コロナ禍の今だからこそ、情報発信と地道な努力が実を結ぶ【お宿会議】
こんにちは。株式会社おてつたび、”さきっちょ”こと田中沙季です!
おてつたびとは、「地域の人を通じてその地域を好きになる」を信念に、人手不足で困っている地域の方と、地域に興味がある方とをつなぐマッチングプラットフォームです。
◆お宿会議とは?
新型コロナウィルスの影響で観光業や宿泊業が打撃を受けていることをうけて、毎週月曜日に行っている「お宿会議」。
今回は、大分県由布市にある旅館山城屋の二宮 謙児(にのみや けんじ)さんをゲストにお呼びしたお宿会議のレポートをお届けします!!
◆ゲストプロフィール
旅館山城屋 代表 二宮 謙児(にのみや けんじ) 氏
1961年大分県生まれ。大分県信用組合勤務を経て、有限会社山城屋代表。インバウンド推進協議会OITA会長。
経営する山城屋は、約15年前よりインバウンドに取り組み「九州未来アワード」で審査員特別奨励賞受賞。世界最大の口コミサイト「トリップアドバイザー」のトラベラーズチョイスホテルアワードで3年連続トップ10入りを果たす。
今回の新型コロナウイルスによる休業期間中は、旅館を疑似体験できる「体験動画」の制作や、近隣の石仏群を調査整備する新たな観光資源の発掘に力を入れる。
◆サラリーマンから旅館の三代目へ
まずは自己紹介として、皆さんに参加した目的や気になっていることなどをシェアしていただきます。雰囲気があたたまってきたところで、いよいよ二宮さんのゲストトーク!
新型コロナウィルスの流行による外出自粛要請、そして緊急事態宣言の発令と日々変化する状況の中での取り組みとは???
大分県の温泉地といえば由布院温泉が有名ですが、私はそこから15キロほど山の中に入った「湯平(ゆのひら)温泉」という温泉地で旅館山城屋を経営しています。同じ由布市なのでよく混同されるのですが、由布院温泉とは別の温泉地です。
私はもともとサラリーマンをやっていまして、山城屋は家内の実家でした。家内の祖父の代から始まったので、私で三代目です。家内の父、先代が体調を崩されたので私が継ぐことになりました。
湯平温泉の宿は家族経営の旅館が多く、山城屋も客室数7部屋という小さな旅館です。外国のお客さんを特に狙っていたわけではなかったのですが、約8割が外国からの観光客でした。
プロフィールにも書いていただきましたが、トリップアドバイザーの口コミでは3年連続トップ10入りしています。日本全国に旅館が4万件ある中で、山城屋のような小さな宿がトップ10に入るなんて奇跡みたいですよね。
おかげさまで、そのことについて本も出させてもらいました。
◆コロナを機に新しい挑戦
山城屋ではコロナの影響を受けまして、3月に立ち寄り湯とランチを始めました。
お昼の営業を始めること自体は以前にも考えたことがありましたが、毎日ほぼ満室だったのでやる余裕がなく……。でも、コロナを機に少し余裕ができたのでお昼の営業を始めてみたら、意外とお客さんが来たんですよ。
すぐ隣の大分市とか、別府市とか、近いから泊まりにまでは行くほどではないというお客さんが多く、中には毎週来ていた方もいらっしゃいました。大分は温泉も多いし、どこへ行くにも車で移動する文化ですから、需要はあったんでしょう。
そこからまた状況も変化しまして、3月末の時点で4月の予約はほとんどありませんでした。そんなこともあって、緊急事態宣言に入る前、4月3日から全面的にお休みにしました。
宿泊は今日(注・お宿会議実施の2020年6月1日)から再開したんですけれども、まずはほとんどが隣町の常連さん、という感じでスタートしています。
◆情報を整備・発信することが観光資源になる
山城屋について紹介していただいた後は、緊急事態宣言を受け、休業していた約2ヶ月の間にしていたことについての話題へ。
”休業期間だからこそできること”に取り組んできた取り組みについてお話いただきました。
休みの間、まずHPをリニューアルして100言語に対応するようにしました。
