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他の特撮ヒーローと一線を画すレインボーマン /おたくGさんの覚書:特撮編その2
特撮ヒーロー全盛期、1970年初頭の3~4年くらいだろうか、数ある作品の中で夢中になったのが『愛の戦士レインボーマン』だ。大好きな作品だ。この頃の特撮ヒーローは、概ね世界征服もしくは滅亡を企む組織が怪人を送り出し、何らかの要素で変身することができるようになった正義のヒーローが迎え撃つ、というのが根本的な流れだった。『愛の戦士レインボーマン』も確かに、その流れにあるのだが、どうも他のヒーローものとは部分的に大きな違いがあり、それが私には魅力となって琴線に触れたのだろう。ではどう違うのか?
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<悪役組織の目的が“日本の滅亡 日本人抹殺”ということ>
何か身に迫ると言うか、妙にリアルな目的なのが怖いところだ。また、この組織の名前が【死ね死ね団】といい、戦争で日本に虐げられた外国人によって組織されているところが現実さを増している。世界征服が何で日本なの?と思うより、よっぽど納得のいく理由から生まれた目的である。また、この【死ね死ね団】のテーマソングが挿入歌として流れるのだが、あまりに強烈なので列記しよう。まあ、この挿入歌のため二度と放送されることは無くなったのだが。
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♪死ね死ね 死ね死ね死ね死ね
死んじまえ
黄色い豚をやっつけろ
金で心を汚してしまえ
死ね死ね 死ね死ね
日本人はじゃまっけだ
黄色い日本 ぶっつぶせ
死ね死ね死ね 死ね死ね死ね
世界の地図から消しちまえ
(以下、死ね死ねが続く)
いや、こんな歌詞をSNSで誰かに書いたら大変なことになるだろう。
とにかく当時はインパクトのある挿入歌だった。
<怪人が出てこない>
何と言っても、怪人・怪獣が出てこない。これは大きな特徴だろう。実際第2クールで殺人プロフェッショナルという、特殊な能力と言うか技術を持った、異形(奇形?)なキャラクターは出てくるが、あくまで人間である。何故かドンキで売っているようなビニールの覆面をかぶっていた。
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<物語の構成が違う>
怪人対主人公という1話完結の形式ではなく、組織の大きな陰謀対それを阻止する主人公という形式なので、全52話が4部構成(4クール)となっている。
第1部 キャッツアイ作戦
精神を破壊し狂わせる薬キャッツアイを日本中に浸透させ、社会混乱を起こして日本に大打撃を与える作戦。主人公のタケシも狂気化するも、何とかヨガの眠りで助かる。
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第2部 M作戦
宗教団体おたふく会を通じて偽札をばらまき、ハイパーインフレを起こして日本経済破綻させる作戦。
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第3部 モグラート大破壊作戦
海底戦車モグラートで、人工地震・人口津波を起こして日本を孤立させ、攻撃機で空爆を仕掛けて日本を壊滅させる作戦。
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第4部 サイボーグ化作戦
ことごとく作戦を阻止されたことから、レインボーマン抹殺を第一の目的とし、部下を次々にサイボーグ化して送り込む。ちなみに姿形は人間のまま。最終目的である“日本の滅亡 日本人抹殺”も、レインボーマン抹殺後、日本統治に変更?
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直接的な破壊工作だけでなく、経済的外交的な面から揺さぶろうという現実的な作戦も多かった。ただ、3部が大掛かりな作戦だっただけに、第4部はいささか珍奇で、ちぐはぐな展開となったのが残念。
物語の進行も、特に4話までは通常のヒーローものと異なっている。まずレインボーマンは1話目では幻影だけ、登場するのは2話の最後で、修行を終えてインドから日本に飛んで行くだけである。しかも3話目は主人公タケシの人間ドラマであり、敵である【死ね死ね団】はやっと4話目に現れる。いつまともにヒーローの活躍がみれるのかと、やきもきしたものだ。
<変身フォームの斬新さ>
出し惜しみの長さに、子供心にも辟易したが、それを補うだけの斬新さ、カッコよさがレインボーマンの変身だ。「アノクタラサンミャクサンボダイ アノクタラサンミャクサンボダイ ダッシュ●(化身の番号)」という呪文のようなものを唱え、七曜にちなむ7種の化身に変化し、それぞれの化身に備わった超能力を発揮して戦うのである。単独ヒーローが適材適所、姿や能力を変化させるフォームチェンジは当時としては画期的なものだった。このフォームチェンジは、現在の2大ヒーローであるウルトラマンシリーズや、仮面ライダーシリーズにも形態を変えつつ取り入れられている。
今日は何の化身になり、どんな能力を使うのか、そのわくわく感は堪らなかった。私はダッシュ4の草木の化身が好きだったのだが、登場回数は一番少なかった気がする。
第4部では、サイボーグに苦戦することが多くなり、レインボークロスといって、ダッシュ7(太陽の化身)の状態で他の2つの化身を融合させ、それぞれの能力を使用することが可能になる。ただ、7変化の個性が死んでしまい、他の化身の登場が激減したのにはがっかりしたものだ。実際、第4部はかなり人気が低迷したらしい。
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<孤独のヒーロー>
概ね特に等身大ヒーローには、戦いにおいて助っ人や協力者が存在する。初期の『仮面ライダー』で言えば立花藤兵衛や相棒の滝和也などだ。ところがレインボーマンは気遣う母親や妹、恋人のような女性はいるものの、闘いにおいては仲間を得ることも無く、日本を守るため孤独な闘いを強いられているのだ。なので、主人公のタケシは常に苦悩しているため、最初は傍若無人で乱暴者だったが、悲壮感が漂い、陰のある青年へと変わっていってしまう。本当に孤独なヒーローだったと思う。
<最大の弱点>
レインボーマンの状態で力が尽きる(およそ1時間くらいだったと思う)と、タケシの姿に戻ってしまい、エネルギー回復のため身体が勝手に座禅を組んで石化し、なんと5時間も仮死状態になってしまう。ヨガの眠りである。その間、身体は硬化するも、まったくの無防備なので攻撃されればひとたまりもない。ヒーローに弱点は多々あるが、これほどの弱点は見たことがない。子供の頃、母親から買い物やら何やらうるさく言われると、シッカロールを顔に振りかけ「ヨガの眠り中」、とよく真似したものだ。
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<愛がテーマ>
タイトルに“愛の戦士”とつくように、まさしく愛がテーマで、特に祖国愛と言っていい。愛国心無くして、孤独な戦いに身を投じることはできないだろう。こういった素朴なテーマを全面に出したヒーローものは少ないように思う。純粋な祖国愛に感銘を受けたのも、レインボーマンに惹かれる一要因なのかもしれない。
断っておくが、私は右寄りではありません。