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第34話『オセロッチがオセロを失う日!?目を覚ますんだオセロッチ!!』

      ☆白黒★オセロッチ!


【前回までのお話】
天空闘技場にて、初手を打つことが出来ず失格負けしてしまった。オセロッチ。
オセロッチはオセロが打てなくなってしまったのだ!!

前回


第34話『オセロッチがオセロを失う日!?目を覚ますんだオセロッチ!!』


前回の天空闘技場に出て、はっきりわかった。
僕はもう、オセロが打てないんだ。



そう、オセロッチは緑盤やチップを見ると、頭が真っ白になってしまい、全く打てなくなってしまったのだ。

原因はもちろん、南野ケムシとの一戦だ。
ケムシの不可解な打ち筋は、オセロッチの心に恐怖を植え付けた。その恐怖はみるみるうちに成長し、
オセロッチからオセロを奪ってしまったのだ。

オセロッチはもはや抜け殻になっていた。
天才オセロ少年と呼ばれた自分が、
オセロを失ってしまったのだ。
あまりにも若過ぎる、アイデンティティの喪失である。

本当は学校など行く気分ではなかったが、お母さんに心配をかけてはいけないので仕方なく学校には行っている。

あの一件以来、アカネの態度は変わった。以前はあんなにオセロッチにまとわりついていたのに、敗戦の報を聞いても

「そっか!ドンマイ!!」

とだけ言い、オセロッチ達とはあまり話さなくなった。

ミジンコはというと、

「やいオセロッチ!!なんで負けるでやんすか!!ちっとも頼りにならないでやんす!!」

などと言う始末。

しかし、誰に何を言われてもオセロッチは抜け殻。
誰とも口を利かず、死んだ目をして日々を過ごしていた。

「(オセロを失った・・・。僕はもうオセロが打てないのだ・・・。)」

そんなオセロッチを、ユメちゃんはいつも見守っていた。
あんなに夢中になっていたオセロを失い、
オセロッチはどれだけつらいだろう。
想像するだけで胸が張り裂けそうだった。

が、ユメちゃんはオセロッチにわからせたいことがあった。
いや、わからせねばならないのである。
その為ならユメちゃんは鬼になる覚悟がある!

学校が終わった帰り道、オセロッチがトボトボと歩いている後ろを、ユメちゃんはつけていた。

「よー!オセロッチ!久しぶりに追手門公園でも行って、松ぼっくり投げて遊ばないかい?」

自然を装って元気よく声をかけるユメちゃん。

オセロッチはのっそり振り返り、
「今はとても、そんな気分じゃないんだ。」
と、青白い顔をして言った。

ユメちゃんは、今がその時だと思い、
落ち着いて深呼吸した。


「いいかげんにしろよッ!!!いつまでしょぼくれてるンだよぉ!!!!」


オセロッチはまさかの言葉にハッとして振り返った。

「な、なんだって?」


「そりゃあ負けてヘコんでるのはわかるけどさ、世界中の不幸を背負ってますみたいな顔してさッ!!!大ゲサなんだよぉ!!!」

ユメちゃんはランドセルの肩紐をギュッと握りしめ、
力いっぱい叫んだ。

オセロッチがユメちゃんに向かってきた。

「ユメちゃんには僕の気持ちはわからないよ!!!僕はオセロ少年オセロッチだぞ!!その僕からオセロを取ったら何が残るっていうんだよ!!!全てを失ったんだぞ!!!!これが不幸じゃなかったら何なんだよー!!」

オセロッチは鋭い眼光でユメちゃんを睨む。

「全てを失っただって!?何言ってんだよッ!!!たくさんあるじゃないかッ!!!!!」

「え…!?」
キョトンとするオセロッチ。

「僕に・・・こんな僕に・・・なにがあるっていうんだよおッ!!!でまかせを言うなッ!!!」

オセロッチの鼻息が荒くなっている。

「自分で考えろッ!!!ウスラトンカチ!!!」

落ちていた空き缶をカンコロコーンと蹴飛ばし、
ユメちゃんはプイっと走り去った。

「なに言ってんだよ・・・ユメちゃん・・・もう僕には何も残されてないんだ・・・。」
オセロッチは小さくつぶやいた。

しかし、オセロッチの胸に、針で突いたような希望の光が差した。ユメちゃんは何を言おうとしているんだ?
自分に標をくれようとしているのか?

走り去ったとはいえユメちゃんはまだ追いつける位置で歩いている。

ここはユメちゃんの言葉を聴かねばならぬと思い、
オセロッチも落ちている空き缶をカンコロコーンと蹴飛ばし、ユメちゃんを追いかけた。

「ユメちゃん!怒鳴って悪かった。でも、オセロ以外に、僕になにがあるっていうんだ??」

くるりっと振り返るユメちゃん。

「オセロッチ、友達いるじゃないか。」

「へ?」
全く予想していなかった言葉に、あっけにとられるオセロッチ。

「シシ丸とか、コンチくんとか、ミジンコやナルキくん…それにカヲル子ちゃんやキウイちゃんにアカネちゃんも…たくさん友達がいるじゃないか!!」

「そ、そんなのは…」

そ、そんなのは…


「そんなのだって!?大事なものだぞ!!」

大事な…もの…


「それにオセロッチは算数と理科が得意だし、ゲームも上手じゃないか!!松ぼっくりだってあたしより上手く飛ばせる!!」

オセロッチはわかった。
ユメちゃんが何をいわんとしているのかを。

感極まったユメちゃんの、
両目の端には涙がたまっている。

「オセロが打てなくても、オセロッチはオセロッチじゃないか……。だから、なにもないとか、全て失ったとか…言ってほしくなかったんだよお〜ぅ・・・・(泣)」

泣き崩れるユメちゃん。


オセロッチはユメちゃんの深い優しさをキャッチしていた。

「う、う、う、」

たまらなくなったオセロッチも、涙が溢れてきた。

「うおおおおおおおおおおおンッッッ!!!!!!(泣)」
獣のように哭くオセロッチ。

「うええええええええんッッッッッッッ!!!!(泣)」
感情が爆発するユメちゃん。

二人はしばらく泣き続けた。



この日を以って、
“ 天才オセロ少年オセロッチ ” は、
" 少年オセロッチ " になったのだった。

(つづく)




☆白黒★オセロッチ! 次回 第35話『サマーキャンプだオセロッチ!最高の思い出を作るのだ!!』


☆白黒★オセロッチ! 第1話はコチラから



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