昔のギター教則本、いま見ると酷すぎてワロタwww の巻
(前回のあらすじ)
彼ことRen Yengchiは少年時代のある夜、まるで神の啓示に導かれるかのようにエレキギターを手に入れることを決意する。しかし紆余曲折を経て、彼が人生で初めて手にしたギターはカシオEG-5という、ロックというものを履き違えたまま残念な大人になってしまう危険性すら孕んだ、非常に恐ろしいものだったのである!
思春期にギターを手にする少年は多い。
買ってもらったものの、すぐに挫折して弾かなくなる少年も多い。
そのうち飽きて弾かなくなる少年もまた多い。
彼の場合も例外ではない(←次回予告)が、しかしやや事情が異なる。
彼はクラシック音楽しか(〜以下省略。詳細は前回を参照)、そのため彼は商店街のしょぼい書店に入って音楽の棚を眺めた。
真っ先に視界に飛び込んできたのが「7日間でマスターするロックギター」という、現在の彼ならば頼むからそれだけは絶対にやめておけよと忠告しかねないタイトルの教則本だった。
しかし彼はクラシック音楽しか(〜以下省略)、買って家に帰るのだった。
ざざっとページをめくると代表的なエレキギターの種類を紹介するページがある。フェンダー社のストラトキャスターとテレキャスター、ギブソン社のレスポールにES-335と、4本のエレキギターのイラストが掲載されていた。
自分が抱えているカシオEG-5とのあまりの違いに愕然としたことは言うまでもない。
仕方なく彼は相棒のカシオEG-5を抱えたまま1ページ目から順番に読んでいく。彼はクラシック音楽しか(〜以下省略)なのでこの時点では知る由もなかったが、この教則本、なんとパワーコードだけを7日間でマスターして、ギターソロとかスケールとかは一切無視してロックの名曲をすべてパワーコードだけで弾いてしまえ!という、あの因縁の「ジョニーBグッド」もCCRの「雨を見たかい」すらもすべてパワーコードだけで強引に弾き倒してパンクな感じで演奏してしまう残念なギタリストが7日間で爆誕するという、とんでもない魔導書だったのである!
ここで彼は気づく。掲載されているロックの名曲は、「ジョニーBグッド」を除けば1曲も知らないことに。
現在と違い、当時の教則本にCD付きのものは珍しかったはずだ。
ましてや「7日間でマスターするロックギター」なんてタイトルの教則本に出版社がわざわざCDを付けるわけがない。
現在と違い、当時はYouTubeもサブスクもなかったので、掲載されているロックの名曲を実際に聴く方法といえば自分でCDを買うか、レンタルショップで借りるか、友人知人が偶然にも所有していることに期待するかの3択しかなかった。
掲載されている名曲は当時ですら既に懐メロの領域に入っていたため、実質1番目の選択肢しか彼にはなかったが。
仕方なく彼は、1ヶ月に1枚だけ買うことができる(←前回の投稿を参照)CDをよりにもよって「7日間でマスターするロックギター」を参考に選ぶハメになる。
しかし神は彼を見捨てはしなかった。
彼はよりにもよって「7日間でマスターするロックギター」がオススメするロックの名曲にすっかりハマってしまったのである。
それまでクラシック音楽しか聴いてこなかった人間が、1960〜70年代の洋楽ロック大好き人間になってしまったのである。
そしてカシオEG-5と同様に、彼が生まれて初めて手にしたギター教則本である「7日間でマスターするロックギター」が、その後の彼のギタリストとして、のみならず音楽家としての作曲や演奏スタイルにまで多大な影響を及ぼすことになるのである!
ここで音楽に興味がない人のために解説しておきたい。
音楽に「メジャー」と「マイナー」という曲調があることは知っているはずだ。ギターを始めた人間はまず間違いなく最初に「メジャーコード」と「マイナーコード」の押さえ方を練習すると思うが、パワーコードというのはメジャーでもマイナーでもないコードである。
使い方によって陽気な雰囲気も出せるし、暗い曲調にもなる。おまけにギターだと2本の弦、2本の指だけで押さえることができるので7日間あれば簡単にマスターできるのだ。
だから音楽の素養がないロックやパンクのバンドマンでもこのパワーコードだけで作曲することだってできるのだ。
2024年現在の彼の音楽の主戦場はフリーインプロヴィゼーションやアンビエントミュージックである。
既存の音楽理論を無視した演奏をする人間が多い中、彼は平気でパワーコードを鳴らす。あるいはピアノでジャズっぽい音楽を演奏する時すら堂々とパワーコードを鳴らす。
ある種のジャズやアンビエントミュージックは、メジャーやマイナーといった調性感が曖昧な音楽なので、メジャーでもマイナーでもないパワーコードの響きは最適だと彼自身は思っている。
とはいえ、、、
よりにもよって「7日間でマスターするロックギター」なんてタイトルの本に人生を変えられるなんて!
もう手元にないから著者名とか知らないけど、書いた人ありがとう!
(つづく)
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