第42話『ケムシ VS オセロッチ!!借りを返すぜオセロッチッッ!!!』
☆白黒★オセロッチ!
【前回までのお話】
久しぶりにかつて戦ったマジメ正一と再会し、宿敵南野ケムシを倒す策を思いついたオセロッチ!
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第42話『ケムシ VS オセロッチ!!借りを返すぜオセロッチッッ!!!』
このマリオカートアドバンス、最ッ高にクールだぜ!
スーファミのマリオカートもハマったけど、
こっちのほうが断然イカしてるぜ!!
このゲームボーイアドバンス買ってからまだハズレのソフトに遭ってない!!これは最高のゲーム機だぜ!!
南野ケムシは今日も放課後カジノクラブのオセロブースに腰掛け、ゲームボーイアドバンスに興じている。
ケムシは据え置き機よりも断然携帯機が大好きだった。
場所を問わずスイッチひとつでいつでもゲームの世界に連れて行ってくれる。
ゲームは最高だ。
すべてを完璧にクリアした時は最高の充実感に浸れる。
そしてまた新しいゲームで遊ぶ。
偉大な先人達のおかげでこの世には遊び尽くせないほどのゲームがある。
楽しみが途切れない!
ケムシにとって今の暮らしは悪くなかった。
このカジノの打ち師に落ち着くまではずいぶんと危ない橋を渡ってきたが、ここなら安定した収入があるし、大好きなゲームも思う存分できる。
ケムシがノリノリでゲームボーイアドバンスをしているところに邪魔が入った。
「ケムシさん、あいつまた来てます。」
ボーイ係の男子が伝令に来た。
「誰だ?」
視線はゲームボーイアドバンスのままだ。
「オセロッチです。」
記憶を辿ってみる。
すぐに冴えない少年の顔を思い出した。
「オセロッチ・・・。ああ、あいつか。」
そういえば居たな。そこそこ強かったっけ。
しかし、今日はとても打つ気分じゃない。
「テキトーに言って追い返せ。」
「そ、それが…」
あたふたするボーイ係……
「ぃよう!ケムシ!久しぶりだなぁ!!」
なんとハイテンションのオセロッチがすでにケムシの元まで来ていたのだ。
「あん?」
顔つきや態度がこの前とは別人のようだ。
「この前の借りを返しに来たぜ!!」
「金を払いに来たのか?」
「じょーだん!!」
オセロッチは大仰に両手を大きく広げてみせ、
「イカサマ野郎に払う金なんかねーぜ!!」
と言った。
「クックック(笑) よくいるんだよなあそういう客…勝手に負けといてイカサマだなんだって騒ぎ出すヤツがよ…」
典型的なパターンだ。
どうせどうやったかなんてわかってないくせにイカサマだとケチをつけて勝負を反故にしたがる。
コイツもそのクチか……。
「おっと待て!そういう話をしに来たんじゃあないッ!」
するとオセロッチはくるりっと後ろを向いた。
すーーっと息を吸い込むオセロッチ。
「おい聞け!!カジノのバカ客ども!!南野ケムシが負けるところを見たいかー!!!」
オセロッチがお腹から大声を出した。
その声はカジノ中に響き渡った。
「なんだこのガキ…」
ガラの悪そうな常連客達がオセロブースに注目する。
「よく聞けよマヌケども!!このケムシが負けるところを僕が見せてやるってんだー!!!僕、オセロッチがケムシに勝ってやる!!もしこの僕が負けたなら、一人につき一万円払ってやるぞー!!!マジだぞ!!」
ガラの悪そうな常連客達は黙っていない。
「ナマ言うなー!!」
「ケムシがお前なんかに負けるかよー!!」
「やっちゃえー!ケムちゃん!!」
非日常に飢えている常連客達にとって
突如起こったこのイレギュラーイベントは、異様な盛り上がりを見せるにはじゅうぶんだった。
やられたぜ……。
バカな客どもを煽って対局の空気を作りやがった。
「どうだ?ケムシ!!弱虫ケムシ!!!お前が勝ってこのバカどもを黙らせてみろよ!!!!」
オセロッチの鼻息は荒い。
「・・・。 」
めんどくせえ……。せっかく買ったばかりのマリオカートアドバンスで遊ぶつもりだったのに……。
バカにされた常連達の怒りの矛先はケムシに向きはじめた。
「どうした!ケムシ!やれよ!!」
「ビビってんじゃねーゾ!ケムシ!!オラぁ!!」
「こんなヤツぶっツブせーーッ!!!」
バカが、簡単に乗せられやがって……。
「何でこんなことに……。」
誰にも聞こえない小さな声で、
ケムシはつぶやいた。
かくしてケムシは、
オセロッチと二度目の対局を打つことになるのだが、
この一戦がケムシの運命を大きく変えようとは、
毛ほども思っていなかったのだ。
☆白黒★オセロッチ! 次回 第43話
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