見出し画像

科学と芸術の共通点

今年最後の記事になるかもしれない今回は、坂本龍一さんのご出演番組をご紹介させていただくことになりました。
坂本龍一さんといえば、この2023年にご逝去された世界的な音楽家です。

今回ご紹介する番組は『スイッチ インタビュー 「坂本龍一×福岡伸一」』


番組自体は今年の8月に放送され、秋頃には記事を書かせていただこうかと思っていたのですが、色々タイミングがズレて、意図したわけではなく気がついたら、教授がご逝去された今年2023年を締めくくる記事ということで何かのご縁を感じた私は、「またかも・・」とふと思いました。

何が"また"なのかといいますと、とても個人的なことで恐縮ですが、昔から私のすぐ傍をかすめるように"坂本龍一"という方のご縁が近づいてきて、でもすぐにまるで風がサーっと通り過ぎていくように去っていくのです。
何のことを言っているのかご理解いただけないと思いますが、仕事関係のお話しなので詳細はお伝えできず、私自身もどういうご縁なのか全く分かりませんし、ご縁としては深くはないと思うのですが、そんなふうに"サーっと"かすめていくので、逆に印象深いというか、とにかく個人的には不思議な印象がある方です。

しかし今回この番組を改めて観てみて、何となく「これかもしれない」と思ったことがありました。

坂本龍一さんは、所謂音楽業界では言わずと知れたことですが、YMOというグループで活動され、テクノポップの分野で有名になられたのですが、その後も一つのジャンルに留まらず、様々なジャンルの楽曲を制作され、様々なアーティストへも楽曲を提供され、1983年公開の映画『戦場のメリークリスマス』では映画音楽も手掛けたことで世界的にも有名になられました。
その後も数多くの映画、CM等の音楽を発表されていき、一方で環境問題をはじめとする社会貢献活動にもご尽力されていた方です。

そんなご多忙の中でも音楽活動はずっと続けられていて、リリースされる度に話題になっていましたが、どこかでふと耳にするそれらの曲は、ピアノのシンプルな楽曲が多くを占めていて、YMO時代の楽曲とは真逆な印象で、もちろんメロディも素晴らしいのですが、それ以上に感じたのは、純粋な「音」を拾い集めて構成されたような曲になって来ておられるのだなあということでした。

そして今回ご紹介させていただくこの番組を観て、やはりそういうことなのかと思いました。
この番組で紹介されていたアルバム『async』は、このタイトルが意味する"非同期"を現わすように、「音のズレ」を表現したアルバムだということなのです。

「音がズレるもの」といえば「自然」にあるものですね。
自然というものは「色」も「ズレ」て出来ていると思います。
「ズレ」とは「グラデーション」と言い換えることもできると思いますが、このズレやグラデーションを本来の私たちは心地いいと感じることが出来るのですが、近代文明において特に商業的に作られる音楽というのは、ズレることのない作品が多くを占めていると思います。

しかし教授は音楽活動を突き詰めていく中で、自然の音こそが人間が本能的に求めているものなのではないかと、最終的に感じて来られたのではないかと思いました。

このアルバムで長年やってみたかったものを形にされたそうですが、3歳でピアノを始め、10歳で作曲をされていた教授が、アメリカの音楽家ジョン・ケージの音楽と10代の頃に出会い、「音とは何か」を探求するようになり、以降この作品が発表されるまでずっとその答えを追い続けて来られたということです。

ですので、自然の中にあるノイズや、物が落下した時に発生する偶発的な音などを繋ぎ合わせたような楽曲になったということで、楽曲としてはかなり個性的ではあると思うのですが、このことを通して常に意識を向けられてきたことは「自然とは何か」ということだったのではないかと、番組を観ていて感じました。

そしてその教授の思いを、生物学の分野から解説して下さるのが、『NHKアカデミア』にもご出演されていた福岡伸一博士なのですね。
『NHKアカデミア』でも拝見しましたが、難しい話をとても分かり易く解説して下さる方で、教授が語られる抽象的な表現も、スーッと受け止めて、ものの見事に生物学的視点で捉えた分かりやすい言葉に変換して下さる、そのやり取りはとても面白かったです。


