アニメ『ジョジョ』5部ーー第21話「キング・クリムゾンの謎」と後の呪術的な帰結

 ジョジョ5部のアニメを原作未読者がどれだけ視聴しているのか未知数ですが、これはとりあえず皆さんが先のストーリーを知っているものとして書くネタばれ記事です。主にナランチャの行動について。

 先日はついにアニメ版も折り返し地点に達し、ブチャラティが謎のスタンドキング・クリムゾンに挑む回がついに放送となりました。

「きさまにオレの心は永遠にわかるまいッ!」

 このエピソードのブチャラティはいつにも増してかっこいい。個人的にジョジョの中でもかなり好きなセリフです。
 ボスの邪悪さを目の当たりにしたブチャラティは、心を打ちのめされ動揺しながらも、即断即決でトリッシュの救出に動く。これぞまさに気高き黄金の精神という感じがする熱い展開ッ!! ブチャラティは正しい道を知っているんだよな。ジョルノという明かりを得た今、もう迷うことはない。このストーリーは紛れもない正義と友情の圧倒的人間賛歌なんだッ!

 ただ、21話にはもう一つ見どころがあって、それっていうのはご存知あの船出のシーンです。
 フーゴが展開上の都合という理性を発揮しちゃうシーンですね。同族感染ウィルスが禁止カードになって狂喜乱舞したあの頃を思い出します。オープニングで6人の後ろ姿が写る中「5つの魂た〜ちよ~~♪」って歌ってるのを見るたびに笑っていました。ついに伏線回収の時がきたわけね。さよならフーゴ。
 そして最初はフーゴと共に組織に残ろうとしたものの、葛藤の末に意を決して海に飛び込んだナランチャの行動が光ります。

 「トリッシュは俺なんだ! トリッシュの腕のキズは俺のキズだ!!」

 皆さんはこの先で彼を待ち受ける運命のことをもう既にご存知でしょう。
 そう、ボ(ポ)ルチーニ茸です。ポルチーニ茸のあのシーンのことです。

 あれって唐突に見えてかなり理論的な帰結だと思いませんか?

 さっき遊戯王カードの話しが少し出ましたが、デュエルモンスターズでも他のカードゲームでも、なんならカードゲームじゃなくてもいいんですけど、ああいうのをやっていると、「確かに絶好のチャンスなんだけど、一手間違えば危うくもある」っていう場面に出くわすことがあります。皆さんにも心当たりがあると思います。
 盤面は攻めるうえで圧倒的に有利なんですよ。とにかくこのターンに少しでも多くのダメージを通しておきたい。でも相手の手札や伏せカードなどのリソースを考えると、次のターンで反撃をくう可能性は十分にあって、このターンで勝負を決める程の火力がない以上は反撃に備える必要がある。チャンスを切ってでも安牌となる行動を取らざるを得ない……。

 まさにボスの状況です。チャリオッツレクイエム発動下において、ボスが立たされることになる状況です。
 あの状況、ボスは確実に一人は消せます。できればトリッシュを消して逃走を図りたかったでしょうね。矢については再び身を隠して機を伺えばいい。その気になればトリッシュを始末する目的は簡単に果たせる、そういう瞬間だったよなあ、あのシーンは!

 でもボスにはそれができなかった。慎重だから。とてもとても慎重だから。身を隠した自分を万が一にでも見つけ出して反撃してくる可能性を持つナランチャだけは、絶対に生かしておけなかったから。ナランチャを消してからでなくては、表に出てくることなんてできなかったから。
 一人確実に消せる絶好のチャンスにあって、ボスにはナランチャを攻撃する選択肢しか無かったんですよ。トリッシュではなく。これがつまりね、「トリッシュはオレなんだ」っていうことなんですよ。あれの着地点なんです。船出のシーンでの、あのクロールがあったから、ああいう展開になっていったんです。これぞまさに運命というやつですよ。あれぞ理論的な帰結です。
 いや、確かに100%の純粋な理屈では筋が通りきらないかもしれませんよ。でも感覚としてはフリとオチのような一連の対応関係を見いだせやしませんか? つまり展開上の係り結び。あるいは枕詞。トスが上がれば打ち込んでくるでしょう。そういう「かかり」の対応関係の着地点。それがポルチーニのピザです。
 一見すると油断して口を滑らせ死亡フラグを立てたように見えますが、あれは違います。トリッシュをかばうためにピザの話をしたのです。勿論ナランチャはボスの生存を知らないのでコレは呪術的な筋での意味合いでなのですが、「トリッシュの腕のキズは俺のキズだ」と言った以上は、トリッシュの身代わりにキング・クリムゾンの一撃を受ける必要があったんですよ。

 ナランチャはああなる運命を受け入れて船に乗り込んだんです。それ以外にあそこでナランチャが船に乗る道はなかったでしょう。そしてその覚悟が、ボスの打倒へと繋がっていくわけです。
 覚悟というのはつまり、真実へと向かおうとする意思です。結果として犠牲となりましたが、その主たる要素は犠牲の精神ではなく、正しい道を歩んでいくという、黄金の精神なんですよ。

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TROUD
コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。