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さみしさってなに?
このノートは、2.3年前に↓この本↓を読んだ感想です。
人類進化の謎を解き明かす(ロビン・ダンバー著) https://amzn.asia/d/ayq6WR9
この本は、人間がいかに進化したかを化石などの遺物からではなく、ホモ・サピエンスが誕生する前の初期の類人猿の時代にまで遡り社会的な切り口で紐解いたものです。
簡単に説明すると、ちゃんとコミュニケーションをとってみんなで行動していた個体が生き残ってホモ・サピエンスになったということですね。単独行動するやつやコミュ障は滅びました。
つまり、みんなでいないと不安になる「さみしい」という感情は、生存率を上げるための本能だったんです。
私は、効率厨で、色々なことの効率を上げる上で邪魔なだけの「さみしい」という感情がなぜ存在しているのか、本を読むずっと前から疑問に思って向き合ってきました。社会は一人でも生きていけるように完璧にできているのに、「何かが欠けている!」「他者と関わりたい!」と強く訴えかけてくるようなこの感情は何なのだろうか?
さみしさを無視しようとしたこともありました。でも我慢していると反動でついつい他人にキモいことやウザいことしてしまいますよね。ストーカーみたいになっちゃったり過剰な自己主張をしたり、しまいにはさみしすぎて希死念慮に襲われたり。
私は、これらがとても嫌だったんです。やらかしたあとにはいつも自己嫌悪していてとても苦しかったです。今はそんなにやらかしませんが。
そんな疑問を胸に抱えていた時に、プロ奢ラレヤー主催の読書サークル「三つ星スラム」の群れ研究所というチャンネルで課題図書となったこの本を読みました。この本との出会いは私の生き方を大きく変えてくれました。
下記で使用している画像は、サークル内の木曜の読書会という定例イベントで発表した時に作ったスライドを切り取ったものです。
スライドだけだと言葉足らずなので、ずっとnoteにまとめたいなーって思っていたのですが、先延ばしにしていたのと、きっかけをくれた群れ研究所が近々閉じるとのこと、お陰様で最近とくに苦悩も刺激もなく平和に暮らしておりnoteに書くネタが無いのでいっちょやるかーという感じです。
はじまり、はじまり。
ダンパー数
ダンパー数、たぶん聞いたことありますよね。
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この円が重なった図は、ホモ・サピエンスの個体がどのくらい親密な人とどのくらい付き合いがあるかというのを表した図です。
中央からすごい親密、まあ親密、知り合い、顔見知りといった感じになります。親密になるほど人数は少なく、最も親しい5人(くらい)を中心に、親しさが①段階下がるごとに内側の輪のの3倍くらいの人数のひとと関わりを持つという法則があるとのことです。これがダンパー数と呼ばれています。
ホモ・サピエンスは最も親しい個体と最も多くコミュニケーションコストを割きます。↓こんな感じです。
コミュニケーションには時間と感情が使われます。それをこの文章の中ではコミュニケーションコストと呼ぶことにします。
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え…? 親しい人、5人もいる…?
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と思った方も多いのではないでしょうか。
当時はプライドが高くてスライドには書けませんでしたが、何を隠そう私のことです。親しい人のバランスがダンパー数に当てはまらない人は「さみしさ」をこじらせてコミュ障になってしまい、人がよけい遠ざかってしまう悪循環におちいっているのではないだろうか?と私は思いました。
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本の中の社会脳仮説によると類人猿は大きくて親密な群れを作るという生存戦略を経てホモ・サピエンスになったそうです。
昔は群れないと死んじゃってたんですね。孤立していると食べ物も満足に手に入らないし、捕食される確率も上がります。食べたり寝たりするのと同じくらい、コミュニケーションをとることが生きてくうえで不可欠なことだったのです。
おなかが減ったら食べ、眠たくなったら寝るように、本来はさみしくなったらコミュニケーションするべきなのです。
「さみしい」はホモ・サピエンスのDNAコマンド
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DNAコマンドというのは、聞いたことありそうでないかもしれない勝手に作った造語なのですが、例えば蜘蛛が生まれながらに誰かに教わることもなく適切な場所に効率よく獲物がとれる網目状の蜘蛛の巣を作れるのはなぜでしょうか?それは生き抜くために遺伝子からの受ける司令によるもなのではないか?ということです。
「さみしさ」とは緻密な群れをなして生き抜いてきたホモ・サピエンスのDNAコマンドなのではないでしょうか?
