40才ギタリスト「オレ、1回もエフェクター触ったことないねんwww」←周囲ドン引き の巻
(前回のあらすじ。そして今回が最終回!)
彼ことRen Yengchiはすべてを失った。それから10数年、彼は移住した地方都市で知り合った人物のおかげで音楽家生命を取り戻すのである!
おわかり頂けただろうか。
ここから彼が、現在のような活動を始めたことが。
毎回スマートフォンに楽曲を取り込むのは面倒だと考え、彼はSoundCloudにアカウントを作っていた。元々はあの店主に聴いてもらうために用意したものだが、彼はここに自分の楽曲をアップロードすることにした。
すぐに反応があった。大半が海外からの「オレと組めばもっと聴いてもらえるよ」といった内容のメッセージだった。再生回数は全曲1桁だった。それでも彼は気にしなかった。
聴いてもらえたら嬉しいのは事実だが、それよりも彼にとっての「やりたいこと」が、何よりも音楽を作ることだったからだ。
さて、、、
ここで「おわり」と書けば美しく完結となるところだが、そうはいかない。
残念なことがある(そしてここからはふざけた内容に戻る)。
彼は基本的にはギタリストだが、エフェクターというものを14才でギターを始めて以来25年もの間、ただの一度も触ったことがなかったのである。
10代の彼は音楽雑誌「ギターマガジン」から知識を得ていた。毎月の発売日を心待ちにして、買って帰ると最初のページから最後の裏表紙まで隅々まで繰り返し読んでいた。だから彼の音楽観やギターを演奏する上での心がまえのようなものには少なからず当時の執筆者たちの思想が反映されている。
「JINMO」なる人物が執筆陣の中にいた。彼はJINMO氏の連載を通じてデレク・ベイリーやフリーインプロヴィゼーションといった世界を知った。メジャーデビューしなくても、事務所に所属しなくても独力で世界を股にかけた音楽活動はできるということも知った。彼が現在こんな感じになっているのは間違いなくJINMO氏のおかげである。
彼と同世代のギタリストはおそらく当時ほぼ全員が「ギターマガジン」を読んでいたはずだが、彼だけがどうしてこうなったのか。
ともかく、彼が「ギターマガジン」によって植えつけられた思想は「男(正確には、漢)はエフェクターを使わない」というものだった。
エフェクターとは演奏のミスをごまかすために使うものであり、一流のギタリストすなわち漢ならばエレキギターをアンプに直結して弾くものだと彼は教わった。
のみならず、なぜか彼はアンプで歪ませるということすら自身に禁じた。
まあこれに関してはあのカシオEG-5が関係している気がしないでもないが(←過去の投稿を参照)。
だから彼は、あの「ジョニーBグッド」はもちろんヘヴィメタルの名曲でさえクリーントーンで演奏していたのである。
現在でも彼は、ギタリストが「俺はギターとアンプの間には、歪みエフェクター1発だぜ!」と豪語する姿を見ると「漢じゃないな」と思う。
いずれにせよ彼は漢じゃなかったので25年も経ってからエフェクターを手に入れることにした。
しかしここで彼は困惑する。どの穴に挿入していいのかわからない、と。
昨夜に見た動画では、挿入して以降の動きがわかっただけで、そもそも穴に入れる場面は映っていなかった。
彼が本から得た知識では穴は2つあるはずだった。確かに彼が購入したBOSSのメタルゾーンには穴が2つある。しかし同時に購入したデジタルディレイには穴が5つもある。仕方なく本能のままに穴にプラグを挿入してみたが、何も反応がなかった。
というのも、大半のエフェクターは本体右側にInPut、左側にOutPutの穴があるだろうが、彼は昔から自分の身体の右側にアンプを置く癖があった。そのため彼はギターからプラグをOutPutに挿入し、InPutからアンプに接続していたのである。これでは音が鳴らない。購入したばかりのエフェクターが破損しなかったのは、さすが世界のBOSSだからに他ならない。
それでもなんとか正しい穴に挿入を済ませ、音は鳴ったものの今度はツマミの設定がわからない。歪みエフェクターならば、GAINで歪み量を調節し、TONEで音色を変更することくらい予想がついたが、ディレイは謎のツマミが多い。漢ならフルテンという昔「ギターマガジン」で読んだ言葉に従ってすべてのツマミを10に上げた結果、大変なことになったりした。
途中で長いブランクがあったものの、ギターを手にしてから25年超。
彼はまだこんな感じである。漢の道は遠い。
(つづく)
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