【90年代ロック名曲選】The Sunnyside of the Street - The Pogues
90年代を駆け抜けたロックの名曲たち。その魅力をサクッとご紹介♪
4月にコーチェラ(Coachella Valley Music and Arts Festival)※が今年も開催されました。
※米カリフォルニアの砂漠地帯で毎年4月の週末3日間2週にわけて、計6日開催される世界でも指折りの大型音楽フェスティバル
今年のヘッドライナーは、ラナ・デル・レイ、タイラー・ザ・クリエイター、ドージャ・キャットが務め、現代USミュージックシーンを反映したラインナップでしたが、ロックが大好物の自分からすると少し寂しい限り...
それでもノーダウトの復活が個人的目玉だった2日目はすごいラインナップでした。
毎回ありがたいことにYoutube配信してくれているので、これらの垂涎もののラインナップが海を隔てたここ日本で、ステージ移動なく寝ころびながら観れる幸せ、最高です!
むむっTシャツよくみると
ポーグスじゃんか!!
フロントマンのエズラ、好きなのね。
現役バリバリのミュージシャンも愛して止まないポーグス。
やっぱ偉大です。
ということで、今回はThe Poguesが1990年にリリースした5thアルバム「Hell's Ditch」からの代表曲"The Sunnyside of the Street"をご紹介します!
The Poguesについて
The Poguesは1982年にロンドンで結成されたロックバンドです。
▼メンバー構成【今回紹介アルバムのリリース時点】
シェイン・マガウアン(Vocals,Guitar)
ジェム・ファイナー(Banjo,Mandola)
スパイダー・ステイシー(Tin Whistle)
ジェイムズ・ファーンリィ(Accordion)
アンドリュー・ランカン(Drums)
フィリップ・シェブロン(Guitar)
ダリル・ハント(Bass)
デリー・ウッズ(Mandlin)
アイルランド伝統音楽をベースに、ロンドンパンクをふんだんに盛り込んだ独創的な音楽性と、フロントマンであるシェイン・マガウアンの抒情的な詩が特徴的。
アイリッシュパンクのルーツと認められている偉大なバンドです。
ただ、その型破りな音楽性はデビュー当時かなり苦戦したようです。
特に伝統的なアイルランド音楽界からはかなりの批判をうけ、その界隈の著名人からは”アイルランド音楽史上最大の災難”とまで言われる始末。
どこの国でも出すぎる杭は打たれがちですね。
それでも多くのファンやアーティストに支持され、UKロック史に残る作品を次々にリリース。
中心人物でありカリスマのシェインが2023年11月に亡くなった今でも、ある意味熱狂的且つカルト的な人気を誇っています。
このバンドの最大のヒット作である1985年リリースの3rdアルバム「If I Should Fall from Grace with God」に収録の”Fairytale of New York”は、イギリスではクリスマスシーズンになると毎年のようにヒットチャートにのせようという動きがでてくるほどイギリスとアイルランド両国民に愛されているクリスマスソングです。
このクリスマスソングの凄みは、もちろんメロディの良さや感情を揺さぶるピアノのしらべはもちろんですが、その歌詞がとてもユニークです。
世間的によく知られるクリスマスソングは耳当たりの良い「平和」や「愛」を表現したものが多いですが、この曲は、夢にまで見たニューヨークに渡った移民夫婦が、その現実に打ちひしがれ、仲たがいし、お互いに"クソ野郎"だとか"売春婦"だとか罵りあうという、とんでもなく不恰好な情景を歌詞にのせてシェーンとカーティス・マッコールが演じているかなり異質なクリスマスソングです。
とっても良い曲なのでぜひご一聴ください。
そんな印象的でエモーショナルな歌詞を紡ぐシェイン・マガウアンは、イギリス生まれのアイルランド人。
若いころはセックスピストルズの熱心なフォロワーとして有名で当時のライブ会場でも暴れまわっていたようです。
また幼少期から文才があり13歳のときに新聞社が主催する文学コンテストで優勝するほどの才人。
一方で、その才が故か、とても多感かつ繊細でドラッグや酒におぼれ、自己破滅的な言動や行動から数々の騒動をおこすトラブルメーカーとしても有名でした。
その破天荒なキャラクターは、ドキュメンタリー映画にもなるほどの人物です。
「5歳で酒タバコ」
「高校でドラッグ依存症」
何ともすごい人生です。
The Sunnyside of the Streetの魅力
この曲は、バンドの成熟期といえる1990年にリリースされた5thアルバムのオープニングを飾る、これぞポーグス節という名曲です。
イントロからアコーディオンとティンホイッスルの明るいユニゾンではじまります。
アイルランド音楽の特徴ともいえるユニゾンプレイ、どの楽器も同じ旋律を奏でるというのが何とも耳心地よいです。
そしてシェインのパンチの効いた特徴的なボーカル。
ぶっきらぼうな歌いっぷりですが、どこか愛嬌のあるなんかクセになる不思議な魅力をもった歌声です。
またバンジョーによるフォーキーな雰囲気を醸し出す軽快なリズムも、アイルランド伝統音楽を引き継ぐものとして、曲全体に彩りを与えてくれています。
そしてなんといっても歌詞です。
好きな一節を引用します。
(英語が不得手なもんで自己流の解釈ですが)
きらびやかな宮殿と窮屈で不自由な牢獄、対極のような場所どちらも経験してきて、カタツムリのようにのっそりとした生き方ではなく、輝かしい太陽に照らされた場所で自由に過ごしていきたい。
という願望を上手く表現しています。
クラッシュ味?
この曲が収録されているアルバムのプロデュースを務めるのは、ロンドンパンクのレジェンド、The Crashのジョー・ストラマー。
このアルバムの随所にThe Crash風味が感じ取れます。
その中でも好きなのが"Rain Street"です。
3rdALや4thALのアイリッシュトラッドな雰囲気と比べロックテイストが増しているのは、間違いなくジョー・ストラマーの影響でしょう。
このアルバムリリース後、シェインはアルコール依存がいっそう深刻な状態で音楽活動が難しくなり、1991年の日本公演を最後にバンドからクビ宣告され脱退。
その後を一時的に引き継いだ漢気男がジョー・ストラマーでもありました。
フジロックで生ポーグス
自分は初めてこのバンドをフジロック'05で体験したのですが、今でもとても記憶に残っています。
ホワイトステージに降り立った彼等、シェインはアルコール影響なのか終始ヘロヘロ状態。
ライブ中もステージ脇へ入ったり出たりで「大丈夫かいな?」と心配しました。
「しっかりしろ!」と愛すべきヤジもでるほど笑
思いの外、シェイン以外のメンバーは年齢こそ重ねているけど演奏バッチリだった故に、シェインのパフォーマンスが目立つという...
それでも往年の代表曲は大盛り上がりでしたし、特にラスト(だったと思う)で放たれた”Fiesta”のパーティー感たるや、アイリッシュパブでバカ騒ぎしている輩のように踊り狂った記憶があります。
この時ほど、ビールはハイネケン(←フジロックのメインスポンサー)ではなくギネスを飲みたくなったときは無いです。
ということで、"The Sunnyside of the Street" をご紹介しました。
1980年代から90年代に活躍したバンドThe Pogues。
"酔いどれ詩人"と呼ばれたシェインもこの世には居ないですが、あの世でもしこたまヤクや酒かっくらって、メーワク掛けているんでしょうかね?
竹原ピストルの"マスター、ポーグスかけてくれ"の気分です。
ではまた。