ちなみに使っているのはGoogle翻訳なので、無料で出来ます。自動翻訳だから変な翻訳になることもあるけれども、大体の意味はわかりますよね。
ホームページを他言語に対応させるときには2パターンの選択肢があります。”完璧な翻訳にして少ない言語にする”か、”精度はそこそこでも多くの言語に対応する”か。そこで、私のところは後者を選択したわけです。
旅館の体験動画もつくりました。
私がカメラを持って、女将に案内してもらって撮った、お客さん目線の動画です。なかなか旅館に泊まれない中で、こうして疑似体験ができるコンテンツも面白いなと思いまして。
ちなみに温泉の部分も、実際に湯船に入っていますよ、お客さん目線なので笑。これには、動画編集を趣味でやっていたことも役立ちました。
あとは菊畑公園の再生作業……これは土木作業ですね笑。
「菊畑公園」という公園という名はつくものの、ほとんどただの山のような場所がありまして、そこに実は石仏が100体くらいあるんです。凄いですよね。調べていくと菩薩だったり、色んな種類の仏様がいるんです。
「これは凄いお宝があった!」と思いまして、そこに道を作ったり、階段を作ったりしました。草刈りからフルにやって3時間くらいかかりました。
私、今まで階段や道なんて作ったことは無かったんですけどね。You Tubeで作り方を見ながらやったのですが、意外と素人でもできるんですね!
これを作ったら地元の人も驚いて見に来るようになりました。ここは、もともと目立っているわけではなかったですが、どこにでもあるわけではない、地域のお宝みたいなものです。
それをきちんと整備して情報発信をすることで観光資源になるんじゃないかなと思っての行動です。こうして取り組んでみると、それも可能なんだということが分かりましたね。
柔らかい語り口で、山城屋の取り組みを面白く話してくださる二宮さん。
概要が分かってきたところで、参加している方からの質問を交えながらお宿会議は進行していきます。
◆投稿したくなるような仕掛けを用意
情報発信について、コツなどはありますか?
山城屋では、ホームページの他にFacebookやInstagramもやっています。特にInstagramはお客さんに写真をアップしてもらう意味合いが強いですね。
こちらからは積極的に「SNSに投稿してください!」とは言わないんですが、投稿したくなるような仕掛けは意識して用意していますよ。
たとえば、うちにはお風呂の前に大きいトトロのぬいぐるみが置いてあります。でもそれだけだとまだ足りない。そこで何をするかというと「横に椅子を置く」。そうすると人は一緒に写真を撮るんですよね笑。
撮影スポットアピールといいますか、「ここが撮影スポットなんだ」とわかれば自然と写真を撮って、シェアしたくなるものです。
玄関前の「山城屋」の文字が入った提灯の横にも椅子を置いてありますが、そうするといい感じに宿の名前が入った写真をアップしてもらえるんですよ。
◆来たいと思えば、割引クーポンは関係ない
これからGo To Travel キャンペーンが始まる予定ですが、単価が高いところに集中してしまうのではないかと思っています。二宮さんは、なにか対応策などは考えていますか?
私のところの宿泊料金は、少しずつ調整しながらやっと今の値段になっています。
コロナの影響が出始めたときに少し下げてみたけれど、安くしたからといってこの状況でお客さんがたくさん入るわけでもなかったので、結局元に戻しました。安くしたときに来たお客さんにリピートしてもらえるかというと、そうとも言い切れないですし。
熊本地震のときにも”九州復興割”というのがありましたが、私のところには、これの利用者はそれほど来ませんでした。
それよりも、常連のお客さんが来てくれていたんですね。
だから私の感覚としては、来たいと思ったら割引クーポンは関係なく来てくれるんじゃないかと考えています。
◆口コミを増やすためには、安心して過ごしていただくことが大前提
宿泊された方に、口コミを書いてもらうお願いなどはしているのですか?
