otari sap bakery club の設立へ到るまで②
「第1回おたりの森のスイートフェスタ」は、ほんのり甘味があって煮詰めればシロップになるイタヤカエデの樹液を「森のスイーツ」と位置付けたものです。そして、ヤマブドウ、サルナシ、オニグルミやブナの実などは、みんな「森のスイーツ」。
将来は、そうした「森のスイーツ」を使った食品作りの関係者が集まって大きな祭典になることを思い描いて森林(もり)づくりコーディネーターの山口真保呂が名付けました。
小谷村中谷地区の中谷開発委員会(中谷地域づくり協議会)は、こうしたイベント開催における結束力は強く、事前に集まって会議を行い役割分担を決めています。
さて、開催することは決まったものの、イベントの宣伝は至難の業。
チラシを1,000部印刷したものの、どこに置いてもらうのが効果的なのか?
いろいろなところへ郵送で送り、株式会社モンベルからは「こうしたイベントもモンベルフレンドマーケットで売れますよ。」とアドバイスをいただくなど協力していただきました。
小谷村キハダ生産組合のFacebookでつながっていた「のきさきカフェ」にもチラシを郵送で送って置いていただきました。
結果的には、参加者はチラシを見て来ていただいた方は無く、新聞の告知記事を読んで知った方がほとんどでした。集客は、本当に難しい。
「のきさきカフェ」とはネット上のつながりだけであったため、後日、お礼に伺いました。
そのとき、小谷村の森林資源の活用を進めるために5年前から様々な取組を行っていること、長野県内の木工関係者のほとんどの方は長野県外の木を使っていること、使える木が小谷村にはあるのに流通にのらないため使いたいと思っている人も使えない状況であること、などを説明しました。
イタヤカエデの樹液に関しては、森林に関心を寄せてもらうツールの一つであるが、お金に変わっていかない状況が地域のモチベーションの低下につながっているため、イベント開催等で食品製造に使いたい人の開拓も行っている旨を話しました。
昨夏は、小谷村でホテル経営されている方に冷凍保存しておいた樹液原液とメープルシロップを提供し、秩父樹液生産協同組合から情報提供していただいた樹液を「パン作り」にも使っている内容を話していました。
しかし、そのときは何も起きなかったのです。
「のきさきカフェ」の山崎雅子さんは、「私がパンを作ってみようかな?」と仰ってくださり、その翌日には『Sap Bread』が出来たのです。
山崎雅子さんがFacebookで『Sap Bread』のことを発信すると、5月1日にオープンする「天然酵母のパン工房 Kuuh くぅ」の坂本久美子さんがすぐさま反応しました。
3月14日に坂本さんが「のきさきカフェ」で話を聴きたい、とのことでしたので、山崎さんに話した内容を説明しました。
そのとき、パン屋の開業にあたって店に置く「スツール」を探している、とのことでした。
説明の中では『kihada黄金の樹プロジェクト』によるキハダという木の活用についても話していたため、「せっかくならばキハダで作ったスツールが出来れば導入したい。」となりました。
樹液を使う、ということだけではなく、樹液を通じて森林資源の活用を進める、という意味をきちんと理解してくれた瞬間でした。
坂本久美子さんは、翌日には『Sap Bread』の食パンを作ってくれ、木工工房も訪ねました。今回、キハダのスツールを作ってくれることになったのは、大町市のα空間工房の渡辺久男さんです。
渡辺久男さんは、以前から地元の木を使いたい気持ちがありましたが、流通されていないから使えない、とこぼしていました。
山口が保管している小谷村産のキハダ材をすぐに持ち込み、キハダのスツールの製作が始まりました。
山崎雅子さんのパン、坂本久美子さんのパン、両方とも樹液の効果で味わい深く美味しいパンでした。
こうして森林にも関心を持った二人のパン作りの人が現れたので、組織化の検討をすぐに始めました。
(文責:山口真保呂)