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件名:ただのリスナーより/駄作【ラジオ生活史】

インフルエンサーや作家、漫画家などさまざまなジャンルで活躍するクリエイターに、ラジオとの思い出や印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。ハガキ職人の駄作さんは、落ち込んでいた孤独な時間をラジオに支えてもらい上を向く元気をもらったといいます。今回はいつも番組へ送るお便り風にラジオへの想いを込めていただきました。


兵庫県 RN 駄作


みなさんこんばんは。

今日のテーマの「わたしとラジオの思い出」ですが、これは、めちゃくちゃ難しいです。特に、「わたしと」の部分がかなり難しい。なぜならぼくは、ただの平凡リスナーだからです。ラジオが好きな有名人でも何でもない。おそらく、このエッセイの最後にくるプロフィール欄には、座右の銘を書くことになると思います。
だけど、この何もない自分をまんま受け入れてくれるもの。それがラジオなんじゃないかとも思っていますので、どうかお付き合いを。


ラジオを聴き始めたのは、大学生でした。その頃から今と変わらず、いつも聴く時は一人。油断も隙もありすぎる状態で、「わかるわぁ~」と聴こえてくる話に相槌を打つ。「狂ってるよあんた…」と届いたメールに思いを馳せる。大好きなパーソナリティがいて、同じようなリスナーがいる。だから、一人ではあるものの、独りを感じたことはありません。


よし、ラジオに投稿してみよう。初めてそう思った頃、ぼくはハローワークに通い、平日の公園でぼーっとするような毎日を過ごしていました。会社を辞めてしまい、友人と会うのは気まずい。家族と話すのは、もっと気まずい。そんな時、独りの自分が頼っていたのがラジオでした。番組の途中に差し込まれる謎の人物たちからのメール。どこの大学とか、どこで働いてるとか、何歳とか。そういうものをすっ飛ばして届けられるメッセージ。それをまっすぐに、時にナナメから受けとめて、言葉を返すパーソナリティ。その関係性が、すごく羨ましく感じたのを覚えています。


自分のモヤモヤしてることや、楽しいと思うことを番組にメールするようになってからは、色んなことを経験させてもらいました。やさしいあるあるや、お菓子の川柳を書いたかと思えば、ひどい猥談を綴ったり、人生相談をぶつけたりしたことも。残念ながら、そのすべてが届くわけじゃないけど、たまに届くこともありました。「くだらないね」と笑ってくれることもあったし、「なるほどね」と理解してくれることもありました。そうやって独りのぼくは、なんとか世の中と繋がっていたんだと思います。


不思議なことに、何ひとつ持っていない「駄作」になって、自分なりに色んなことを考える機会が増えました。身の回りのこと。世界のこと。人生について。パーソナリティが見つめている世の中を、自分も見つめようと思えてきた。すると、「ラジオ以外でも、自分まだ頑張れるんじゃないの?」と、そんな気持ちが湧いてきました。世間体や失敗という邪魔者。そんなもの関係なく、いつものように迎え入れてくれるラジオのおかげで、もう一度、上を向いてみようと思えたのです。


いまぼくは、関西の片隅でコピーライターという仕事をしています。広告のキャッチコピーを考えたり、パンフレットの文章を書いたりする仕事です。これを言ってしまうと、このエッセイの完成度を「ただのリスナーなんで!」と逃げ切れなくなってしまいそうですが、でもやっぱり言ってしまいます。
終わらない謎の修正作業。偉い人のいる打ち合わせ。大事なプレゼンの直前。心臓の鼓動が早くなる瞬間に考えるのは、「帰ったらラジオを聴こう」ということ。そうすると、ちょっと落ち着きます。自分を受け入れてくれる場所を持つと、人って、ちょっとだけ胸を張れるみたいです。


もしも、クイズタイムショックみたいなルールで、「好きな番組をひとつあげてください」と聞かれたら。ぼくはきっと、オドオドしながら時が過ぎるのを見守ることになります。そんなの、ひとつに選べないのです。


ただ、『さらば青春の光が Taダ、Baカ、Saワギ』について触れないわけにはいかないと思います。コピーライターであるぼくの考えたキャッチコピーが、初めてテレビで放送されたのは、この番組のおかげです。「声の可愛いリスナーの旦那決定戦」という、もはやどう説明したら良いのか分からない企画で電話出演した際に、さらばのお二人につけた「才能が霞むほど下品」というキャッチコピー。この言葉を森田さんがテレビ番組で話してくださり、テロップにまでなっていたのを見た時にはとても嬉しかったです。好きなことをやっていて、夢みたいなことに繋がることあるんだなって。こう書くと、この番組の繋がりがハートフルで、愛に満ちた番組のように聞こえるかもしれないですね。断じて言っておきます、そういうことではない。それだけは違う。だけど危なっかしくて、とても面白い番組です。


他の番組の話もしたくなってきました。「『ハライチのターン!』で元気をもらって、『おぎやはぎのメガネびいき』で眠りにつく」みたいなことも話したいです。ぼくは、本当に木曜日に救われているのです。疲れたときに、カレンダーを見るといつも木曜日。そういう曜日を、ラジオを聴いてる人は持ってるんじゃないかなと思います。「あなたは何曜日?火曜日?じゃあ『アルコ&ピース D.C.GARAGE』と『爆笑問題カーボーイ』だね!」みたいなことです。社会人の自分にとって、どうしようもない平日を好きにしてくれているのは、きっとラジオなんだと思います。


ぼくたちがどんなに落ち込んでるときでも、ラジオをつければ、パーソナリティが話をしてくれています。それって、パーソナリティもまた、色んな日々を送りながらラジオをやっているということですよね。晴れの日も、雨の日も、ラジオブースに座ってくれている。だから、ぼくにとってのラジオが「独りを感じない場所」であるように、「帰れる場所」であるように。大好きなパーソナリティにとっても、ラジオが心安らぐ場所であればいいなと思います。「誰が言っとんねん!」という話なのですが、電波の先で、本名も晒してもないぼくが言ってます。


分かってたことですが、話が長くなりました。ラジオについて好きなように書いて良いなんて、そんな機会ないですから。


パーソナリティのみなさん、スタッフのみなさん。

いつも楽しい番組をありがとうございます。


あと、受け入れてくれて、ありがとうございます。


以上、ただのリスナーから、すべてのラジオ番組に送る“ふつおた”でした。

(あっ、いつものメールなら、この辺に住所とか名前とか電話番号とか入れてます!)



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駄作
平成生まれ、兵庫県出身。ごく普通の大学を卒業。公園のベンチで、ラジオを聴きながら鳩を眺めている。メールはいつもGmailより送信。座右の銘は「お楽しみはこれからだ」。


Illustration:深川優 Edit:中前結花、ツドイ

(こちらはTBSラジオ「オトビヨリ」にて2022年7月27日に公開された記事です)