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第43話『新技炸裂オセロッチ!!ついに、ケムシに落日の刻!?』

      ☆白黒★オセロッチ!


【前回までのお話】

惜敗を喫した因縁の相手、南野ケムシに勝負を挑むオセロッチ!!
運命の対局が、いまはじまる!!!

前回


第43話『新技炸裂オセロッチ!!ついに、ケムシに落日の刻!?』




またバカのひとつ覚えみたいに万葉桜か、芸がないなぁ。

万葉桜の陣を構えるオセロッチに対して、ケムシはパースエンドパースで応戦する。



前と同じじゃないか、つまらない打ち筋だ。
これで勝機があるってのか?



前回の対局を踏襲するような打ち筋にケムシは辟易していた。



しかし、中盤の終盤に入り、事態は風雲急を告げる。




オセロッチが、ピスケスにドロップしたのだ。


ピスケスだと?

陣から外れてまでそんなところに打つ意味があるのか?
少しでも早く築城を終わらせたいこの局面で、
わざわざ一手を捨てるようなものだぞ?
バカバカしい。
やはり別に策があるわけではないのか。


これならサマ打ちを使うまでもない。

ケムシは高を括った。
やはりこいつは大した力量ではない。



しかし、

さらに七手合進んだ頃、

ケムシは異変に気づいた。




ん?

待て。


こ、これは!?


万葉桜の陣じゃない!?!?



なんだこの陣型は!?!?!?!?




白チップ達が大きなうねりを作っている。

美しく咲く万葉桜にはほど遠い。



「驚いたようだな!この陣は万葉桜の陣を僕がアレンジした、オリジナルの陣形・・・、名付けて『スーパーオセロッチの陣』だ!!」



す、スーパーオセロッチの陣!?

フザけやがって…


セオリー通り、パースを切るケムシ。


と、そこへ

「ここだぁッッ!!!」

と、オセロッチが力強くレグルスを打ち抜いた。




ケムシは青ざめた。


これだったのか、こいつの自信の源は……、


アメーバのように盤上に巣食うオセロッチの白チップ達。

すべての巻所を抑えてある。



くそ!これでは俺のサマ打ちが使えないじゃないか……。

こいつ、サマ打ちに気づいて封じにきたのか!?!?


通りで自信があるワケだぜ……。



活路は、

活路はないのか………!?





大角と小角の睨み合いか…

間角のほうは……



ん?


空いてる!?




あったぜ!!

あるじゃねえかよ!!!



冷や汗かかせやがって!!

見落としてやがったぜ!!!


ここをブッ込抜けば……




ケムシは袖下に忍ばせたチップを確認した。


ディスクポケットに黒チップを打つと同時に、
間角の白チップと袖下のチップを黒にしてすり替えた。

誰にも気づかれない電光石火の早業である。




アブなかった……。

今すり替えなければこの俺が詰んでいた。

このオセロッチ、俺の喉元に届くとは……。

面倒なヤツだぜ、二度と打たないでおこう。


冷や汗を拭うケムシ。

対してオセロッチはニタニタと笑っている。



「クックック (笑) これで完成した。ケムシよ、今お前が僕の技を完成させてくれたんだ。」



「は? 何を言ってやがる!? 」



「もう何をしても遅いぜ。なんせお前は、大蛇のとぐろの中にいるんだからな……。」



どういうことだ!?



「この技を喰らえ!!!!オセロッチスネイク!!!」


シュパーーーーンッッッ!!!

オセロッチは白チップをスリーパウンダーポケットに叩きつけた。


すると、


盤上を這う、白い大蛇が現れたッ!!!





ば、バカな・・・!?



オセロッチが打った一手により巻所を抑えていた白チップ達がつながり、白い大蛇のように、ケムシの黒チップを喰らいつくしてしまったのだ!!


うおおおおおおおおおおおおッ!!!!!


大盛り上がりするギャラリー達。



なんだこの手は!?

こんなことが起こり得るのか!?

俺のブッ込抜きが無ければこの技は成らなかったはずだ!!

なぜヤツは、俺がブッ込抜きを使うことがわかったんだ!?



ケムシの頭に今まで棋譜が蘇る。



まさか、

すべてヤツが描いた絵だっのか?



あの変型した万葉桜の陣も、

ピスケスも、間角も、

俺にブッ込抜きを使わせるエサだったというのか!?!?!?


俺がヤツにサマ打ちを使わされた!?!?!?



「あり得ねぇ!!!こんなことあり得ねぇ!!!」


取り乱すケムシ。



「ケムシ、お前は手先は器用かもしれないが、オセロに関しちゃ全くのトーシロだったみたいだな!お前の敗因はオセロを知らなさ過ぎたことだ!!」



ガックリとうなだれるケムシ。


知らなさ過ぎた……だと……?



「ケムシ、お前には感謝するぜ。お前のおかげで僕のオセロは一段階進化した!!もう誰にも負けないゾ!!」




信じられない、あんな連携技があったなんて……。

俺のイカサマを利用して勝ちやがった……。

コイツは本当に……。



もう、打つ手が無い……。





「・・・まいった。俺の負けだ。」



うおおおおおおおおおおおおッ!!!!

再び盛り上がるギャラリー達。


「すげー!ケムシが負けた!!!」

「あいつは何者だ!?!?」

「ケムちゃんナイスファイト!!!」



オセロッチは立ち上がり、くるりっとケムシに背を向けた。



「アバヨ!!」


それだけ言い残し、

オセロッチは去ろうとした。


「待てよオセロッチ、約束通り借金はチャラだ。それより、お前は何者なんだ?」



またくるりっと振り返るオセロッチ。


「僕の名前はオセロッチ!ただの天才オセロ少年さ!!」


肩で風を切って歩くオセロッチを、
誰も止めようとはしなかった。



ドカッとイスに深く腰を降ろすケムシ。
敗けた割に気分は悪くない。
上質なゲームをクリアした時の気持ちに少し似ている。

最悪な時なのに不思議だ。


敗けた打ち師がどうなるかぐらいケムシにもわかっていた。


「あーあ、もっとゲームボーイアドバンスで遊びたかったなぁ…。」






◆(←場面転換)


ここはセンスのいい部屋。


RRRRRRRR


センスの良い電話が鳴っている。


細い腕が受話器を持ち上げると、

RRRという音は鳴り止んだ。


「どうした?」


「〈 ケムシが負けました!相手はオセロッチです!! 〉」


「そうか。」


「〈 ケムシはどうしましょうか? 〉」

「決まってるだろう、クサい飯を食ってもらう。」

「〈 で、でも、ケムシほどの打ち師はそうそう見つかりませんよ? 〉」


「後釜ならすぐに手配する。」

そういうと電話の主は受話器を置いた。


窓外の夜景を見下ろすアーモンド型の美しい目は、
これからの未来予想図を視ていた。




( つづく )





☆白黒★オセロッチ! 次回 第44話


☆白黒★オセロッチ! 第1話はコチラから




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