実は私も10年ほど前に「音って何だろう」と思い立ち、それを教えてくださる方の元へ勉強をさせていただきに行ったことがあります。
もちろん教授ほど音そのものを追求したわけでもないのですが、そこで学んだことを元に職場で話す機会が偶然ありまして同僚に話をしたことがあったのですが、それを聞いた当時の上司から「音が何なのかとか考えたこともなかった」という感想をいただいて、「そうなんだ」と逆に何かを発見したような気がしたことを覚えています。
ですので、もちろん皆さんそれぞれに興味あるものが異なるように、同じ分野に興味を持つ人というのはあまり多くはないのだと思いますが、そういう意味ではおそらくですが、広い意味で教授と同じように考えてしまう性質が私にもあり、似た波長を持っているのかもしれないなあと感じました。

少し話はそれますが、波長というのは物理的な現象として、似た波長のものは引き寄せ合うという性質があるそうで、所謂「類は友を呼ぶ」はただのことわざではなく、事実としての物理現象だということなのです。
ですので、教授とのご縁が私の傍を時々かすめていくのは、何かの拍子に一瞬波長が合ってしまった、或いは電波を拾ってしまった、ということなのだろうと私は思いました。


話を番組に戻しますと、後半の福岡博士のお話しの中でも「生命とは何か」から始まって、人間が一度造り上げたものを壊して、元に戻していくこと(=自然回帰)の重要性を解説され、最後は「生命の起源」つまり宇宙の起源について議論が始まるのです。

さらに「楽譜と遺伝子が同じ性質を持ったものではないかと思うが・・・」というお話もとても深く共感できるもので、全ての内容を書いてしまいそうになってきましたのでこの辺りにしておきますが、
つまりこのお二人が対談の中で語られたことは、誤解を生みやすいので直接的な表現をご本人たちは避けられていたものの、「科学と音楽(芸術)は同じ役割を担っていて、突き詰めていくと生命、宇宙の起源が何かを表現していくことだ」ということではないかと、私は感じました。

「宇宙の起源」とはつまり、この宇宙を創られた創造主(神)ですよね。
「最初に音があった」とされる宇宙誕生秘話などにもあるように、音というものは宇宙が誕生する最初から存在しているものであり、”神”の一部であるという意味で、作曲家は神を表現していると言われることもありますが、教授ご自身も作曲をされる過程でそのように最初は思っておられたそうです。
しかしある時「ある演奏家の音を聴いてそうではないことに気づかされた・・」というところで番組は終了してしまうのですが、結局のところ、先の記事にも書かせていただいた様々な分野でご活躍の方々が仰られているように、一言で現わすと「科学や芸術は神を表現する媒体である」という意味において共通していることが、それぞれのご活躍の中で証明されているのではないかということです。


番組の中でもよく使われる言葉「ふと思った」から生まれるインスピレーションというものは、科学や芸術を含め、他の分野においても、そういった人間活動を通して「神とは何か」を表現するために与えられるものであり、またその活動によって私たち人類も豊かに暮らしていけるので、インスピレーションと人間活動は循環しているのだと思います。

科学や芸術は、正しく使えば私たちが豊かに暮らせますし、それによって人類として進化していける重要な要素でもあり、神を表現する媒体、また、その進化に純粋な思いで向き合おうとする時、必要に応じてインスピレーションが与えられるものだと私は思います。

何度かに渡りインスピレーション、直観、ひらめきが何故与えられるかについて書かせていただきましたが、科学者や芸術家でなくても、皆さんも日々それぞれの暮らしの中で感じておられる方もいらっしゃるのではないかと思います。

人間の進化の為に純粋な思いで日々に向き合い、インスピレーションと人間活動をより良く循環させていける私たち人類になっていけたらいいなあと、私は心から願っています。


・・・・・・・・・・・・

余談ですが、今回の番組で紹介された教授のアルバム『async』は、最近の作品かと勝手に思っていましたら、2017年にリリースされたもので、この番組自体も2017年に放送されたものの再放送でした。

ということで、行き当たりばったりに書かせていただいたので、最後くらいちゃんと調べようと「教授の最後の作品は何だろう」とググってみましたら、2023年にリリースされたアルバムのタイトルは、出ました『12』。
このタイトルの意味は「曲全体の雰囲気が"12"(じゅうに)って声に出して言っている感じだから」と生前に語られたそうですが、12という数字自体が宇宙を現わしていてとても意味のある数字なのですが、「『12』なんだ~」と思いながらふと部屋の壁を見たら、今日は12月12日でした。
ゴロ合わせ・・?
何だか最後まで不思議でなりません・・^^

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?