自分で決める。結果はたまたまでいい。
外出自粛期間中のSNSで盛んにおこなわれた、なんとかチャレンジ。あれはいったい誰が仕掛けたんだろう……? というのは横に置いておいて、 #bookcoverchallenge はなかなかおもしろかった。
友人の好きな本に興味がある。なので、あれこれいろんな投稿を眺めていたら、それまでなんとなく感じていたその人のイメージと、紹介している本の感じが見事にマッチしていることに気づいた。ショートカットでアートな感じの友人は、オシャレな装丁の本を挙げているし、いつも個性的な行動で驚きをくれる友人は、時代に旋風を巻き起こした、とんがった本をずばずば紹介していた。ほぉ、名は体を表すならぬ、本はその人の素顔を映すか。今後もし、誰かをもっと知りたいと思ったら、その人の好きな本を7冊ぐらい教えてもらうことにしよう。
ということで、気になった本をいくつか買ってみた(上写真)。そのなかの1冊、『2020年6月30日にまたここで会おう』(瀧本 哲史・著/星海社新書)について書こうと思う。
京都大学客員准教授、エンジェル投資家。若者へのメッセージを伝え続けた瀧本哲史さんが、2012年に東京大学で開いた講義をまとめた本である。
自分で考え、自分で決めて、自分で行動せよ。わかりやすい答えなんてどこにでもない。自分の力で、仲間を集めて、行動し、そして世界を変えていけ。
その大事さを、理想論とか夢物語とか、そんな反論の余地をいっさい許さない完璧なロジックで説いた本である。具体的なノウハウもちゃんと記されていて、まさに、生き抜くための“武器”になる内容だった。
「どこかのすごい頭が良い人が、すべてを決めてくれるのではなく、自分で決める(決められる)ことが超重要」と瀧本さん。
本を読んで、しみじみ思った。
この講義のなかで「8年後にまた会おう」と瀧本さんが指定したのは、今年2020年。奇しくも今、瀧本さんがいう、自分の行動を自分で選択する、いや、しなければいけない時代になっている。
あの人に言われたから、みんながそうしているから、という言い訳が通じない時代。選択肢が各個人の手にゆだねられている時代。これが正解ということを誰にも提示できない時代。庇護される子どもの世界から、自立した大人の世界になった、ということなのかもしれない。
本のなかで、いちばん好きだったのは、瀧本さんのこの言葉だ。
参加者の質問「ここにいる中から何人か、将来、路頭に迷って駅で寝ていたり、起業で失敗したり、という人もいると思うんです。そういう市場でボコボコにされた人に対して、瀧本さんはどういうアドバイスを与えますか?」という内容に対するの瀧本さんの答え。
「この中からもし成功する人が出てきたら、自分はたまたま成功したにすぎないと思って、隣の席にいる、同じように才能があった、たまたま失敗したにすぎない人を助けてあげてください。そういう世界観で僕は生きてますんで」。
これが、瀧本さんのいう、自分で考えて、自分で行動する人たちが生きる世界なんだね。グッときた。
自分が、自分で、といった枕詞のついた瀧本さんの力強いメッセージを読んでいると、つい、他人を切り離した個人主義や競争社会を勝ちぬけといったようなマッチョな社会を想像しがちだ。しかし、瀧本さんの描く世界はそうじゃない。
それぞれが自分で考え、すべてのリスクを自分で引き受けて行動する世界。それは、同じように生きている人に対して敬意を払う世界なんだ。そこから生まれた結果は、失敗しようが、成功しようが、たまたまそうなっただけ。そのことを自分で考えて生きてきた人は知っている。
これからの世界を生きていく心構えができたと同時に、ふっと心が楽になる感覚をもらえた本だった。瀧本さんのいうとおり、本は、生きるための武器になるんだ、と思った。
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ちなみに今回の本の注文は、東京の神田にある、中国・アジア専門書の内山書店さんに一気に注文。すべて一緒に送っていただいて、とてもラクチンだった。急ぎでなければ、町の書店さんに注文するのもおすすめです。