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東カレデートで出会ったイカ男

彼とデートをしたのは2018年の7月。3月に仮氏と別れて暫く活動を自粛していたが、やはり夏は恋愛がしたい。東カレデートを再開し、39歳の男性とマッチングした。
待ち合わせは新宿西口。
私はいつも待ち合わせしてから「あーまたやってしまった」と後悔する事がある。
その彼は遠目から見ても明らかに低身長だった。
後から見返したら身長が未記入だった。
人は欠点は隠したい物だ。
私は本当にマッチングアプリで人を見る目がない。

新宿西口から10分程歩きお魚が美味しい居酒屋へ入る。
ここまでの印象では、彼は話が面白くない。
面白くしようとしているが、それが空回って余計に面白くない。
苦し紛れに彼が大喜利の様な事をしようと言い出した。
「このお刺身の盛り合わせを食べて、ネタの気持ちになってコメントしてみようよ。」
そんな寒い事はやりたくなかった。
「イカがね『私を食べて!私を食べて!』って言ってるよ〜笑」
イカおじさんはドン引きしている私を尻目にどんどんオネエ化して行く。
「『もっと噛んで!もっと噛んで!』って言ってるよ〜笑笑」

私は
「あ、女性なんですねー(棒読み)」
としか言えなかった。
イカおじさんの一人芝居は続く。
「タコがね『俺を食べろ!どうだ?』って言ってるよ〜笑笑」

取り敢えず彼が空回りながら沢山喋っていた。
2時間ほど経つと彼が言った。
イカ「おとうふちゃんは俺に興味無いの?もっと質問してよ〜」
お「結婚願望はありますか?」
イカ「あ、実は俺結婚してて今別居中なんだよね〜」
お「???」

今なら分かるが、東カレデートに登録してる男性は嘘だらけだ。
けれどパパ活アプリでない以上、既婚である事を隠すのはルール違反である。
私はもうこのイカ男に会う事はないと確信した。

帰り道、新宿駅から離れた居酒屋から出るとイカ男は言った。
「ここ、駅からちょっと遠いからタクシーで送るよ。」
初めて気が利く事を言って来た。
タクシーに乗ると、イカ男は目的地は告げずに道順を告げた。
「そう言えば食後のデザート食べてなかったよね。ハーゲンダッツとか好き?駅前のハーゲンダッツカフェでアイス食べて帰らない?」
少し違和感を感じたが、単純にハーゲンダッツのアイスを食べたかったのでその提案に乗った。

私は新宿の地理感が無い。
駅までの道も全く分からない。
中学校らしき校庭を通り過ぎた辺りでイカ男が言った。
「ほら、夜景が綺麗だよ。」
一体どの部分を見て言ったのかが理解出来なかった。
左手には校庭、右手には住宅街だった。
「そこで止めて下さい。」
イカ男は唐突に言った。
私は気付いた。
ここは駅前のハーゲンダッツカフェからは遥か離れた住宅街で、イカ男のアパートの前だった。
タクシーの運転手さんには悪いので取り敢えず降りた。
イカ「おとうふちゃん、こっちだよ。」
お「いやいやいや、ハーゲンダッツって言いましたよね。」
イカ「ハーゲンダッツ、うちにあるよ?笑」
お「え。」
イカ「うちの冷凍庫の中にあるから一緒に食べよ?」
吐き気がした。
イカ男を数秒睨み付け、何も言わずに踵を返し、スマホの地図を見ながら最寄駅を調べる。
イカ男が何か必死に後ろで言っていたが聞く気にならなかった。
幸いまだ電車がある時間だった。
イカと話す能力を持ち、嘘に塗れたチビ男だった。


どうしてアプリで男を見る目がないのだろうか。

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