2024総選挙で自民党大敗、同時にテレビがYouTubeに負けた
選挙に勝ったのは、立憲民主ではなく国民民主だった
今月7日に、YouTubeが政治家を生む時代になったと書いた。その理屈で言うと、今度の総選挙でもYouTubeが影響したはずだ。何か言えることがないかと考えていたら、こんな記事を目にした。
比例代表の得票数で自民公明が大きく票を減らしたと見出しにあるが、立憲民主は横ばいで国民民主が大きく票を伸ばしたともある。そこで、記事中に出ている今回と、前回2021年の選挙と比べた表をExcelに写しとってみた。
あくまで比例代表の結果だが、今回の選挙の新たな側面が見えた。
わかりやすいのが維新の変化だ。294万票減っている。保守党と参政党の得票数を足すと301万票で非常に近い。これだけから断定はできないが、維新後退の一因が保守党参政党の登場にあると言えそうだ。
れいわは158万票増加しているが、その半分は共産党の80万票と推測できる。不思議と、みんなでつくる党の77万票を合わせるとれいわの増加分になる。
そして自民党の533万票はどこへ行ったのか。これと公明の減少分114万票を足すと648万票になる。そこから合計の減少分、つまり投票しなかった分283万票を引くと365万票になる。国民民主の増加分357万票と非常に近い。
少なくとも比例代表では、自民党の減少分は投票しなかった数と国民民主に流れたと見ることができる。
そしていくつかのメディアの年齢別の得票数では、20代30代で国民民主党が最も多い。そうすると、若い世代でそれまで自民党に入れていた人々が国民民主に流れたと、あくまで仮説だが言えるのではないか。投票しなかったのは高齢層だったかもしれない。
さらに、比例代表の投票先と選挙区の投票先は同じ政党であることが多いだろう。となると、立憲民主党が支持を伸ばし躍進したのではなく、自民の自滅点を国民民主党がうまく受け皿となり掬い取ったと言える。勝ったのは立憲ではなく国民民主だったのだ。
YouTubeチャンネル登録者数を各党は伸ばせたか?
今度は、各政党のYouTubeチャンネルの登録者数を見てみよう。私は公示日翌日の10月16日時点の各党チャンネルの登録者数を記録していた。それと、10月30日時点の登録者数を比べると面白いことがわかった。
驚いたことに、登録者数が明らかに増えたのは国民民主とれいわだけ。他はほとんど増えていない。つまり、YouTube登録者数が増加すると得票数で躍進したことがわかる。
もっと言えば、YouTubeを上手に使った政党が大きく票数を伸ばしたのだ。残念なことに保守党と参政党の16日の登録者数を記録していなかったが、現在は参政党が24.9万人、保守党は党のチャンネルはないが代表・百田尚樹氏のチャンネルは46.4万人といずれも既存政党より多い。
YouTubeを使いこなせば得票数を伸ばせる。逆にYouTubeを活かせなかった政党は票を伸ばせていない。
ReHacQで東京23区内の全選挙区の候補者討論会
YouTubeが選挙で生きたのは政党チャンネルだけではない。ReHacQは東京23区のみだが、すべての選挙区の討論会を開催し、ライブ配信した。
今回は選挙区に大きな変更があり、私が住む大田区も東京26区という新しい区割りになり、立候補した5人中4人が新人だった。誰がどんな候補者か、さっぱりわからない。だからReHacQの26区の討論会をライブで見て、大いに役に立った。感謝している。
選挙公報は投開票日の直前にやっと届くし、地上波テレビでは各選挙区の詳細など伝えてくれない。これでどうやって判断しろと言うのか。
YouTubeのおかげで私は胸を張って投票できた。
選挙報道をしないテレビ局は民主主義の守り手か?
15日の公示日の夕方、私はたまたまTBSの夕方の情報番組「Nスタ」を見ていた。選挙情報はこうすればネットで得られる、との特集の中で井上アナウンサーがこう言った。
「放送法があるので私たちは選挙報道があまりできません」だからネットで情報を得るといい、と言いたいらしい。
恥ずかしくないのかと私はびっくりした。
放送法で規定されているのは「政治的公平」であって、選挙期間中に報道するなということではない。実際、数年前までテレビは選挙期間中も盛んに選挙報道をしていた。「政治的公平」を盾に各政党が「うちの政党だけ24秒短かったじゃないか!」とクレームをつけてくるので各局が控えるようになっただけだ。
それがいま、テレビ局にとっても政党にとっても損するおかしな事態になっている。政党は秒単位で測ってクレームをつけるうち、テレビのリーチ力を活かせなくなった。いまやYouTubeを使いこなせないとテレビは取り上げてくれないので不利になった。もうクレームをつけるのはやめた方がいい。
そしてテレビ局は、何かというと「民主主義の守り手」と言うくせに選挙報道をしないなんて矛盾している。こんなことを続けていては、YouTubeが民主主義の担い手になってしまう。それでいいのか?
今回の選挙で政治を動かしたのはYouTubeだ。テレビは政治にコミットする勇気を持っていないのだから仕方ない。
私は大問題が提示されていると思うのだが、誰がどう訴えてもこの傾向は変わらないだろう。テレビ局は自民党より先に民主主義の担い手として衰退していくのだ。なんと情けないことかと嘆くしかない。
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