛衰―歴史はくり返す
19章 断続平衡【へいこう】―進化時間の記録
20章 カザン変革―恐竜の進化段階を設定する
21章 恐竜のたそがれ
22章 恐竜綱【きょうりゅうこう】の独立
訳者あとがき