いいヤツとワガママボディとホモサピエンス
私はいいヤツでいたかった。
いいヤツでいるには色々条件があって、いつもいいヤツでいるのはなかなか難しい。と、思っていたが、いいヤツではもういられないみたいだ。
私がいいヤツかどうか決めているのは私で、私には私のなりたい「いいヤツ」がちゃんとある。ルフィみたいなやつ。ルフィは弱いものに優しくて仲間を大事にしてて悪いやつをぶっ潰す。かっこいい。
でも私のなりたい「いいヤツ」は私の体質とすごく相性が悪い。
私はかなり縄張り意識(?)と五感の感度が強く色々なことに関して過敏(私は過敏だと思ってないが一般との相対的に)で、とにかく謎のマイルールが多い。こだわりが多くて気難しいと身内から言われる。
マイルールはできるだけ他人に押し付けたくはない。自分のワガママで他人を我慢させるのは「いいヤツ」に反するから。
他人といるときは、「いいヤツ」を実現するためにマイルールを常に表に出さないように心がけている。だから他人と過ごすだけでとても疲れる。
そんなに疲れるなら他人と関わらなければいいじゃない、と思うだろうが、それもできなくて、他人と積極的に関わりたいという気持ちもなかなか抑えられない。これは多分ホモサピエンスの本能。
いいヤツとワガママボディとホモサピエンスは私の前に他人がいる限り私の中で常に葛藤している。
コイツらのどれかが我慢の限界に達すると爆発して他人や自分を傷つける。我ながら自分を扱うのがすごくめんどくさい。私は常に私の性質に振り回されているのだ。
良い意味で鈍感で、様々な物事を水のようにしなやかに受け容れて生きている完璧ないいヤツを見ていると、自分のいいヤツの才能のなさに悲しくなる。
才能がないのは分かっていたけど、でもまだ完全には諦めきれていなかった。もっと訓練すれば、場所とか条件を変えたりすれば、場合によってはいいヤツになれるんじゃないか?とちょっと期待していた。
でもそんな私をちゃんと絶望させてくれた人がいた。その人は、空気が読めなくて、傷つきやすい、全く悪意のない人。
ずっと前から苦手に感じていたけど、なんで苦手かずっとわからなくて悩んでいた。相手の悪いところを探してみたりしたけど、なかなか見つけられなかった。
ただその人がいると、私が受け容れたくない致命的ないいヤツとの矛盾を嫌というほど自覚させられてしまい、それが苦しかったのだ。相手は何も悪くなかった。
その人は空気が読めないので私のマイルールを脅かしまくるし、やんわり避けても気づいてくれない。
耐えられなくてワガママを押し付けると相手は自己嫌悪してしまうし、相手のスペック不足を責めてしまうのはそれはもう最低だ。
苦しいからもう静かに離れたいけど、その人とは共通の知人が多いから、ピンポイントで納得してもらい離れるためにはこのことを全部理解してもらわなくてはならない気がするが話したところで理解してもらえるかはスペック的に怪しい。
静かに離れるには私が共通の知人が沢山いる居心地のいい群れから姿を消すしかないんだろうがホモサピエンスがそれを許してくれない。
その人がいると私(ヒーロー)と私(ワガママボディ)と私(ホモサピエンス)が殺し合いを始めてしまうのだ。このままでは自分に殺されてしまいそうだった。
私が特異的に変なだけで相手は何も悪くないのでマジでできるだけ傷つけたくない。仲良くなれて嬉しかったし、楽しかった思い出も嘘じゃない。
ただ、静かに私から離れて、楽しく幸せに過ごしてほしいと祈っている。
私はその人のおかげで、いいヤツへの憧れに完全にやぶれてしまった。どうしてもケジメが要るならば絶望の最後の仕上げにちゃんと向き合って「いいヤツ」にトドメを刺してもいい。
私はもう私を糾弾したくないし、ただこの気持ちを誰かに聞いてほしかった。
瀕死のいいヤツが最期にごめんって謝りたがってるけど、向き合うときにはちゃんとクズになって死んでくれるといいな。
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