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香りというおいしさ、ナシレマッ。

「香りがいいね」「香りがいいんだよ」

経験上、ごはん話題のときにマレーシア人が香りのよさを謳ったら、それは「おいしい」ということだ。

極端にいってしまうと、彼らは実際に食べなくても、香りさえよければ、その料理はおいしいと判断をする。反対に、どんなに味がよくても、香りがまったくしなければ、残念ながらイマイチ、という評価になる。つまり、香りのないご飯はおいしくない、のである。

それを象徴する料理がマレーシアにはある。香りのよさから、国民みんなが愛してやまないごはん。「ナシレマッ Nasi Lemak」だ。

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photo by Jennifer san

ナシレマッは、白いご飯にサンバル(甘辛い調味料。上の写真だとご飯の奥にあるソース)を混ぜて食べる。それに、きゅうり、ゆで卵、煮干し、ピーナッツといったシンプルなおかずがついているので、食感や味、そして香りがいろいろあって楽しい。

このナシレマッ、主役は、ずばり白いご飯。

おかずではなく(ときに唐揚げなど豪華版もある)、甘辛いサンバルでもなく、見た目は何の変哲もない白いご飯。鼻を近づけると、とってもいい香りがするのだ。

香りのもとはココナッツミルクである。ご飯を炊くときに水とともにココナッツミルクを加えて、いい香りをつける。パンダンリーフ、レモングラスといったハーブを一緒に炊きこむことも多く、香りはもう満点!

ただ、香りといっても、カレー系スパイスのような刺激的なものではなく、もちろんアロマのような香りでもなく、なんていったらいいのかな、、、とっても淡い香りである。たとえるなら、枝豆をゆでたときのような。湯豆腐を湯気のような。ほっこりとした、甘いようにも感じる香りで、いちばん似ていると感じているのは、まさに炊きたてのご飯(とくにジャスミンライス)そのものの香り。

この香りがマレーシア人は大好きで、「僕は毎日食べるよ」と言われても、あっそ、と聞き流してしまうぐらいポピュラーな料理だ。

金森さん。ランカウイでナシレマ

photo by Kanamori san

さて、雑誌『専門料理』June2017(柴田書店)、「香りを学ぼう」の記事によると

料理における五感といえば、まず味覚が挙げられるが、実はおいしさを決めるのは「香り」である。

とある。人間だけがもつレトロネーザルというにおいを感じる経路で、おいしいと感じるそうだ。

香りの好き嫌いは絶対的なものではなく、経験によって決まるものであり、味の場合よりもはるかに個人差や民族差が大きいようだ。

とも記されている。

たしかに、初めてナシレマッを食べたとき、おいしいとは思ったけど、豊かな香りは認識できなかった。「だしで炊いているのかしら? 炊き込みご飯みたい」と感じたのを覚えている。

それから15年経ち、ナシレッ経験値が増えたことで、この淡いを嗅ぎわけられるようになった。そして香りがしただけで、食欲がぐんぐん刺激され、お腹がぐぅ。さらには、マレーシアにいたときの懐かしい記憶やナシレマッ好きの友の顔が浮かび、郷愁や幸福感も感じるようになっている。

香りはおいしい。ナシレマッはそれを証明してくれるご飯だ。

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先日、家で作ってみた。そうしたら、炊飯器でご飯が炊きあがるときに部屋中にいい香りが充満し、幸せすぎて悶絶した! マレーシア料理店で食べるのもいいけど、家で作るのもいいですね。

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