見出し画像

色々メンタルがあれだったので秋葉原に行った

在宅勤務が始まり3ケ月が経った。用事があれば会社に来ていいことにはなっているが、最初のうちに気分転換で顔を出す程度で、家にいた方が良い、という結果に収まった。

チャットとオンライン会議は最初「楽じゃん〜」と思っていたものの、画面越しの人と話していることが現実から遠ざかっているような気がしていた。

もしもプロジェクトが頓挫しても、画面越しのクライアントから殴られるわけでもない。叱責があっても手元で検索するワードは「今日 美容室」とでも打てば気が紛れるだろう。とはいえそんな事態もまだ来てはおらず、ずっと地に足がついていないような感覚だった。


緊急の案件が終わり、残骸処理だけを進める日のことだった。ミーティング時間を勘違いし、いつもよりかなり早めに起きてしまったのでそのままPCを開き仕事をすることにした。

頭の奥に鉛が入っているみたいに思い。いつもの気圧のせいだろうか(片頭痛持ちなのだ)とアプリを開いてみるが今日の気圧は通常通りだ。一応頭痛薬を飲んでみる。

仕事に気持ちが入っていかない。生理前でもないのに、ソワソワしていて、すぐ立ち上がってしまう。感情の置き所がないような、変な感じだ。

ピロピロピロ、とふざけた着信音はチャットの通知。昨日急いで仕上げた件のことで、手直しが入ったと連絡がきた。やっておいたよ、という上司の言葉になんだか情けなくなる。

昨日YouTubeを流しっぱなしにしながら作業したせいだろう、と心当たりのさきを作業環境に照らし合わせていた。

今日のタスクをまとめたノートに目をやる。これは本当に今、必要なことなのだろうか。など、作業前に考えても仕方がない。

えいや、と割り切って作業することができなかった。


(だめだ、この部屋にいると思考が回転する)


そういえば、思い切った「サボり」を在宅勤務になってからしていなかった。

もう今日はだめ。やれない。


思い切ったら行動は早く。早々に午後の有休願いをチャットで申請した。


大浴場付きのホテルも、新型ウイルスの蔓延する時世で半額ほどになっていると、友人が言っていたので予約する。たまたま手頃な値段は秋葉原が空いていた。

秋葉原か……、興味があるものは全然ないような気がする。探したらあるのかもしれないけれど。

ipadに本をたくさん入れて、ホテルでゆっくりしてお風呂に入ろう。自分の中のギリギリの精神状態の最適解はありきたりなものだったけれど、最高だった。

会社を休みと決めた瞬間に気持ちが晴れやかになるのは現金な気もしたが、そんなものだろう。今日は無理と割り切った、トカゲだったら尻尾を切り落としたようだ。


実際ホテルに着くまで、秋葉原は魅力に満ち溢れていた。メイドさんだけでなく、動物カフェ、多種多様なガチャポン、いつもだったら行列のはずの有名な台湾発のタピオカやさん。

本当だったら長蛇の列だった全て、友人を誘っていく場所。

一人で気兼ねなく楽しむタイミングは今しかない、と思った。

スタンプラリーのように、観光にきた外国人と同じことをして回り、ホテルに着く頃には荷物がレジ袋一袋分は増えていた。


ベッドに倒れこむと、サラサラの敷きたてのシーツが気持ちいい。

初めて自分のお金で東京観光に来たときの感じって、こうだったろうか。

いや、もっと新鮮味はあっただろうけど、あの感じをもう一度味わってみたい。

住んでしまうと行かない場所がたくさんあった。観光に来るときは、1日たりとも無駄にしたくなくて、過ごすスタバの場所まで決めていた。


自分のお金でホテルに泊まれるって最高だ。今ならスタバに気負うことなく、いや、むしろ落ち着いたお茶屋さんを銀座で探して楽しむことだってできるようになった。

でも、昔初めて感じた東京への憧れの熱量をもう同等には味わうことはできない。


秋葉原で巡ったいくつかの場所も、鬱屈した日々から抜け出すための刺激ーーかつての東京へのワクワク感が、最大の刺激だったと知っているからなのかもしれない。

(しかし、温泉のあとの夜鳴きそばは最高だったことは初めて味わった)

投げ銭はありがたく美大やり直しのための画材購入につかわせていただきたます。