外で食べた忘れられないPNTK飯(前編)
一人住まいでもあって、自分の日常の食事において外食が占める割合は、家族で住んでいる人よりも多い。
と書き出して、一人住まいの人が必ずしも外食に依存する割合が高いとは言えないことに気づいた。
マメな人は常備菜をまとめて作ったり、冷凍保存をフル活用して食のバリエーションを増やすことと節約を両立させることに成功しているように思える。
世の中にはそのためのライフハックが多く発信されていて、多くの賢明な人が実行しているのではないか。あくまで想像だが。
自分だってできないことはないだろうが、PNKTにはハードルが高い。
PNKTという自尊感情を下げる言い方もいい加減やめなければと思う。
今回はそういう話ではないので、この辺にしておく。
自分が朝イチから仕事に行く日は午前でいったん仕事が終わる。
それは、ランチタイムに休憩時間の終わりを気にすることなく梅田にいることを意味する。
乱暴に言ってしまえば、つまり、よりどりみどりなのである。
インデアンカレーを擁するドーチカや第1から第4まである駅前ビルを始めとして、街のどこかしこでランチが提供されている。
この一帯は、うどん、そば、丼もの、朝仕入れた魚を料理する店から、ボルシチやシュクメルリを出す店まであらゆる種類の料理が網羅されていると言ってよいほどの多様性に富み、また値段も同様だ。
大抵はこの駅前ビルのどこかで昼食にするが、いつもどこに行こうか迷ってしまう。ランチに1000円は自分にとってはちょっと辛いので大抵は1000円以下のものを選ぶことになる。
店によって昼営業に力を入れているところもあれば、そうでもなさそうなところもある。
殆どが夜も営業している店であり、願わくば夜の営業に繋げたいという思惑も見て取れる。
そうであれば、リーズナブルな値段で夜メニューの充実ぶりを期待させるようなものを出せば良いと思うのだが、経営者の判断は必ずしもそうではないようだ。
今では値上げをしてしまったが、680円で分厚くホクホクのアジフライをおかずにおかわり自由の白米を堪能できたことがあれば、サービスランチと称して山盛りのもやしをかき分ける宝探し感覚のレバニラ炒めに出会ったこともある。
その中で、際立つPNKTさが今でも忘れられないご飯を紹介したい。
世の外食マスター諸氏の中には、もっと凄いものに出会われたことがあるという方もあろうが、それはどちらかというと不幸自慢に類するものになるはずであって、その方の御多幸を祈らずにはいられない。
まずは、件の大阪駅前ビルである。店の特定を避けるために詳細はなるべくぼかしておくが、もしどの店かわかったとしてもそっと心のなかにしまっておいていただきたい。
大阪駅前ビル地下の飲食店街はコロナの時期にかなりの店舗が入れ替わった様子だが、古くからやっている店もまだまだある。
少なくとも1997年頃にはすでに営業していた「ちかごろのカレー屋さん」というカウンター式のカレー店は今も健在で、この店の前を通る度に「ちかごろ」という言葉の定義について考える機会を与えてくれる。
この店と同じくらい古いと思しき店の日替わりランチを食べたことがある。
もうかれこれ10数年以上前のことだ。
店の名誉のために言っておくが、その日の日替わり以外のランチメニューは至極一般的なものだった記憶がある。
とにかく、本来、PNKT飯と呼ぶには語弊があるようなきちんとした食事を出す店だが、
たまたま自分が昼に立ち寄った日の日替わりが、
「ライスコロッケ定食」
だった。
それまでライスコロッケというものを食べたことがなく、ちょっと試してみたかったのもあり、それを注文した。しかしこれは自分にとっては失敗だった。
コロッケそのものはちゃんと作られていたが、全体的に衣が薄かったのか、トマトソースをベースにしたソースがかかった部分の衣はしんなりしており、カリッとした感じが失われていた。
コロッケの具は、なにか味でもついているのかなという予想に反して、全くの「白いごはん」だった。
おにぎりのように中に何かを仕込んであるわけでもなく、ご飯を丸めて衣をつけて揚げたもの、それがこのライスコロッケだった。
「ごはん」をおかずに「ごはん」を食べたのは生まれて初めての経験だ。
本当に美味しい白米は、それ自体をおかずにご飯が食べられるらしい。
いつかそういった世界を経験してみたいとも思う。
しかし、自分の前に運ばれてきた、一見すると普通のコロッケ定食に見えた「ライスコロッケ定食」はそれには程遠いものだった。
そういうことならば、せめて白ごはんではなくスパゲッティでもつけておいてくれたらよかったのに、とも思うが、延々と天かすならぬ「フライかす」とトマトのかかった「ごはん」をおかずに「ごはん」を食べることになんら心動かされることなく、店を後にした。
まあ、完食はしたけど。(だったら文句言うなという話ですね)
でもこれは今回自分が言いたい「PNKT飯」とは少し違っている。
ライスコロッケ定食はあくまで話のマクラだ。
続きはまたの講釈で。
(つづく)