生活保護について(1)収入から自立更生費として控除が認められる(2019年2月24日ツイート)
生活保護を利用している方の交通事故を受任している弁護士の方にお願いがあります。 損害賠償金が得られたら、それについて自立更生費を認めるよう福祉事務所と交渉してください。そうしないと、当事者は何も得られず、弁護士費用のために損害賠償請求をしたのと同じことになりかねません。
生活保護利用者が交通事故によって慰謝料等を受け取った場合、交通事故後に受け取った保護費は、資力があるのに保護を受けたものとして生活保護法63条に基づく返還請求がなされます。 このとき、弁護士費用等の実費だけではなく、自立更生費についても返還額から控除することができます。
この「自立更生費」とは、世帯の自立に資するものに充てる費用です。例えば、家電製品を買い換える費用や資格取得の費用など様々なものが認められます。 変わったところでは、10年以上を墓参をしていなかったので、そのための交通費を認めてもらったこともありました。
参考になるものとしては、東日本大震災時に出された通知に付けられた費目例でしょうか(添付PDFの4枚目です)。これに限られませんが、イメージは湧くと思います。
大事なことは当事者の方のニーズを聞き取ることです。これまでお金が無くてできなかったこと、買えなかったものはないか、聞いてほしいと思います。この段階ではあまり制限せず、自由に言ってもらって、後から認められるかどうかを精査するくらいで良いと思います。
その上で、できればそれらの費用の裏付け資料を集めたいところです。例えば、家電製品であれば量販店で見積もりを取ってきてもらうなどです。 私は、それらの資料を取りまとめて、自立更生費として認めるよう求める意見書を作って福祉事務所に提出するところまでやっています。
なお、自立更生費について教示しないでなされた63条返還決定は、審査請求で取り消されることもあります。私も何件か、教示せずになされた63条返還決定について、審査請求で取消裁決を取っています。
弁護士の皆様におかれましては、できる限り依頼者利益を図るため、自立更生費が認められるように活動をしていただければと思います。
【補足】2022年10月16日のツイート
このツイートについて補足をします。それは「どのような収入であれば自立更生費を認められるのか」です。 この点は生活保護実施要領次官通知第8-3(3)に示されています。例えば、社協等からの貸付、自立更生目的の恵与金、災害等に対する保証金・保険金・見舞金などで一定の制限があります。
より正確には以下のとおりです(記号は次官通知での記号です)。これらのお金のうち「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」が収入認定から除外されます。
ウ 他法、他施策等により貸し付けられた資金
エ 自立更生を目的として恵与される金銭
オ 災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金
カ 保護の実施機関の指導又は指示により、動産又は不動産を売却して得た金銭
キ 死亡を支給事由として臨時的に受ける保険金(オに該当するものを除く。)
交通事故の損害賠償金は「オ」に当たるものとして考えられます。 その一方で、例えば消費者金融に対する過払金などはどれにも当てはまりません。
これらに当たる収入については、自立更生のための費用を積み上げて収入認定除外を求めることが考えられます。 一方で、次官通知第8-3(3)にはそもそも収入として認定しない収入(社会事業団体からの恵与金など)も定められていますが範囲が限定されています。
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