とうふの本棚

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元気が出ないあなたへ 『凍りのくじら』が見せてくれる、孤独な夜の闇と光

 「あの時、なんであんなこと言っちゃったんだろう」と後悔したり、恥ずかしくて引きこもりたくなることがしょっちゅうある。人間関係は本当に難しい。  でもそれ以上に、救われることがある。人のためなら、普段じゃ考えられないパワーが出たりする。そしてきっと、自分も誰かの頑張る理由になっている。  私がどんなに後悔しても、やっぱり人と一緒にいたいと思う理由はこれだ。大変だけどそれ以上に、何度も人に救われてきた。 人は人を救える。私はそれを、辻村深月さんの『凍りのくじら』を読んで再

    • 傷ついた過去を救うのは、スーパーのレジ係?!真下みこと『かごいっぱいに詰め込んで』が見せてくれた、本当の明るい未来

       私は小学生のとき、男子に「お前の顔、岩みたいだな!」と言われたことがある。 今はもうその男子の顔も名前も覚えていないが、隣で友達がニヤっとしたことは、ものすごく鮮明に覚えている。私は岩と言われたことより、友達がニヤっとしたことがショックだったのだと、今ではわかる。  先日読んだ、真下みことさんの『かごいっぱいに詰め込んで』が素晴らしかった。”普通”からはみ出した人々が、様々なきっかけを通して前を向く、明るくて優しい物語だ。短編集になっていて、とあるスーパー「フューチャーマ

      • 死んだ山田を見てると生きたくなってくる  金子玲介『死んだ山田と教室』

         山田は進学校に通っている高校生で、面白くて優しい、クラスの人気者。ここまで聞いて、あなたはどんな人物を想像するだろうか?  本作の主人公山田は、きっとあなたが想像するどんな人物とも違う。  物語は「山田」が死んだところから始まる。山田は面白くて明るくて優しくて、2-Eの人気者だった。山田が死んで最初の登校日、悲しみに暮れる生徒たちに、担任の花浦が席替えを提案する。すると、スピーカーから山田の声が聞こえてきた。なんと山田は、スピーカーに憑依してしまったらしい。2-Eのみん

        • もっと早く出会いたかった!最高のエンパワーメント小説 瀬尾まいこ『天国はまだ遠く』

           私はこの小説を、仕事で上手くいかなくて縮こまっていた頃の自分に読ませたい。  現代社会に疲れた主人公が、田舎の大自然と人の温かさに癒される……そんな物語は数あれど、私にとって、こんなに明日を生きる力になった小説は初めてだった。  本作は、主人公の千鶴が自殺を試みるところから物語が始まる。仕事がうまくいかず追い詰められた千鶴は、誰も自分のことを知らない場所に行き自殺すると決める。とある山奥の村にやってきた彼女は、その村唯一の民宿「民宿たむら」で睡眠薬をやや多めに服用し、自

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