映画/わたくしたちは。

感想というか見たという記録と解釈の記録。せっかく見たので。

主人公はいつかの時代に心中をした相思相愛の男女(小松菜奈と松田龍平)。
心中をした女はある島で目を覚ますが、なにも覚えていなかった。そこで出会ったのが「キイ」と名乗る年上の女性。彼女はその島で清掃員として働いてるといい、一緒に働くよう声掛けた。
女はキイと暮らす若い女の子から「ミドリ」という名を貰い、ミドリとしてその島で清掃の仕事をするようになる。
ある時ミドリは猫の声に導かれ1人の男と出会う。共に心中した男であった。しかしミドリは何も覚えていなく、男も同様に記憶をなくしており、その時ミドリと男は初対面の男女だった。
が、言わずとも2人は惹かれ合う。2人は自然に共に食事をしたり出かけたりする中になり、ミドリは名前のないその男に「アオ」と名付けた。

親しくなるミドリとアオの前にある日突然「ムラサキ」と名乗る女が現れる。ムラサキはアオの部屋に押しかけているようで、「ずっと待っていたんですよ」などと話すがアオに気はないようだった。ムラサキは恐らくアオの前前世での恋人ではないだろうか。その後ムラサキの存在を気にするミドリだがアオは「どこかへ行った」「もう来ない」といい、その後本当にムラサキは登場しない。

場面は変わり、ミドリに世話を焼くキイが島を管理する館長から「お勤めご苦労様でした」と解雇を言い渡される。キイは恐らく清掃という仕事を経て自分の魂を清め天国に向かったのだろう。白い服に身を包みハシゴでどこから上へと上がっていく姿は、明らかにそういう描写に感じる。突然キイがいなくなりミドリはキイを探すが、キイは二度とミドリの前に現れず、同様にキイと暮らしていた女の子二人も消えてしまう。

1人になったミドリは、ミドリとなって初めて夢をみる。それはアオと心中した時の夢だった。アオもずっと前から同じく心中した時の夢をみていたが、2人とも互いの顔は思い出せない状態であった。しかしなんとなく2人とも察していただろう。

ミドリとアオはまた2人で出かける。その時ミドリはアオの肩に大きな爛れがあるのを見つける。この島には1人全身爛れたまま永遠にそこらを彷徨っている男がいた。アオも同じように爛れて、魂のままどこかを彷徨うのかとミドリは涙を流した。孤独な島で2人は抱き合う。

ミドリとアオは2人、ただミドリとアオであり、お互いそれ以外ないと言って身体を寄せ支え合い、永い道を歩き続ける。ここで物語は終わる。


わ〜終わりそう終わりそう終わりそう…と思ってたら案の定終わった!!!!!ストーリーは分かるんだけど構成がバラバラの素敵な映像200個集めて繋げましたみたいな映画で途中なんやこれとキレそうになったけど頑張ってストーリー理解してみるよ。多分そういう映画だし…。

舞台となる島は死者の魂を清める的な場所、この島にいる=島で死んだなのかは分からないけど、途中自殺した男学生が島にいるのを見るとそう考えられる。そういった人々は島に集って、掃除や警備員などの仕事をする。ミドリが目が覚めてすぐ「何をすればいいんですか」と聞いた時、キイが「働くのよ」と答えたのが印象的だった。働くことが目的の島。舞台は働くことで成仏できる島ではないだろうか。
そうして魂を清めた人はキイのように仕事を終え、天国へ行く。館長は島を管理する役目の人間?なのだろう。恐らくもっと前にはこの島は過労の末亡くなった人達、自殺した人たちが多くいて、館長はその人たちも送ってきた。ミドリも順当にいけば物語のその後仕事を終えるかもしれない。しかし終わり方からそうは思えなかった。暗いトンネルがどこまでどこまでも続き、ミドリはそのトンネルをアオから離れることなく支え歩き続ける。これは2人の行く末を示している。
つまりミドリはこの先アオの身体が爛れ魂が島を彷徨うことになっても、ずっと一緒にいる。そういう選択をするのかもしれない。先のことは分からないが。

ムラサキについては、本当に説明が少なく謎の多い存在だったが、私はやはりアオのミドリとの前世の更に前世での恋人では無いかと思った。だとすればアオは2人生連続で心中をしたのかもしれず、それは確かに罪深いことなのかもしれない。同じように心中したミドリとアオの魂になんらかの差が出来てしまっているのも納得がいく。
松田龍平は女性を狂わせるまたは女性に迫られる役が多分日本一似合うとまた実感した。アオとムラサキって大豆田とわ子と三人の元夫の1番目と1番目といい感じになる女性のペアだよね??見覚えのある構図で面白かった。


ここまでストーリーに余白があり鑑賞者にその余白を委ねる映画は私は初めてだったので受け取り方に戸惑ったが、こうして文字に起こしていると段々身体に浸透してきて、映画を見たという気になれてきた。面白かったとはまた違う、不思議なものを見たという感想だ。

【追記】
公式ホームページから多少の答え合わせができたのでその追記。
・ムラサキについて
アオのかつてのパートナー。
・島を出れる条件
基本49日だが、その期間を超えても魂がさまよったままの場合もある。

松田龍平と小松菜奈の出す不思議な雰囲気が非常に色濃く出た作品だった。不思議で現実感のない美しい映像にどこか人間味のないようで人間らしいことを話す2人は現世と来世の狭間という舞台設定にとてつもなくはまっていた。

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