「暇つぶし」と「毛づくろい(コミュニケーション)」
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お腹が減ったら食べるし、眠くなったら寝ますが、じゃあ、さみしくなったら具体的に何をすればいいの?と思いませんか?
さみしさが発生するには実は2つの条件があります。「ありあまる暇」と「コミュニケーション不足」です。
繰り返しになりますが、ホモ・サピエンスは生存に必要な食事や移動の時間を効率化してまでわざわざ「暇」を作り、毛づくろいなどの「コミュニケーション」することによって群れをなして生き延びてきたんですね。
文明の未発達な時代には、水を汲むために川や井戸に行ったり、スーパーも宅配もないので狩猟採集するし、ガスもないから料理するにも火を起こさないといけないし、今より何にでも時間がかかってた上、常に近くに生活と苦楽を共にする仲間がいて、役割分担や情報交換のために否応なしにコミュニケーションをしていて「さみしい」なんて感じる「暇」はなかったでしょう。
一人でいても死なないくらいに文明が発達したのは良いことですが、文明によりコミュニケーションだけでは埋めきれないほどの「ありあまる暇」が出来てしまったことより、私達にはもうほぼ不要となった謎の心の欠乏感「さみしさ」だけが残ったのです!と、私は思いました。
つまり、さみしさを満たすためには「暇つぶし」と「コミュニケーション(毛づくろい)」2つのアプローチがありどちらも大事なのだと思います。
2つのバランスは人それぞれだと思うので、自分でちょうどよいバランスを模索していくと良いと思います。ちなみに私のバランスは、1年くらい模索したところ8:2くらいで暇つぶしがたくさん必要な人でした。
私達はしょせん、動物です。
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もしもおなかが減ったまま何も食べなくても死なずに居られたとしてそれはとても苦しいのではないでしょうか。
たとえ一人でも生存できたとして、たった一度の人生、わざわざさみしさに苛まれたまま苦しみながら生きていく必要もないのではないだろうか。と、私は思いました。
それから私は暇つぶしとコミュニケーションに真剣に取り組むことにしました。
暇つぶしは、人の役に立つことももちろん良いのですが、子供の頃から好きだったあそびを真剣にやってみるのが個人的に推しです。無駄だと思っていた遊びも自分が楽しい人生を送るために必要ななことだと納得できたので、今は心から楽しむことが出来るようになりました。
一番好きな暇つぶしはスリザーリンクという数理パズルなのですが、スリザーリンクの話をサークル内のグループ通話で熱く語り始めると、興味がない人が多いのかだんだん人が減っていくのが少しさみしいのであまり語らないようにしてます。
パズルに限らずあまり趣味の似てる人がいないので、グループ通話で趣味の話をしたら何の話でも大体そうなるのですが、今ではそんな誰も興味ない話を最後まで聞いてくれる友だちも何人かいるし、楽しい日ばかりではありませんが謎に苦しい日や希死念慮はなくなりました。
友だちもそこそこできて、遊びすぎてお財布が破綻してますが、とても幸せです。
友だちを作るためのコミュニケーションについても2年くらいかけて導き出した結論があるのですが、書くとすごく長くなるので別のnoteにします。お楽しみに。乞うご期待。ぜってえ読んでくれよな。
※サムネのかわいい絵はこのスライドの表紙です。私が書きました。依頼、受け付けてます。
※毛づくろいとは…類人猿の元祖コミュニケーション。コミュニケーションは、笑い、歌、踊り、噂話、宗教などの段階を経て発展していったらしい。
おわり