本物の低姿勢
今日も昨日行ったスーパーでお弁当を買って、ホテルの休憩室でみんなと一緒に食べた。
今日は昨日よりも話が弾んでダラダラと話していると、現場監督が串カツみたいなものが乗った紙皿を片手にやってきた。休憩室にあるトースターを使いに来たらしい。「どうも〜」と気さくに話しかけてきた。
監督はおしゃべりが好きみたいだったので、色々話しかけてみることにした。私はえらい人をみるとゴマをすったり(概念)靴を舐める(概念)クセがある。
「いつから軽井沢に来てるんですか?」と聞くと、10月から来てて、正月だけ帰って、今月の後半にやっと家に帰るとのことだった。
「やっと帰れるんですね〜。うれしいですね!」と言うと「まあ帰っても喜ばれんよ、亭主元気で留守がいいっていうやろ?」と言って、少し大袈裟に笑った。
一瞬寂しそうだったけど、定年後のほうが忙しいとか、流行のボアがついてる靴を買うか迷ってるとか言ってて、なんだかんだ仕事もプライベートもそれなりに楽しんでいそうだった。
監督は、串カツを突っ込んだトースターが鳴ってもしばらく喋っていて、温めた串カツは多分また温める前の温度になっていた。「明日良かったらみなさん名刺交換させて下さい。ほな!」と、子供ほども年の離れた私達にえらく低姿勢で明るく挨拶をして自分の部屋へ帰っていった。
そういえばこの文章を書くまで監督がえらく低姿勢であることに気づかなかった。相手に低姿勢であることすら気付かせない、嘘くさくない、本物の低姿勢だ。
初めてこの監督と会ったとき、見た目は60代なのに中身が(いい意味で)若い人だなぁという違和感があった。なんか偉い人だろうに偉そうな素振りを欠片も見せない。ぜんぜん"おじさん"ぽくない。
話してみると、そのひょうきんな語り口から垣間見える後悔や葛藤、前向きな諦念と、彼自身にも忘れ去られているであろう彼の孤独が、私から見える彼を鮮やかにしていった。
明確にこれと言った理由はないけど、なんとなく、また会いたい人だな、と思った。
明日は最終日。帰り、高速に乗る前にイオンによって監督オススメの長野限定のカップ麺を買って帰ることにした。