裁判官の忌避について考えたこと、調べたこと(その2)
次に、忌避申立ての手続について、調べたことを書いていきたいと思います。
1 忌避の申立ての手続とその後の流れ
まず民事訴訟法24条2項は「当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない」としています。
本件では、第1回期日の前に忌避事由があるのではと気付いたため、第1回期日の前に申し立てることにしました。
期日以外で申し立てる場合は、書面(「忌避申立書」)で申し立てることになっています(民事訴訟規則10条2項)。忌避申立書には500円の印紙を貼らなければなりません(民事訴訟費用等に関する法律の別表第一の17)。なお、申立書を出すにあたっては、岡口基一裁判官の「民事訴訟マニュアル第3版」を参考にしています。
忌避を申し立てると民事訴訟法26条本文によって手続が止まることになります。本件でも4月24日に予定されていた第1回期日が取り消されました。
決定が出るまでにどのくらいかかるのかと思っていたのですが、4月21日に申立書を出して28日に却下決定が出たので、申立てから1週間で結論が出たことになります。
忌避申立事件を担当したのは仙台高裁第1民事部です。民事訴訟法25条3項の規定から、忌避を申し立てられた裁判官は外れなければならず、また25条2項の規定から合議体で裁判をしなければならないのですが、仙台高等裁判所第3民事部は綱島裁判官を除くと(岡口基一裁判官が職務停止中で)合議体が組めないので、第1民事部が担当することになったのだろうと思います。
2 不服申立ての手続
却下決定は、端的にいえば「本件と秋田地裁の事件は別の事件である」ということでした。これには当然に不服があり、控訴人側としては不服を申し立てることにしました。
この点、地裁の裁判官に対する忌避を却下する決定には即時抗告ができることになっています。
ただ、高裁の裁判官への忌避の却下決定は即時抗告ができません。できるのは特別抗告か許可抗告です(ここのところをズバッと書いている本がなかなか見つからなかったのですが、松本博之先生の「民事・家事抗告審ハンドブック」には書いてありました)。
本件では特別抗告はせず、「その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合」であるとして許可抗告を申し立てています。
許可抗告の申立てでも印紙代が必要です。忌避申立ての却下決定を争う場合は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第一の18の(4)「(1)から(3)まで以外のもの」に当たるものとして1000円になります。
なお、申立ては「裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内」に行わなければなりません(民事訴訟法337条6項が引用する336条2項)。この短い期間しかないので、不服の理由まで書くのが難しい場合、許可抗告申立書には抗告の理由を「おって主張する」として、後から「抗告理由書」を出すこともできます。この場合は、許可抗告申立て通知書の送達を受けた日から14日以内に出さなければなりません(民事訴訟規則210条2項)。
3 まとめ
分からないことが多い中での忌避申立てでした。まだ手続は続いているところですが、情報を共有することで役に立つところもあるかもしれないと思い、書いてみました。
なんとか許可抗告を通せるよう、引き続き取り組みます。