第50話『最終回だぜオセロッチ!?天才少年よ永遠に!!』
☆白黒★オセロッチ!
第50話『最終回だぜオセロッチ!?天才少年よ永遠に!!』
9月に入ったが、相変わらず照りつける日差しは鋭い。
夏はまだまだ終わりそうにない。
中学生になって初めての夏休みは終わりを告げ、
ユメちゃんは今日、始業式だった。
明日からは夏休み振り返りテストが始まる。
夏休みはさんざん遊んだりごろごろしたり
部活の大会に行ったり(選手ではないけど、)
それなりに忙しく、
宿題をやっつけ仕事で済ますだけでも大変だったのだ。
そのうえテストまであるなんて・・・。
ユーウツな気分で学校から帰ってきたユメちゃんはポストに封筒が入っていることに気がついた。
その封筒は赤と青のインクで縁取られている。
ポストから手紙をさっと取り出したユメちゃんは
差出人を確認した。
「(ッッッ!!!!!!!!)」
それはユメちゃんがこの半年間待ち望んでいた手紙だった。
ユメちゃんは手紙を持ったまま、まだぶかぶかの制服を着替えることもなく、ドタドタと階段をのぼりバタンと自室のドアを閉めた。
そして封筒の中身を取り出した。
便箋には見慣れた汚い字が並んでいる。
ユメちゃんは懐かしさがこみ上げてきて胸が熱くなった。
『 ディアー ユメちゃん
お久しぶりです、ユメちゃん。
元気にしていますか?
ぼくは元気です。スウェークランドは日本より涼しいです。
もっと早く手紙を書こうと思ったんだけど、こっちの生活は忙しくて、なかなか書けなかったのだ。ごめんな。
アカデミーには驚くほどオセロの強い奴らが世界中から集まっているんだ。
フランスから来たフィメリオはこのぼくが3目半差もつけられるほど強いんだよ。
それから韓国人のスアはこのぼくのオセロッチスーパースペシャルに似た技を使ってぼくに勝ったんだよ!見た目はユメちゃんに似ててチビなのに(笑い)
他にも変なクラスメイトが居て、アメリカから来たサムはシシ丸よりもよく食べるし中国人のロンはミジンコよりよく喋るよ。
オセロの勉強と合わせて普通の勉強もしなきゃだから毎日があっという間に過ぎてゆくよ。
英語も少しは話せるようになったよ。
ユメちゃんはもう部活には入りましたか?
ぼくはアカデミーでスカッシュをしています。壁に向かってやるテニスみたいなスポーツなんだけど、すっごく疲れるけどおもしろいよ。
日本のみんなはどうだい?
シシ丸とミジンコは元気にしているかい?ナルキやキウイちゃん、コナベっち、コンチとかはどうしてる?
ワタル兄ちゃんは勉強してる?
中学校はおもしろい?
あれからはぼくは身長が1センチ伸びたぞ!
ユメちゃん油断してると僕はどんどん背が高くなるかもしれないよ。だからユメちゃんもしっかり食べないとダメた。
おかしばっかり食べていたらダメだぞ(笑い)
日本に帰るときはお土産を持っていきます。
チョコレートタルトサンドっていうおかしがあるんだけどすっごくおいしいです。ユメちゃんも気にいると思います。
あとこっちにはキュウリウオという魚がいるんだけどフライにして食べたらすごく美味しいですよ。
母さんは元気かい?
母さんにもそのうち手紙を書くとつたえてほしい
まだまだたくさん書くことがあるけど
書ききれないので終わります。
とにかく元気でな。
またな。
フロム オセロッチ』
オセロッチの手紙を3回読んで、
ユメちゃんは熱くなった目頭を手でおさえた。
「( 元気そうでよかった……ッ!! )」
ユメちゃんは机の引き出しから便箋を取り出して、
すごい勢いで返事を書き始めた。
『 拝啓オセロッチへ
お手紙ありがとう。本当は待ちくたびれてたんだ!
オセロッチが元気そうでよかった。一人で外国にオセロ留学へ行くって聞いたときは心配したけど、
さすがはオセロッチだね。
こっちはみんな元気だよ!
シシ丸もミジンコも元気にしてるよ。
ナルキくんは会ってないからわかんないけど元気だと思う。
キウイちゃんは東脇商業のバレー部に入ってがんばってるよ!
コナベっちはあい変わらずで、コンチくんは部活中に足の骨を折っちゃったんだけど今は元気です。
お兄ちゃんはいつもお母さんに怒られてます笑
オセロッチがいちばん気になってるカヲル子ちゃんはあたしたちとは違う私立の中学に入ったよ!元気だといいな!
新しい友達もたくさんできたよ!この前はみんなで水族館に行きました。楽しかったです。
スカッシュて初めてききました。スゥエークランドには不思議なスポーツがあるんだね。あたしは卓球部に入りました。
球ひろいばっかりです。
中学に入っていちばんよかったことは漫画好きな友達が増えたことです。いろんな漫画を貸してもらってどれもすごくおもしろい!
ここだけの話、自分でも描いてみようかなって思ってる。
絵が下手だから恥ずかしいんだけど笑
卒業式の時の写真をいっしょに送ります。
オセロッチも来れたらよかったのにな。
あのヤンセンが泣いてるとこをオセロッチにも見せてあげたかったよ、めっちゃ泣いてた。
お母さんのことは心配しないでね。あたし達がついてるから安心してほしい。いつかお母さんもわかってくれると思う。
もうすぐ秋だな!
夏休みぐらい帰ってくると思ってたのに忙しかったんだな。
オセロッチは日本にいつ帰ってきますか?
みんなオセロッチに会いたがってると思うよ。
急がなくてもいいけどまたお手紙ください。
じゃーな、オセロッチ!
ちゃんと好き嫌いせずたくさん食べて
毎日歯をみがくといいぞ!風をひかないよーに!
オセロの勉強がんばってな!あたしもがんばります
お元気で。
ユメ子より 』
ユメちゃんはしっかりと糊付けした封筒を持って
ドタドタと階段をおりていった。
「お母さーん、郵便局いってくるーっ!!」
「こらー!お昼ごはん早く食べちゃいなさい!」
ユメちゃんは夢中で駆け出した。
太陽は高く、ユメちゃんを照らしている。
この手紙を早く届けたい!
オセロが大好きでオセロに夢中で、
オセロのことしか頭にない、
オセロバカの天才少年にッ!!!
郵便局へと続く灼熱のアスファルトを、
ユメちゃんは全力で駆けていった。
(完)
☆白黒★オセロッチ! 第1話はコチラから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?