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恋のリハビリ(トリスハイボールを飲む人)

ラブストーリーは突然に

恋はしようと思って出来るものではない。
「恋人候補はいねぇがぁ?」と、ナマハゲの如く舐め回しながら飲みに行く事にも飽きてしまい、一人でお気に入りのバーに通う事も増えた2023年の初夏の事だった。

ちょうど一年前の私のツイートを覚えている方はいるだろうか?
この彼と意気投合し、翌月飲みに行く事になった。


ナマハゲ戦法で見付けた恋は中々火が付かないが、初夏の夜の爽やかなナンパは夏の予感も相まって良い感じに進んだ。


6月某日
ハイボール君とワインバルへ行った。
ハイボールを歩きながら飲んでいただけあって、やはり一杯目はハイボールを飲んでいた。
私はビールを飲み、2杯目からは一緒に白ワインを飲んだ。
ほろ酔いになった所で1時間カラオケに行って解散した。

お互いの事を殆ど知らないので、探りながらの会話。
お互い出身地はすぐに話すけれど、年齢は言わない。
職業も知らない。
何となく、彼にはまだ話す段階ではないかなと直感で思った。
それは興味がないからでもなく、かと言ってもの凄く好意を持ったからでもない、不思議な感覚だった。
向こうが聞いて来ないと、こちらも聞いてはいけないような感覚。
後にこの感覚や勘を元に私はちょっとした決断をする事となる。


夏の恋は魔法にかけられて

6月某日

ハイボール君と2回目のデート。
下町でお祭りがあったので、夕方に待ち合わせをして出店で飲み歩きをした。
「お祭り」というイベントと人混みも手伝い、気付いたら手を繋ぎながら歩いていた。
彼との近い距離を感じながらぼんやりと「ああ、この人と今日セックスするのかなぁ」と思っていた。
近くのカジュアルフレンチで食事をした。
その後「やっぱりトリスハイボール飲もうか?」といたずらに彼が言った。
気取ったワインも美味しいけど、外で飲む缶のハイボールも美味しい。
お酒の好みが合うのは魅力のひとつだ。
まだ冷めやらぬお祭りの雑踏に再び混じり、トリスハイボールを片手にかき氷やベビーカステラを買って2人で食べた。
どこに行くとも決めずに歩いているつもりだったが、彼の目的地は決まっていた様だ。

いつの間にか出店もひと気もなくなり、とあるビジネスホテルのエントランス前にいた。
「今日、ここ取ってるんだよね」
という彼に少しずるさを感じながらも、歩き疲れた私は何も反論せずに部屋に向かった。


こうなるだろうなとは思っていたが、あまりにも段取りが良く拍子抜けした。
部屋には昼間チェックインした形跡があり、スーツケースとスーツが丁寧にハンガーに掛かっていた。

彼は翌日、そのまま実家に帰ると言う。
「明日は日曜日なのに、なんでスーツ持ってたの?」と尋ねると、月曜日から地方出張なのだそう。
「ふーん。頑張ってね」と伝えて駅で別れた。

そもそも彼は私の近所に住んでいるのに、何で家の近くのビジネスホテルを取ったの?と、疑問が頭をよぎったが、二日酔いで気持ちが悪かったので自宅に帰って二度寝をした。



続く

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