起業はツラいよ日記 #30
アーティストMrs Green Appleのミュージックビデオが話題だ。国内のメディアが大騒ぎするのはいつものことなので気にしないのだが、BBCが報道すると少し位相が異なるのだ。だって、ジャニーズの性加害問題もBBCが発端だった。
SNS上では色々と言われているのだが、どこか納得できないこともあるし、ほんとか?と訝しむことが多い。そのひとつに「コカコーラ社が事前に確認していないなんて嘘だ」というものだ。中には電通(またしても電通、、、)と名指しで糾弾する人もいた。その点について検証したい。
重要だと思うのは、本楽曲のミュージックビデオの内容ということも去ることながら、「Coke STUDIO」というコカコーラ社の世界観を表現する体験型音楽プラットフォームのキャンペーンの一貫であったということだ。同キャンペーンは2023年6月から開始。夏の音楽フェスとして開催されておりMrs. GREEN APPLEの他にも、水曜日のカンパネラなども出演している。詳細は以下のプレスリリースも参照してみてほしい。
改めて広告主・広告会社は本件を避けられたか
結論から言うと「避けられない」だろう。なぜなら、キャンペーンの企画、本件の場合は「Coke STUDIO」(正確には、このCoke STUDIOは世界各国で行われているので「Coke STUDIO JAPAN」)の企画には広告主であるコカコーラ社も、広告会社である電通も携わっていたと思われるが、キャンペーンに起用したアーティストのミュージックビデオにまで確認(いや検閲?)を求め、内容を事前に把握することはしないだろう。
ここで「なぜ事前に確認をしないのか?」と問う人がいるのなら、その様な自分たちを信用していない広告主と仕事をしたいアーティストがどこにいる?と逆に聞いてみたい。そこは信頼関係というものだろう。確認を厳しくすれば出演を受けてくれるアーティストの数は相当少なくなる。自由がないと思われてしまうから。
ただ、気になる一文があった。
気になったのは「どこかイタズラ」という一節だ。筆者は最近のアーティストに詳しくなくてMrs.GREEN APPLEを存じ上げなかったのだが、そもそもの認識として彼らは”イタズラっぽさ”を売りにしていたようだ。恐らく、そのイタズラっぽさ、それが悪ノリ?のような表現として表出してしまったのかもしれない。結果として世間に許容されるものではなかったのだが、これを広告主と広告会社の責任とするのはいくらなんでも厳しすぎる。
レコード会社が気にしなかったのか?という追求なら理解できる。所属アーティストの仕事を把握していないのは怠慢だろう。しかし、レコード会社にとってもアーティストは金を稼いでくれる重要なパートナーである訳だから、彼らの気分を害する可能性があることは簡単には言えないかもしれない。だって「嫌なら、他の事務所に行く」とか「独立する」とか言えちゃう世の中だから。
本記事の結論じみたことをまとめるとすれば、やはり最終的にはアーティスト本人が世間が許容するだけのものをしっかり作り上げる必要があるということだ。
この問題には少し根深い問題があると思っていて、システムによって防止することは出来ないと思われる。なぜなら、広告主や広告会社にその任を与えれば業務が増えすぎて過労問題につながる。レコード会社とアーティストの関係の問題もある。そして、「ミセスには歴史的な教養が欠けている」といった厳しい指摘もあったが、人前に出て表現活動を行う人たちにはとても厳しい世の中になってしまったが、しっかりと学んでいくしかないと思う。
ただし、深津氏が言及するような「再評価で色々あった偉人のリスト」のようなものを作るのは反対だ。そもそも歴史研究は日々行われているわけで、今日あった評価が明日には変更されているかもしれない。そんな状況で「これさえ把握しておけば大丈夫リスト」のようなものを作ってしまえば、人々が思考停止するだけだし、そのリストは誰が作るのだろう?リスト化の際に何らかの偏った思想が紛れ込んでしまう恐れもあるし、「だったら歴史上の偉人はもう使わない方がいい」という結論に落ち着くことは容易に想像がつく。
面倒だけど、一つひとつ自分の頭で考えることを怠ってはいけないということなのでは無いだろうか。「AIに任せては?」のような指摘もあるが、本当に人間が何も考えない生き物になってしまうことを危惧する。良い機会だと思う。自分のアタマを使って考えよう、その一言に尽きるのではないだろうか。