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ジェンダーレス
先日、大学のゼミが一緒だった友達に30年ぶりに会った。
数年前まで年賀状のやり取りはしていたが、しばらく音沙汰なし。しかし、私がうつ病で休職中だということを賀状代わりのLINEで伝えてから、ちょくちょく連絡をくれるようになった。その日は二人で昔を懐かしみ、私が看護学校に通い始めた頃の話題になった。
看護師がまだ「看護婦」「看護士」だった時代である。
「いや~初めて言うけど、お前が看護婦になるって聞いたとき、正直すごく驚いたよ。性転換したのか?!って思ってさ~」
「看護師 =女性」という固定観念が当時の彼の頭を支配していたらしい。
訪問看護をしていた頃、デパートの配送センターでアルバイトをしていた時の上司に会った。定年退職後の再就職だったのか、たまたま訪問先の駐車場の管理人をしていた。彼とも約30年ぶりの再会だった。当時の私は、大学卒業後も定職につかず、フリーターのような生活をしていた。しかし、両親の勧めもあって看護学校を受験する決意をした。彼とこんな会話をしていたのを思い出した。
「お前、大学出たのはいいけど、これからどうするんだ?」
皮肉半分、心配半分で聞かれた。私が看護士を目指していることを伝えると、「看護婦ってのは、じじいやばばあのしりの穴に指を入れて、大便をかき出すんだぞ。お前にそんなことできるのか?」とからかわれた。
何も言い返せなかったことを覚えている。
「看護士というのは男の看護婦です。やることは看護婦と同じです。」
看護師になっても医師と勘違いされたり、好奇の目で見られたり、とにかく説明に苦慮することがよくあった。
働き始めたころは、明治生まれの女性から
「男の人に下の世話までさせては申し訳ない」とトイレ介助を丁重にお断りされた。
男尊思想がジェンダーの壁となった。
時代は流れたが、
「男の人にトイレ介助されるなんて恥ずかしいわ」と断られた。
羞恥心が壁だった。
確かに今でも、「男性」という理由で断られる場合はあるが、男性看護師の数も増え、昔よりも抵抗なくケアを受け入れてもらえるようになった。
今や看護師にかかわらず職業のジェンダーレス化は進んでいる。自分がやりたい職業に就くのに性差が障害にならないというのは、良い時代になったと思う。
そういえば、先ほどの大学生時代の友人。私を追いかけるように、地方銀行を退職し地元の看護学校に入学。今では精神科の看護師として20年以上のキャリアを積んでいる。