宿泊後の口コミについては、話の流れで「良かったら書いてよー!」というお声掛けをすることはあります。
実際の口コミで多い内容は一番目がお料理、二番目が女将、そしてやっと三番目くらいに私が出てきます笑。まあ、駅まで送り迎えもしていますからね。
とはいえ、口コミを増やしていくためには地道な努力も必要で、口コミをお客さんに書いてもらうにはまず、安心して過ごしていただくということが大前提だと思っています。
そのためには先回りして考えるんです。
「明日何時の汽車に乗るんですか?」とか、「明日は由布院を観光するんですか?」とか、こちらからお尋ねして相手が一番心配しているのではないかということをさりげなくアドバイスしてあげる。
山城屋では、チェックインのときにももちろん案内しますが、宿の過ごし方や宿の中での過ごし方が客室のテレビでも確認できるようになっています。
「バスタオルを巻いてお風呂に入ってはいけません」とか、外国の方も「これをしたら失礼じゃないかなあ」と思っていることがあるでしょう。そんな、泊まって時間を過ごす間の”不安のタネ”を取り除くことを意識しています。
◆楽しく、希望を持つことが大事
様々な意見が交わされているうちに、気づけば終了の時間に。
最後に二宮さんから、休業期間の取り組みを通しての感想をお話いただきました。
今日お話させてもらったように休業期間中に色々なことをやっていたんですけれども、その間、地元のメディアやテレビ局などの取材をいくつか受けました。
そして色んなところで話をしていると、自分の中で「同じことを言っているな」と思うことが出てきます。
それは「今できることを、楽しく、希望をもって取り組む」こと。
”今できることをやろう”というのは皆さんがよくおっしゃることですが、私の場合はそれに加えて「楽しく」、あまり悲壮感をもたないでやることも大事だと考えています。
私にとっては自分の楽しみも兼ねているわけなんです。
そうやって、今できることに楽しく取り組みながら、「またお客さんは戻ってくる」という希望を持っていくことが大事じゃないかなと思っていますね。
◆二宮さんの話を聞いて
地元の良さ、地元の魅力に気付いていないだけで、「何もない地域」は無いという話になった場面では
「郷土料理や風習、地域行事だとか。廃れてしまった風習を復活させるのも一つの例だし、探せばあると思う」
「日本全国、魅力のない地域ってほんとになくって、自分がずっとそこにいるから気づけないけれども、ほかの人がみたらすごく魅力のある地域ってありますよね」
「確かに都会から来てくださった方は、当たり前のようにある山菜だけでもすごく感動してくれます」
と、多くの意見が出て、話が盛り上がりました。
代表の永岡は地域の方と話す中で、「僕らにとっては当たり前のことでも、そんなに一つ一つ感動してくれるんだね!」「じゃあ僕らの地域の良さってこんなものなのかもしれない」という声を聞くといいます。
自分の良さも誰かに教えてもらわないとわからないように、第三者に言われることで初めて気付くものがたくさんあるという点は、おてつたびというサービスを運営していて思うところでもあります。
動画や写真を上手く活用して記録や発信をしながら様々な取り組みをされている山城屋の二宮さん。階段づくりもYouTubeで勉強しながらやってみたら意外とできちゃいました、と楽しんで取り組んでいる様子が伝わってきました。
そんなに難しいことではなく、ちょっとやろうと思えばできるいくつもの取り組み。今日の話をきっかけに行動できそうなことがたくさんあるお宿会議でした!
お宿会議を通じて、横のつながりも活かしていってもらえたら嬉しいなと思います。
二宮さん、ありがとうございました!!
<記事執筆:田中沙季>
⭐今回のゲスト⭐
◆旅館山城屋
〒879-5112
大分県由布市湯布院町湯平309-1
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