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恋に落ちたら

あまりにも個人的な内容で、書く事を迷いましたが結局記事にしました。有料記事にするのも抵抗があり、時期が来たらひっそりアーカイブに隠すと思います。読者様、どうぞお早めに。

おとうふの葛藤


様々な出会いを通過したが、恋に至る熱量の出会いがないと痛感していた2023年の冬だった。

年末も近付き、今年は海外から帰国して休養している間にクリスマスが終わるのかなぁなんてぼんやり考えていた。


いくつか前の記事で関係が駄目になった「上司さん」を覚えているだろうか?
実はこの上司さん、同じ会社の人である。

ふと12月のクリスマス間近のフライトのデータを調べると、リストに上司さんの名前があった。
まさか、と思う一方で、逆に今までよく遭遇しなかったなとも思った。




数ヶ月前(彼からデートをキャンセルされた2ヶ月後)職場で

「おとうふさん!…おとうふさん!!…お〜い、おとうふさん!!!」

と、私を遠くから何度も呼ぶ声が聞こえ、振り返ると上司さんがいた。
厳しいコメントをしてしまったが故にデートをキャンセルされた身なので、向こうから声を掛けてくれたのは拍子抜けした気持ちになった。

その時はお互い同僚と一緒にいたので「あ、お疲れ様です!」と笑顔でお互い挨拶しただけだったが、彼は私達の間にあった事は良い意味でも悪い意味でも忘れているんだろうなという印象だった。


そんな彼なら、ツンとして顔を合わせるよりは「お久しぶりです」と笑顔で再会した方が喜んでくれる気がした。

フライトの前日にLINEで上司さんにメッセージを送る。

「明日のフライトご一緒ですね!よろしくお願いします。」
「昨日は寝てしまっていました!よろしくねー。ご飯行けたら良いね」

と以前の調子で翌朝に返事が来た。


当日、足早にゲートに向かっていると背後から聞き覚えのある声がした。

「おとうふさん、おはようございますございます。今日は宜しくね。」

「上司さん、おはようございます!お互い制服姿は初めましてですね。長いフライトですが宜しくお願いします。」

こうして、かつて恋愛対象にはもうならないと諦めた男と再会する事となった。


とは言え10時間以上あるフライトは多忙で、恋だの愛だのと言ってられない位あっという間に時間が過ぎ、くたくたの状態で到着した。

40代、50代の先輩方がフライト中に

「上司さん、若い時一緒に仕事した事あって、カッコ良いなとは思ってたけど、歳を重ねてもカッコ良いわね。」

「バスの中でクッキーもぐもぐ食べてる姿可愛いかったわ。」

などとヒソヒソ話しており、大先輩の方々が少女の様にお淑やかになり、上司さんと顔を合わせる前にはこっそり口紅を直していた。
やはり若い時にモテただけあるなと感心していた。

ホテルにチェックインすると、今夜皆んなでご飯に行こうという流れになった。
2人きりで行けるかもと淡い期待をしていたが、上司さんは仲の良い同期と久々のフライトで元々飲みに行く予定だったらしく、そこに私達が参加する形になった。


上司さんが予約してくれたレストランは私も同僚とよく行くイタリアンだった。
クリスマスが間近なので、店内はツリーやリースが飾ってあり綺麗だった。

同僚と一緒に待ち合わせ時間にレストランに行くと上司さん達が笑顔で迎えてくれた。

「じゃあおとうふさんはここに座って」

と、そわそわするお姉様方を華麗にスルーしながら彼の隣に呼んでくれたのが嬉しかった。

「もうすぐクリスマスだから」と赤いトップスを着ており、その事を何度も色んな人に説明している彼の姿は可愛らしかった。

食事は和やかに済み、飲み足りない人達はホテルで飲み直そうという流れになった。
レストランを出る時には私にコートを着せてくれた。
そんなにあからさまに態度に出して大丈夫なの?と、こちらがハラハラする位沢山エスコートしてくれた。

ほろ酔いで歩きながら「ああ、また普通に話せて嬉しいな。この人の事好きなんだな。」と実感した。


この人は大勢でわいわいするのが好きなんだろう。
酔いが回り、話し込んでしまうと周りの事は見えずに夢中で話してしまうんだろう。
レストラン同様に隣に座った私だが、彼が右隣の同期と夢中で話しており私に背を向けていた。
去年と同じシチュエーションだ。
けれどそれは私を蔑ろにしているのではない事だけは今回は分かった。

12時を過ぎ飲むお酒もなくなり、お開きとなった。
2人きりで話せていなかった為名残惜しい気持ちもあったが、不自然に居座る訳にも行かず自室に向かった。



部屋のドアに鍵をかけるとすぐ、上司さんからLINEが来た。

「もう少し一緒に飲みますか?」

身体が熱くなり心拍数があがった。
くるりときびすを返し足早に彼の部屋に向かった。


つづく

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