第31話『決闘するぜオセロッチ!いざ!放課後カジノクラブ!!』
【前回までのお話】
作戦会議を終え、ミジンコの借金を消しに放課後カジノクラブへと乗り込むオセロッチ、ユメちゃん、ミジンコ、アカネの4人組。南野ケムシを倒すんだ!
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第31話『決闘するぜオセロッチ!いざ!放課後カジノクラブ!!』
「ここでやんす…」
とてもカジノがあるとは思えないような、学習塾や予備校が入ったビルがひしめく市街地の一角に、放課後カジノクラブはあった。
1階から4階までは大手学習塾が入った、とあるビルの地下1階がそうだというのだ。
看板には『放課後学習倶楽部』と書いてある。
「なるほど、これなら外向きには塾に見えるな。」
オセロッチは感心した。
「いよいよね!みんな、心の準備はいーい?」
アカネの声は士気を高めてくれる。
「OKでやんす!」
「行こう」
オセロッチは覚悟を決めている。
「…。」
やはりユメちゃんは及び腰だ。
と、その時
RRRRRR!!!
アカネのポケベルが鳴った。
ポケベルを見てアカネは驚いた顔をした。
「大変!お母さんが!!」
「どうしたんだ!」
心配するオセロッチ。
「あたしのお母さん、病気でね、ずっと入院してるの。そのお母さんの具合が急に悪くなったらしいから、様子見に行かなきゃなの!」
早口でまくし立てるアカネ。
「え、そうなのか…」
オセロッチはうろたえている。
「(このタイミングで…?)」
ユメちゃんは相変わらずアカネを訝しんでいる。
「ごめん、みんな先に行ってて!あたしもお母さんの様子を見たらまた戻ってくるから!でもその時にはもう終わってるかもね!それじゃ!」
とだけ言って、アカネは長い脚で駆けていった。
残された3人
「オセロッチ、まさかビビってるんじゃないか?」
ジトーっとした目でオセロッチを見るユメちゃん
「バカ言うなよ!さっさと済ませようぜ…」
「い、行くでやんす」
ミジンコを先頭に、
地下へと続く階段を降りる。
階段を降りるとドアの前に用心棒らしきデカい男子ふたりが立っていた。片方はケムシと一緒に居たゴリ造だった。
ゴリ造はミジンコの顔を確認するとニタニタと笑い、
「よおミジンコ…やっと払いに来たのか」
と言った。
「ま、まあな。今日は友達を連れて来たでやんす。」
オセロッチとユメちゃんを一瞥するゴリ造。
「よし入れ。」
ゴリ造がドアを開けると、3人はゆっくりと放課後カジノクラブへ入っていった。
意外にもすんなり入れたことにオセロッチとユメちゃんは拍子抜けした。
中はとても広かった。
ワンフロアのそこかしこで、悪そうな小学生達が麻雀や、カード、チンチロリンなどが行われていた。
ただ座っておしゃべりしているだけの集団もいる。
ミジンコ達が入ると中に居た小学生達がこちらを見てきた。
ミジンコの顔を確認して視線をギャンブルに戻す者が多かったが、見慣れないオセロッチとユメちゃんを値踏みする様な目でジロジロと見てくる者も居た。
フロアの奥にはオセロ卓があった。
その椅子に深く腰掛け足を組み、ゲームボーイアドバンスに興じる南野ケムシの姿を発見し、ミジンコ達は意を決して彼に近づいていった。
「よ、よぉケムシ」
ミジンコが恐る恐る話しかける。
「ん?ミジンコかァ……やっと金持って来たのか?」
一瞬だけミジンコを見て、またゲームボーイアドバンスに視線を戻すケムシ。
「そのことで話があるでやんす」
ミジンコがオセロッチに目で合図する。
「お、おい南野ケムシ!」
オセロッチが緊張気味に声をかけた。
「なんだよ藪から棒に…お前は誰なんだ?」
鬱陶しそうにチラリとだけオセロッチを見るケムシ。
「僕はオセロッチだ!」
「そうかオセロッチか、そっかそっか。」
ケムシの視線はゲームボーイアドバンスから動かない。
