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起業はツラいよ日記 #86

今年九月から再開したサラリーマン業の仕事納めは済んだけれど、(自分としては本業の)白蝶社の仕事はまだ納まっていない。というより、休みこそが稼働のチャンスである。

さて、今書棚からこの本を取り出して読んでいる。

『ブックオフ大学ぶらぶら学部』(夏葉社)

ブックオフには結構お世話になっている。編者であり著者でもある島田潤一郎氏が「はじめに」で書いているように、ブックオフを好きだということは世の中的には憚られる。出版社としての自分とすれば本は新刊本を新刊書店で買って欲しい。だが、一個人とすればその便利さに誘惑されっぱなしだ。

昨日、近くのリサイクルショップに足を運んでみた。その店は中古のホビー商品を中心に古本も取り扱っている。そこで、前々から読みたいと思っていたあるエッセイ本を見つけてしまった。そのエッセイ本はこの一年、一般書店、独立系書店問わず多くの書店で見かけていた。実際、重版もされて販売部数も好調のようである。その本を見かける度に「買おうかな、どうしようかな」と思い続け、購入を保留し続けてはや数ヶ月。

ブックオフでも度々見かけることはあって、価格は1,050円(税抜)がだったと記憶している。元値が1,600円(税抜)だから、既に元値の35%オフである。それでも買うのを躊躇っていた。ブックオフで1,000以上出して買うなら新刊本と買いたいと思う。そのエッセイ本が、なんと近くのリサイクルショップでは580円で売られていた。元値の64%オフである。わたしは迷わず購入した。

経済学を学んだ方であればご存知かと思うが、「支払意思額」「限界支払意思額」というものがある。わたし自身は、特に学術書・専門書であれば、どんなに高くても(とはいえ限度はあるが)一冊6,000円だろうが10,000円だろうが購入する意思がある。それは、その本に求める価値というのが明確であるからだと思う。この考え方を当てはめれば、エッセイ本に求める価値というのが自分自身とても曖昧だということが明らかになる。

マーケティングを学んでいると「購入者にとって、どうしても必要な商品を作れば売れる」というような言説が多く見受けられる。

ある人にとって「どうしても必要」な商品というのはそんなに多くない。例えば、わたしは今「天野祐吉」や「藤原英治」について調べ続けているので、彼らに関する過去の著作はどうしても必要だ。しかし、かなり特殊な事例だと言えるし、この事実をもってマーケティング戦略を立案することはしないだろう。つまり、綿密かつ緻密な調査を行ない”ある特定の人”の欲しいものを販売することは可能だろうが売上が少なすぎて費用に見合った利益は得られないだろう。一方で、その規模を大きくしようと思えば「これは誰が欲しい商品なんだ?」というものが生まれてしまう。うーん、悩ましい。

こうやって考えてみると、本を定価で購入してくださる人の存在はとても有り難い存在であると言える。そのような読者の方を大切にしなければならないし、そういう読者を増やしていかねばならない。(だからといって、古書で購入する人はどうでもいいとは全く思っていない)

来年に出版する本は学術書なのでそれなりに高い値付けをしなくてはならない。しかし、多くの人に手に取って欲しい本ではある。まだ鋭意制作中なのだが頑張って売る努力を続けていきたい。

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