SIビジネスとドッグフーディング
こんにちは、大手町くずろうです。
本日は、「SIビジネスとドッグフーディング」について考えてみたい。
言葉の意味
ドッグフーディングという言葉を調べると、次のような説明がある。
ドッグフーディング(dogfooding)とは、社員が自社製品や自社サービスを日常的に利用すること。もしくは正式リリース前の自社製品を社内テストで積極的に使用すること。その日常的な利用の中から、自社製品の試験運用やベータ版の改善を目的に、ユーザービリティ確認や問題点の発見を行う。(https://makitani.net/shimauma/dogfooding から引用)
説明の最後には、エピソードとして次のような記載がある。
ドッグフードのセールスマンが犬用ビスケットを食べて質の高さをアピールした、というエピソードが由来となっている(https://makitani.net/shimauma/dogfooding から引用)
私は、必ずしも、自社製品や自社サービスでなくとも、なにかをセールスしたいならまずは自らが試し、自らがいいものであるということを確かめてからの方が効果がある場合があるよ、ということだと解釈している。
SIer はドッグフーディングをしているのか
さて、SIerは、他社プロダクトやパッケージ、最近でいえばSaaSを「担ぐ」ビジネスをすることがある。別の記事に、今後SIerに求められる”インテグレーション”は「いままさにスタートアップが次々と生みだしているイノベーションをユーザニーズに最適な形で統合したシステムサービスを提供し続けること」だとも書いた。
はたして、SIerはどの程度ドッグフーディングをしているだろうか?。世の中に数多あるプロダクトやサービスをリサーチしたら次はその素晴らしさを実感するために自社の業務に適用する機会を積極的に持ちたい。
例えば、自社の業務プロセスが抱える課題の解決のためになにか新しいサービスを探索し活用しているのなら、それをSIerとして顧客に提供するソリューションとして担いだ時、そこで得られた知見は顧客に還元することができる。また、顧客に先んじて運用しつづけている経験は、そのサービスを利用することで発生するピュアな要求要望をダイレクトに獲得しあらかじめ対応しておける。いつもちょっと先行く先輩のような気分でいられる。
自社サービスをドッグフーディングしたい
だったら、やっぱり自社サービスでやりたい!と思うかもしれない。しかし、もしかしたら逆に自社サービスでないことがメリットになるかもしれない。
まず第一に、他社サービスだからこそ顧客と一緒の気持ちになれる。「このサービスここがいまいちなんだよね」「わかります、私もずいぶんそこに悩まされました。」的なやりとり。共感で繋がることができる。
次に、サービスはオーダーメイドではないため結局のところ個社ニーズに完璧には応えられない。個社ニーズには常にあと一歩足りない。これは宿命だと思う。足りないラストワンマイルを埋めるのがSIerの役割である、という考え方もある。持たないメリットもあるのだ。
最後に、自社サービスだと、他社サービスとぶつかってしまう。できるだけ喧嘩はしたくない。誰よりも広い視野で業務プロセスをオーケストレーションする役割にこだわるのも悪くない。
業務プロセスをショーケース化
他社事例は開示などに顧客の承諾が必要だが、自らの業務プロセスであればそのハードルはぐっと下がる。先端ITを活用して再構築した業務プロセスはショーケースにもなる(自社オフィスをショーケース化するようなものだ)。ところで、SIer自身の基幹業務が恐ろしく洗練されているSIerってあったりするのだろうか?
さらにいうならばSIerは先端技術(プロダクトやサービス)の探索はもちろん重要であるが、業務プロセスがいまいちであるがゆえにイケてない事業を取り込む方向も模索すべきかもしれない。ドックフーディングできる環境を傘下に持つということだ。先端ITが業務プロセスを最適化したことでより収益を生む事業に再生することができるなら、そこで得られた知見はSIerとしてプラットフォームソリューションとして業界に還元すればいい。
事業会社が子会社にシステム会社を持つというのはよくあるが、逆にSIerが関係会社(子会社・関連会社等)として金融、流通、製造などの事業を持つという企業構造であってもいい。そうすればXTechを自らが当事者となって進めることができる。