友達が死んだ
久しぶりにインスタを開いたら、高校の時のバイト先の店長だった人のポストがタイムラインに流れてきた。
今度実家に帰ったときに顔を出そうと思っていた友達の店のその友達の誕生日会をやったと言うポスト。
でも、なんかすごい違和感があって、彼はいつも相手を立てるタイプの人で、こんなふうにあんまり自分を盛大に主役にするようなイベントを打つような人じゃない。
写真も誕生日会なら友人たちに囲まれたその友達が写ってるはずなのに、友達のひょうきんな変顔が印刷されたポスターと何年か前の写真で、文章にはたくさん泣いたとか、やたらかしこまってまた会おうねって書いてあって、まるで友達が、死んでしまったような書き方がされていて、まさか、まさか…という気持ちでその友達のアカウントを見たら「本当にお世話になりました」とか「天国でも酒飲んでるかな」とか書いてて、ああ、本当なんだ…と。
亡くなった理由は想像できる。お酒が大好きで会うたびに太っていってたし、この人きっと長生きしないだろうな、とはうすうす思っていた。
元店長とその友達が中学の同級生だということは友達と友達になってから知った。友達は私がホステスをやってた頃の常連で、店をやめてからも時々みんなで飲んだりしていた。
その元バイト先の店長のポストに返信をした。0時を回ってたし、迷惑かとも思ったけど、どこかに気持ちを吐き出さなくては寝れなそうだし、しょうがなく短い文章で。
生きている人の存在を感じたくて、居間のソファーで寝てしまった旦那を起こしてベッドで寝かせた。いつもは鬱陶しいイビキを心地よく感じる日が来るとは。
元店長はDMをくれて、「彼(友達)は友達に恵まれすぎて全員には直接言えないけどお世話になりました」ってお葬式で友達のお兄さんが言ってたから伝えておくねと、5週間前に突然病気で亡くなったんだよ、その日にお店は閉店したんだよと彼の最期など、聞きたかったことをすべて教えてくれた。9万人に満たない小さな街なのにお葬式には800人も集まって街中が悲しみに暮れたと言っていた。そりゃそうだよな、本当にそんだけいいヤツだった。
前回、たまたま実家に帰ったときに、後輩Aの店に飲みに行ってたところ、亡くなった友達のお気に入りのホステスである別の後輩B(美人でモデル体形)がケイナちゃんに会いたい!と後輩Bが好きなその友達をお店のアフターで連れてきてくれて、会ったのはそれが最後になった。ダーツをして、ちょっとカラオケを歌った。話したことは全然覚えてないけどたくさん笑って楽しかったのは覚えてる。
今日バイト先に行く車の中で、友達のことを色々と思い出してた
口から出る言葉は半分以上が冗談で、でも人を傷つけるようなことは絶対言わなくて、本当に明るくていいヤツだった。誰からも好かれてて友達もたくさんいたけど、恋愛には奥手で、皆にお前はいいヤツだから絶対結婚できるよ〜って言われても、いっつも「俺のことなんて好きになる女の子なんてゴニョゴニョ…」と言うのだった。でも、寂しがりで、隙あらば女の子の店に飲みに行っていた。
その最後に会ったとき、友達が酩酊顔をしだしたのでそろそろ帰ろうか、と言って解散したのを思い出した。友達は酩酊しても笑顔で、思い出はだいたいバカ笑いしてる笑顔か酩酊してる笑顔。
寂しがり屋なところが、昔の私とすごく似てて彼とは通づるものがあった。誰かが亡くなると「そっちに行った〇〇と会えるだろうからさみしくないね」とか言うけれど、死んで向こう側で誰かと会えたからって彼の中の寂しさは癒えるわけがないと思った。
彼はそんなにたくさんお酒を飲んで、体を大事にせず、死にたかったのだろうか、生きたかったのだろうか。
私は何が起きても大体のことは「最悪じゃなくて良かった〜」となるのだが、死ぬことはどうあがいても最悪だなと改めて思った。あの時会えて良かったなんてあまりにも苦し紛れで、本当は、再来月に帰ったときに、また会いたかったよ。死んだことを納得できる年齢でもないし、病気だって予防できたじゃんか。
なんで体を大事にしなかったんだ、周りはなぜ止めなかったんだと責めたくなるけど、生まれたときから死ぬことは決まっていて、ただそこにある最悪なさだめがやってきただけで本当は誰のせいでもないとわかってる。彼自身を含めて誰をも責めないことがきっと正しいのかもしれないな、と思った。彼が優しくしてくれたみたいに、優しく彼の死を受け入れよう。
私が私自身にもそう思えるように、体を大事にしていこうと思った。本当に健康ってベタだけど、あなたが死んだら想像以上にみんな悲しむから、みんな体は大事にしたほうがいいよ、ほんとうに。ケイナちゃんは健康に生きます。
今日は、一週間ぶりのバイトだった。タイムカードを切って店に入ると、見慣れた顔の同僚たちが動いて喋って笑っていた。みんなが生きている。嬉しいな、すばらしいなって思った。
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