どうやら相手にされてないようだ。
「お前、ミジンコに7万円勝ってるらしいな!」
オセロッチは手に汗をかいている。
「そうなんだよ、オセロッチからも言ってやってくれよ早く払えってな…。」
オセロッチは肺いっぱいに息を吸い込んだ。
「その金を帳消しにしてもらいに来た!」
勇気を振り絞って言った。
「どういうことだ?」
ゲームボーイアドバンスの手を止め、オセロッチを見るケムシ。
「僕がお前と打って、僕が勝ったら借金は無しだ!その代わり、もし僕が負けたら10万でも20万でも払ってやる!」
オセロッチの言葉を聞き、周りに居た客達が、大金が動きそうな気配を察知し、ざわざわと騒ぎはじめた。
「10万とか20万とか言ってるぞ」
「ケムシが久々に打つのか!?こりゃおもしれえや!」
「ねえ、どっちが勝つか賭けない?」
などと、ギャラリー達が話しだした。
ケムシは一考してみたものの、すぐにゲームボーイアドバンスに戻った。
「断る」
鳩が豆鉄砲を食らったようなオセロッチ。
「なんでだ!」
「なんでもなにも、これは俺とミジンコとの金の問題だ。お前は関係ない。それに俺はみみっちい人間だから、よく知らない相手とそんな高額な勝負はしない。悪いが他を当たってくれ。」
手をひらひらと振ってオセロッチを追い払うケムシ。
ギャラリー達も期待が外れ、灯り始めていた熱気が急速に冷めていく。
「…。(もっと食いついてくると思ったのに…)」
予想していた流れと違い、次の言葉が思い浮かばないオセロッチ。
「ミジンコ、金が無いなら待ってやるから今日のところは帰れよ。」
呆然と立ち尽くすオセロッチとミジンコ
「(諦めて帰るというのもアリだな。アカネが居るときのほうがいいかもだし、今回は出直すか。怖いし。)」
などと、オセロッチは思っていたが・・・。
「怖いんだろ」
ユメちゃんがポソリと言った。
オセロッチは心中を読まれたのかと思いビクッ!としたが、どうやらケムシに言ったようだった。
ケムシがゲームボーイアドバンスから目を上げた。
「オセロッチに負けるのが怖いんだろ!!!!」
フロア中に響くぐらいの大声でユメちゃんが叫んだ。
ミジンコとオセロッチはユメちゃんの剣幕にビビっている。
「は?」
矢の様な視線でケムシを睨むユメちゃん。
ケムシの頬がポっと赤くなる。
「そんなゲームボーイアドバンスなんかして!!カッコつけて弱い者いじめしてるだけだろ!!ビビってないで勝負してみろーーーッ!!!!」
ユメちゃんはランドセルの肩紐をギュッと握りしめ力いっぱい叫んだ。
その鬼気迫る咆哮がギャラリーにも伝わったのか、
「打ってやれよケムシ」
「ケムちゃん、打ちなよ」
「こんなカワイコちゃんがお願いしてるんだぜ?きいてやれよケムシ!」
という声が聞こえてきた。
ケムシはなぜだか赤くなっている。
ばつが悪そうに後頭部をポリっと掻くと、
「仕方ねェなあ・・・座れよ」
と言った。
「ルールはどうする?ここじゃサクッと勝負がつくナインズが主流だが?」
ケムシはゲームボーイアドバンスのゲームのセーブをしている。
「ルールはエキスパートフルだ!」
オセロッチは半ば帰る気になっていたが、ユメちゃんの勇気に気圧され、やる気を絞り出していた。
「よし、いいだろう。」
無事にセーブできたのでゲームボーイアドバンスの電源を切るケムシ。
「これ電子緑盤じゃないんだな」
年季の入ったオセロ台を指し、ツウ振りをアピールするオセロッチ
「そんな高級なもんがここにあるわけないだろ。さっさとダイスを振れよ。」
かくして勝負ははじまった。
オセロッチ VS ケムシ!!勝つのはどっちだ!?
(つづく)
☆白黒★オセロッチ! 次回 第32話『決闘するぜオセロッチ!ケムシの秘めた力とは…!?』
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