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大貫妙子 『SUNSHOWER』


初めまして。
おとぎ歌歩と申します。
音楽理論も楽器も分からない私のカジュアルな視点による音楽レビュー・感想を100%の主観と好みでお届け致します。

今回は第14弾として大貫妙子さんの『SUNSHOWER』を綴らせて頂きます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。



大貫妙子 『SUNSHOWER』
リリース 1977年
総評 ☆☆☆

シティポップ黎明期にジャズの風味も取り込み、軽すぎず爽やかすぎないダウンタウンな雰囲気を漂わせるシティポップの名作。
編曲に坂本龍一さんが起用され、坂本さんのカラーに彩られた一風変わったサウンドスケープが展開される。
歌詞は大貫さんの感情に根ざした、内省的な内容。どこか無機質なボーカルが朗読的にリスナーの心に訴えかけてくる。
シティポップとジャズの中間で絶妙なバランスを保ちつつ、抜擢されたミュージシャンたちの名演を楽しめる内容となっている。
先鋭的ながらどこか身近に感じれる、そんな体験ができる作品だと感じた。


1.Summer Connection

詞は、夏のイメージで作られた。(wiki)

ハーモニーが美しい。
アクセントの効いたベースがおいしい。
ブラスが爽やかな心地よいアレンジ。

2.くすりをたくさん

医者に行くと山の様に薬を沢山くれるという事への、医療に関しての批判があったという。(wiki)

どこか呑気で脱力したサウンドが印象的。
一方で歌詞はドラッグを彷彿とさせる攻めた内容。
優しいボーカルと陽気なサウンドが毒を孕んだ歌詞を包んだ毒薬のようなナンバー。

3.何もいらない

大貫によれば「この時の社会に対して、周りの環境に対して、否定的だったんです。もう全部捨ててしまいたいというか、全部雨のように流して、もう一回最初からやり直せないだろうか、この世の中をと。そんな気持ちがすごくありました」という。(wiki)

ストリングスとシンセの似たようで異なるサウンドアプローチが楽しい。
タイトなドラミングもかっこいい。
ギターの音作りがどこか宇宙的で曲の雰囲気に影響を与えているような気がする。。。

4.都会

大貫は「ずっと東京にいる事もあって、都会とか街に対するこだわりはずっとあって、そういった歌を歌い続けてきたんですが、よくいわれる都会の中の淋しさとか孤独感以外にやっぱり都会ってすごく好きなんです、楽しい事がたくさんあって。でも、このアルバムに関しては、都会の華やかさを否定している訳です。毎夜浮かれて歩いている若い人達とか。そういった何ひとつ生産的な事はない、ただ一夜飲み明かすだけのそういったものに対しての批判かな。もっとやる事があるんじゃないだろうかという気持ちがすごくありまして。これはすごく好きな曲です」とし、スティーヴィー・ワンダーの影響で作った曲だという。(wiki)

退廃的な空気も併せ持った都会の夜を表現していると感じる。
かなりエレクトロなシンセソロが印象的。
「華やかな生活と慌ただしい日常」 アンビバレントな都会の成分を醸し出しているナンバー。

5.からっぽの椅子

シュガー・ベイブのラスト・コンサートでも歌われた曲。この曲について大貫は「時々ポッカリと穴が開くっていうのかしら、ひとりで住んでると。そういう事ってあるんですよね。そういったイメージ」だという。また「ジャズの中にはスロー・ナンバーがかならずありますが、そういうニュアンスでやりました。ジャズになりきるつもりはありませんでしたが」とも答えている。(wiki)

ジャジーなスローバラード。
沈み込むシンセベースが印象的。
ピアノとサックスが夜に聴くとエモエモです。。
ボーカルが軽いため曲全体としてヘビーになりすぎずいい塩梅を保っているように感じる。

6.Law of Nature

大貫が好きだったトッド・ラングレンの“ユートピア”のイメージで書かれ、これもやはり批判的というか、問題を投げかけている曲だという。大貫は「非常にナチュラルになっていきたいという願望があった時期で、今まで積もり積もってきた垢みたいなものがありますよね、そういったものを全部そぎ落とした素顔を非常に見たいというのがあったんです。飛行機で空を切り裂いてしまってっていうのか、そういうものへの悲しさみたいなものを歌っているんです」という。(wiki)

煌びやかなサウンドアレンジとストレートなロックギターの対比がかっこいい。
シンセの音作りはまさに私がイメージする"坂本さんの音"。

7.誰のために

大貫によれば「まさしく弱者からの叫びという感じです。地位とか名誉がなければ、本当に世の中は認めてくれないということがありますが、そういったものへの訴えみたいなものがあります。自分のやりたいことを押し通すということはすごく大変なことで、時々逃げ出したくなるけれど、逃げ出したからといって、それで楽になるか満足するかということはわからないし、だから非常に揺れ動いていた時期です。自分の頑なに守っているものをどこまで押し通せるかという事の表われっていうのか、そういった曲です」という。(wiki)

透き通るようなボーカルが印象的。
ピアノ主体のシンプルな伴奏にボーカルが映えている。
ジャジーで耽美的な演奏が染み渡る。

8.Silent Screamer

この曲もまた逃避願望がテーマの曲。大貫は「エネルギーが結構充満していた時期なんです。これは一応車に乗って、暴走族みたいな気分でワーッととばすイメージなんですが、せめて音楽だけでもそうしたかったというか暴走したかったんです。本当に何かにワーッと突っ込んで自分をバラバラにしたいっていう、そういう心が強い曲です」という。(wiki)

ブラスが印象的なナンバー。
上品で強かな内容にまとめられている。

9.Sargasso Sea

藻が絡んで船が座礁沈没する“魔の海”と呼ばれるサルガッソ海をテーマに歌った曲。(wiki)

今作で最も好きな曲。
かなり前衛的で坂本龍一さんのカラーが前面に出ているアレンジがかっこいい。
日本の海ではない、世界の広大で迫力のある海や波を表現したダイナミックな楽曲。
無機質なボーカルが海の恐ろしさも漂わせている。

10.振子の山羊

大貫は「人間の終末を象徴的に描いているんです。やがて来る人間の終末みたいなものを。滅びてしまうっていう。でも結局また、輪廻みたいなものを信じているので、滅びてしまって枯れ草になってもそれを栄養にしてまた新しいものが芽生えるという不思議っていうのかしら、世の中の。そういったものをテーマに書きました」という。(wiki)

独特なリズムが生み出すグルーヴがおもしろい。
ジャズ的なピアノ、ロック的なギター、坂本さんのシンセ、この三つ巴の絡み合いが最高にかっこいい音を築いている。
最後のフレーズが不思議すぎる。。。
謎を残してアルバムの幕を閉じる。



ここまで読んで下さりありがとうございました。
本日をもって私の大学3年生の夏が終わりました。(後期スタート)(きっと大袈裟)
夏の終わりと儚い感情、そして数パーセントの淡い希望を表現してくれている作品のように感じて、このタイミングで聴いて良かったなと個人的に思えた作品でした。
学校が再開してからも日々の暇つぶしとしてnote更新していきますのでごゆるりと楽しんで頂けると幸いです。
どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。


今回は大貫妙子さんの『SUNSHOWER』をまとめました。拝読いただきありがとうございました。

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