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揚げ納豆

今日は久しぶりに揚げ納豆が食べなくなって、作って食べた。 

揚納豆を作るとき、いつもあることを思い出す。

この揚げ納豆のレシピは前に好きだった彼から教えてもらった。彼は居酒屋の息子で仕事はせず店を手伝っていた。

ある時から私が働いていたカラオケに頻繁にお客として来るようになった。自然と仲良くなって、友達を絡めてプライベートで会うようになった。

いつも一緒にいた彼の友達は仕事が忙しくて、一緒に遊んでいても隙があればすぐ寝てしまう。なんでいつもすぐ寝てしまう友達と遊ぶのか聞いたら、友達は酒を飲まないから運転してくれるから、と言っていた。

オーダーのお酒を持っていくと一人でちょっとつまんなそうに歌ってた。

彼はなんか掴みどころのない人で、それがすごく魅力的だった。何にも囚われたくなさそうだけど寂しそうだった。そういう所が私の狩猟本能に火をつけた。

初めて二人だけで会ったときに私がキモい距離の詰め方をしてしまってから、なんか距離を置かれるようになった。

はっきり好きではないと言いたくなさそうな彼に、白黒つけてほしい私は、好きなの嫌いなのはっきりしてよ!と詰めてしまった。そして、ごめん、とだけ言われた。

もう脈が無いのなんてわかっていたが、一度付き合えそうになった感覚にすがってしまい諦められなかった。でもどうしたらいいか分からなかった。

直球ストレートの剛速球しか投げれないので事故ってしまう。恋愛とか駆け引きのセンスが全くないという自覚はあった。

どうやったらもう一回仲良くなれるんだろうか。恋愛を1から勉強しよう!と思った。

そう考えながら恋愛系の書籍でも漁ろうとネットで検索してたら、復縁コンサルタントの有料サイトを発見した。最初の3回くらいは無料で試せるらしい。これはいい。

・一度好きになったことがあると言うことは復縁できる可能性も高い!
・復縁コンサルタントさんのおかげで復縁できました!(利用者のよろこびの声複数)

などと書いてあった。

おお!と思った私はソッコー相談を送ってみた。

かくかくしかじかで(付き合ってもいないけど)復縁したいのですが出来ますか?と送ると

可能性は充分にあります!と自信満々に返ってきた。

私の担当になった人は元ホストのギャル男みたいな男だった。ギャル男は経験と心理学を駆使して緻密な作戦を立てる感じだった。

一番初めに、ギャル男に私の狩猟本能丸出しのキモいメールを添削してもらったら、キモくない当たり障りのないメールになった。ちょっと物足りない感じもしたが、素直にそれを彼に送ってみたら、なんと久しぶりに返事が来たのだ。

私のハートに雷が落ち、その時から私は復縁コンサルタントの信者になった。

無料回はあっという間に終わり、彼からのメールの返信があったので、すんなり課金した。料金は回数券みたいになってて文字制限があって一回7000円くらいだった気がする。それが、まとめて買うと一回あたり5000円とかに安くなるという感じだった。

毎回文字制限ギリギリまで情報と質問を詰め込んで相談を送った。

手持ちの金はすぐに底をつき、私は、プロ○スに足繁く通うようになった。

課金効果はばつぐんだった。3万円くらい課金した頃、距離を置かれてメールの返事もまばらだった彼とデートできることになったのだ。

ギャル男のアドバイスで、今度居酒屋さんのレシピをうちで作って教えてよ^^って送ったらすんなりオーケーしてくれた。

デートはスーパーでお買い物するところから!服装はこんな感じ!言い寄るのはNG!など全部ちゃんとギャル男に言われたとおりに身も心も準備した。

いざ当日、お買い物をして家についた。お買い物はなんかふたりとも慣れてなくて、嬉しさと緊張感でぎこちなかった。平常心でいようとするほどなんかニヤけてしまう。ハスハス。

彼は多分あんまり人に料理とか教えることなんてないんだろう、話し方はなんかぎこちなかったけど、手先は慣れた感じで、口数少なめに説明しながらささっと3品くらいおつまみを作ってくれた。

揚げ納豆、海苔チーズ春巻きなど(あと忘れた)。

中でも揚げ納豆がめっちゃ美味しかった。

揚げを一回茹でてから半分に切り、冷めないうちに袋になるように開いて、破れないように気をつけながら中外を裏返す。

2センチ四方くらいに小さく切ったスライスチーズを袋の上下に1枚ずつ入れて、刻んだネギと混ぜた納豆をつめる。

袋の口を楊枝で閉じて、すこし平べったくなるように整えてから、高すぎない温度の油で両面を揚げる。だいたい色が少しこんがりしてきて、表面がカチカチになるくらいまで。

納豆についてくるタレか醤油をつけて食べる。

裏返すと揚げがサックサクになるんだよねと言っていた。ちょっとだけ入れたチーズがめっちゃいい。

その後も彼と友達を交えて何度か遊んだが、彼と二人で会ったのはそれが最後だった。

言動は操作できても、溢れ出る鼻息の荒さみたいなのが伝わってしまったんだろうなと思ってる。

その数ヶ月後くらいに私の異動が決まり地元を出ることになった。引っ越す直前に彼の居酒屋に行って揚げ納豆と焼鳥とかを頼んだ。転勤になった、と伝えたら、彼は距離のある作った笑顔で頑張ってね、と言った。

寂しさで元々バカだった金銭感覚に拍車がかかり、復縁コンサル以外にも色々課金して100万くらい借金を作ってしまったが、もうこの揚げ納豆は一生食べれるのでなんだかんだ良かったと思っている。

レシピは残るしいつでも同じ味になるのですごい。

そんな私も今は結婚している。昔好きだった男から教えてもらった料理だとは知らずに、うまいうまいと食べる旦那を見ると、面白いような申し訳ないようなよくわからない感情が湧いてくる。

何回も何回も旦那と一緒に食べてたら、そのうち少しずつただの日常のひとコマとしてこの思い出の濃度も薄まっていくのかもしれないけど、それでもきっと私は毎回思い出す。


さいごに

しょーもない女の駄文を最後まで読んでいただきありがとう。

揚げ納豆、すごい美味しいので皆さんもぜひ作ってみてね。そして作ったときには、是非このイタイnoteのことも思い出してね。

材料のせときます。

揚げ…5枚
納豆…3-4パック
スライスチーズ…2枚(10等分)
長ネギ…1/2ほん(みじん切り)

※タレは混ぜずにつけダレにするといい
※レモンとかポン酢でもおいしい
※作り方は上記


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