統一教会に対する解散命令請求に先立ち、文化庁による質問権行使は不要である。
宗教法人法の質問権(同法78条の2)は、オウム真理教の事件をきっかけに1995年の法改正で盛り込まれた。解散命令に該当する疑いがある宗教法人に対し、所管庁である文部科学省外局の文化庁が警察の捜査に頼らずに判断の基礎となる資料を集められるようにした規定だと解されている。
しかし、民法上の組織的、継続的な不法行為も解散命令請求の要件を満たすという解釈に立つと、判断の基礎となる資料である30件近い判決がある以上、質問権行使の結果を経ずに、粛々と解散命令の請求をすべきである。他の二世信者を含む被害者については、統一教会に対する質問権行使ではなく、個別的な事情聴取なり、全国霊感弁連を通じてのヒアリングをすればよい。質問権行使の結果により過去の判決の存在、意味や解釈が変わることはない。質問権行使の場は統一教会の反論の場ではない。主張したいことは解散命令の請求後に裁判所で言えば良い。
また、宗教法人法81条1項1号2号の解散命令の要件は過去形なので、統一教会の反省や内部的な改革は要件該当性には関係ない。この点が、様々な予防的な処置を講じてもなお将来において同種の行為を繰り返す高い蓋然性を要求する破防法と過去の行為に注目する宗教法人法上の解散命令との最大の違いである。
オウム真理教(麻原以下の幹部、科学者、科学プラントの解体後)に対する破防法適用に反対しつつ、統一教会に対する宗教法人法に解散命令を求める立場には何らの矛盾も存在しないのである。
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