よそもの
山門前の岩壁の草引きをしていると
お寺の前に住むおばあさんが、こちらを見ていることに気が付いた
お寺ではおしゃべりはしないし、挨拶すらしないこともある
私はまだ分別が付かなくて、迷ったけれど、
おばあさんは檀家さんでもあるのだから、ここは挨拶しなければと
「こんにちは」
と言ってニコッと笑った
真顔で私を見ていたおばあさんは
「また気持ち悪いのが来たな」
と言って去っていった
唖然とした
ガーンと頭の中で鳴っていたと思う
困惑とかなしみが渦巻いた
自分はこれまでずっと、守られた中で暮らしていたのだと
知り始めていた時期だったけれど
見知らぬ土地で暮らすとは、こういうこともあるのだと
その時知った
そして、おばあさんの気持も、わからないでもない
お寺には度々、よそから見知らぬ人がやってくるのだから、迷惑を被ったこともあるのかもしれない
そんなことに想いを馳せながら、しばらく過ごした